見出し画像

密教とはなんじゃろか

密教成立の背景

2500年前、お釈迦様から仏教という宗教は始まりました。それは、当時のインドにおける「反バラモン(バラモン教)」、「反カースト(身分制度)」の運動や教えといっていいと思います。反既成宗教、下層階層の反権力闘争でもあったといえるかもしれません。

お釈迦さまなき後、理論的な整合性は何とか維持しつつ、さまざまな形式に変化していきます。そして、2000年前、初期仏教を拡大解釈した「大衆部仏教(大乗仏教)」が生まれ、1500年前、「大衆部仏教」から「密教」というムーブメントが始まりました。

その背景には、当時、バラモン教が再編された「ヒンドゥー教」が強い影響力を持ちはじめ、仏教が衰退を始めた時期も重なって、仏教自体がヒンドゥー教の呪術的な要素や儀礼、尊格(ヒンドゥーの神々)を取り入れることとなり、ある意味でのヒンドゥー化を起こしたといっていいと思います。ライバルの長所を取り込んで、人気を得ようとしたわけです。

お釈迦様が目指した「反バラモン」という視点から言いますと、こりゃどうよ、という気がしないでもないですが、常に成長を目指すのは組織の宿命ともいえます。そしてヒンドゥー化も当時の最適解の一つだったのでしょう。そんなところから始まったといったって、密教の値打ちが暴落するわけではありません。密教が体系化されたのは7世紀頃といわれています。

インドで、長い年月をかけ継承されてきた仏教ですが、西暦1300年頃に密教を最終形態として壊滅していき、その後、お釈迦さまをはじめとする仏教はヒンドゥー教に吸収されて、その歴史を閉じていきました。線香花火の最後の輝きだったわけです。いやいや、「だった」と過去形にしてどうするチョークー。

密教の特徴

密教とは秘密仏教の訳語であり、マントラ・ヤーナ(真言乗)やヴァジュラ・ヤーナ(金剛乗)とも呼びます。また、通常、お経のことを「スートラ」といい、密教では「タントラ」と表現するので、密教を「タントリズム」ともいいます。マントラ(真言)は「聖なる呪文」「力ある言葉」と訳します。これまで数回にわたって紹介した般若心経の「ぎゃーていぎゃーてい」の部分もそうでしたよね。

密教の歴史的区分

●初期密教=所作タントラ
●中期密教=行タントラ
 真言宗はここに所属します。
●後期密教=無上ヨーガタントラ
 チベット密教はここですね

お釈迦様の悟り(最高真理)の追体験(体得)を目指し、最高真理は言葉で表現することはできないとするので、その言葉の代わりの役割をはたすのが「マントラ」や「曼荼羅(まんだら)」であります。そして、それを体得するには神秘体験が必要になるので、観法(修行法)たるヨーガを用いることとなります。であるが故に密教の修行を「瑜伽(ゆが)行」とも呼ぶわけです。「瑜伽」とは「ヨーガ」の音写であり、瞑想法のことです。

密教は儀礼を重要視します。弟子の入門儀式(イニシエーション)においても、さまざまなる手続きとなる儀礼がありますし、その中でも象徴的なのが、頭頂部に聖水を注ぎ、仏に生まれ変わったことを自覚する「灌頂(かんじょう)」と呼ばれる儀式です。ヨーガ、イニシエーションとくれば、いよいよ怪しいにおいがしますが、あっちが悪用したのですから、ヨーガに罪はありません。こっちは、昔からある、ちゃんとした修行です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?