かなえたい夢
子どもの頃の夢をかなえて、趣味と実益を兼ねた仕事を40年した。
定年退職して、夢にみていたことを次々に実践した。
この上に何か、夢といえるものがあるかな?
夢というほど大きな事でなくても良いから、この先の人生でやってみたい事を書いてみた。
どこかで「100個書いてみよう」と読んだ気がする。
具体的に書き出した。
細かく書いてみた。
43個書いて手が止まった。
だんだん「夢」ではなくタスクっぽくなってきた。
いかん!
「夢」を書いていたはずなのにいつの間にか「すべき事」になっている。
意外と難しいな。
「夢」と言っても「実現可能な夢」でないといけない気がする。
今更「ドリトル先生と大きな蛾に乗って月に行きたい」なんていうと周りから心配される。
頑張りや工夫で実現できるかもしれない事。
それでいて「夢」という美しい言葉が合う事。
どうしよう!
グズグズ考えているうちに時間切れになってしまった。
今、自分の夢より優先している事がある。
今年95歳になる母が急に元気なくしたので、一生懸命支えているのだ。
肺がんはあるけど高齢だから手術はしない、と本人と医師、娘たちで確認もしている。
それでも元気いっぱいに散歩したり、庭の手入れをしていたのに。
「玉ねぎ200本、植えたよ」。
嬉しそうについこの前自慢してたけどな。
今は暇な私の側に居てもらっている。
母は正直に
•気分が落ち込んで、キツイこと
•昔嫌だと思ったこと
•死ぬ時の不安、つまり経験したことのない事への不安
などを話してくれる。
私はウンウン、と聞いている。
母の口からマイナーな事を聞くのは不思議な気がする。
すっごく前向きに頑張っている姿しか知らないから。
良いさ。
今までどんな時も挫けずに頑張ってきたのだから。
戦火をくぐり抜け、働き、家族を持ち、自分のことより人の事を一生懸命世話してきた。
あの時代に副業と資産運用をした。
知識もないのに。
家族のことだけでなく、親族の相談にものってきたのだから。
今、母と私だけの空間でマイナスを吐き出せば良いさ。
棚卸しをして軽くなれば良いさ。
ひとしきり喋ると今度は私の番。
楽しかったことや失敗したこと、なんでもない話をすると母は笑う。
昔の母の笑顔になる。
ベッドに横になった母の手を握って一緒に笑う。
これを1日に何度か繰り返す。
新しい話は、無い。
食いしん坊だった母なのに、ご飯を食べたがらない。
おやつも進まない。
高齢者用の栄養補助食品を、何だかんだとおだてて飲んでもらう。
母が、私の作ったうどんを美味しい、と食べた。
「お母さんがうどんを少し食べたよ」
妹たちにメールすると
「ああ!良かった♡」と返事が来る。
「かぼちゃの煮物を少し食べたよ」と言えば
「美味しいんだね。姉ちゃん料理上手♡」と言う。
作ったのは夫だけどね。
夜は妹とテレビ電話。正確にはなんと言うのだろう。
携帯電話で顔を見ながら会話できるなんて、それこそ「夢」のようだ。
母が笑顔になる。
あとどのくらい時間があるのかわからない。
わからないから余計に今が愛おしい。
私の今の夢はみんなで母を支えていくこと。
慰め、励まし、安心してもらうこと。
母に元気になってもらうこと。
最後まで母らしい笑顔で過ごしてもらうこと。
父が迎えに来た時、「みんなで支えたよ」と胸張って言えること。
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