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指定難病を患った話14.【退院してから】

今回は退院してからのお話。

免疫グロブリン治療初日から換算して
9日目、退院した翌日。

やっと日常に戻りつつある。
そう感じていました。

朝起きてからは動けるようになったことが
嬉しくてたまらず、
これまで苦労かけてきた妻への恩返しと
自分がどこまで回復しているのか
見極めるためにも家事を積極的にやりました。

洗い物、洗濯を終わらせ、
妻と買い物に出掛けて
食材が入ったカゴや袋も持つことができ、
やっと家族の役に立てると
嬉しく思った感情を覚えています。

入院する前は洗い物で
お皿を落として割ってしまったり、
洗濯物を吊るすために
持ち上げることができず、
振り子のように腕をふったりして
苦労していたことを思い出します。

ここまで回復していても
まだまだ完全な身体を
取り戻したわわけではなく
歩き方はぎこちなかったり、
ペットボトルが開けられなかったり、
お箸が使いづらかったりでしたが、
出来ることが一つでも増えたことが、
何よりも嬉しかったです。

グロブリン初日から10日目、
退院から2日目、

朝起きてまず両手にあった痺れが
なくなってきていることに気が付きました。

日に日に良くなっていることに嬉しく思い、
ここに行きたい、これをしたいと、
少し人間らしい欲がでてきていました。

そんな気持ちになったのはいつぶりだろう。

早朝のルーティーンは飼い犬の散歩。
これまで膝を真っ直ぐ伸ばして
骨の組み合わせ方と多少残っている筋力で
なんとか杖をついて歩いていた足も
自然なフォームに戻りつつありました。

健康な時は考えたことも
意識したこともありませんでしたが、
不自然な歩き方を長い間していると、
どうやって歩いてたか忘れてしまうもの。

意識的に膝を少し曲げて
自然な歩き方を入院時のリハビリから
この日まで続けていた成果かもしれません。

その後は置き場まで
何度も落としてしまい、
最終的にできなくなってしまった
ゴミ出しもなんなくクリア。

妻はあんまり調子乗って
悪くしないようにねと
心配してくれていましたが
時間とともに消えていった日常を
一つづつ取り戻していくこと、
それを身体全体で染みるほど喜ぶ、
そんな自分を止めることができませんでした。

免疫グロブリン初日から11日目、
退院から3日目、
ついに地面から手をつかずに
立ち上がることができました。

これで飼い犬の世話に苦労しない!

免疫グロブリン初日から12日目、
退院から4日目、
義兄弟の家族と車で隣の県まで少し遠出。

釣った鮎をその場で食べられる
レストランで食を堪能。

釣竿持てるかな?足元悪くないかな?
色んな不安を抱えていましたが、
何も問題なくクリア。
また色んな人と色んなところへ
出掛けることができるんだと、
日に日に自分の元に帰ってくる日常に感動。

その翌日は妻の実家にご挨拶へ。
病気が進行しているときに
献身的に支えてくれていたので、
動くようになったことを
とても喜んでくれました。

この頃から日常生活でできないことは
走ること、ペットボトルの蓋を開けること
くらいにまで回復していたので
日々の変化を感じる機会も
少なくなっていました。

もし再発したらどうしよう?…
何がどうなったら再発なんだろう?…
再発にいち早く気付けるだろうか?…

そんな不安があったので握力計を購入。
この時は右手が11kg、左手が9kg。

半年近くゼロだったのにと、
嬉しい反面、再発の恐怖が日に日に
増していきました。

そんな不安があってか、
免疫グロブリン初日から14日目、
退院から6日目の夕方に
気付くかどうかのレベルで
両手に痺れが出てきました。

もしかして再発?…

不安は膨れ上がりました。

11月9日、
免疫グロブリン初日から16日目、
退院から一週間経った頃、
退院してはじめての外来予約がありました。

そこで再開した担当医に感謝を伝えつつ
不安をぶつけました。

「多少の日内変動はあるので一喜一憂する必要はありません」「握力は嘘をつかないので、多少上下しますがそこを指標にしてください」「想像以上の回復です」「寛解状態と言ってもいいと思いますので予定していた再度の入院はしなくて大丈夫」「グロブリンの影響なのか肝臓の数値が少し悪いので月末にもう一度検査して、問題なければ12月から社会復帰してもらって大丈夫だと思います」

一喜一憂しなくていいんだ!
気のせいじゃなくちゃんと良くなってるんだ!
肝臓は気になるけどお酒は飲む機会ないし、
12月からいよいよ社会復帰か!

不安はすぐに払拭され、
また前向きな気持ちを取り戻しました。
単純な性格なのかもしれません。

それからは握力計で経過をみることに。
11/10 右手14.3kg 左手12.6kg
11/11 右手14.4kg 左手14.1kg
11/12 右手14.8kg 左手13.4kg
11/13 右手 15.9kg 左手14.2kg
11/14 右手 17.1kg 左手15kg
11/15 右手 18.3 kg 左手13.8kg

多少上下していましたが、
日に日に力が増していました。

前日より大きく良くなった日は
次の日その記録を更新できるか不安でしたが、
比較的順調に回復。

グロブリン治療から20日目、
退院してから12日目には
ペットボトルの蓋が
はじめて開けられるようになり、
日常生活の中で数少ないできないことを
無事にクリアすることができました。

そしてその翌日は
待望だったギターの演奏が可能に。

またギターが弾けるようになるとは
夢にも思わずまた感動。

苦節7ヶ月半、
日に日に失われていった日常が、
たった一度の治療、
それもわずか1ヶ月で
ここまで良くなるとは、
医者も含め誰も思っていませんでした。

街を行き交うキラキラした人たちをみて
疎ましい気持ちをいだいたり、
全てを手放して1人になろうとしたり、
自死を考えるほど投げやりになったり、
過去の喜びを思い返して
現実を受け入れようとしたり、
長い人生の中では
ほんのわずかな時間かもしれませんが、
一つではなく色んな感情が目まぐるしく
自分と周囲をかけめぐっていました。

この病気になって少しの間
真っ直ぐ進んでいた道を
曲がることになりました。

曲がったことによって、
新しい気付きが生まれ、
大切なモノを再認識し、
出会った人たちがいます。

それは人生の最後から
逆算すると一つの通過点で、
その曲がり角があったからこそ、
これからの自分の人生が成り立ちます。

全ては人生の最後に抱く感情に
向かっている通り道です。

これから再発や別の病気になったり、
大事なもの、人を失ったり、
生きている間はきっと色んなことが
あると思います。

この経験はそんな人生の中で
今この瞬間、自分が生きていて、
その周りには家族や友人がいる環境があり、
それは自分という生き物が
最も大切とするモノであること、
それが「当たり前ではない」ことを
教えてくれました。

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