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【映画感想 】 『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション 後章』〜最後で最良のセカイ系 〜STOP GENOCIDE!

映画『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション 後章』

原作 浅野いにお、アニメーションディレクター 黒川智之、シリーズ構成・脚本  吉田玲子

 ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で、FLEXOUNDという、座席の後頭部にも補助スピーカーのある特別シートで観賞。料金プラス200円。迫力が1.1倍という感じでした。

 『ドラえもん』をオマージュしたお話が最悪の形で進行し、東京上空に停止したままだった『インデペンデンス・デイ』みたいな巨大円盤から、侵略宇宙人がとうとう現れたところで終わった前章。

↓前章もまだ上映中です。面白いので観てください


 しかし、地球人の好戦的な暴力性を理解しないままに侵略しようとした宇宙人は弱く、瞬時に返り討ちに合いほとんどが壊滅。逃げ延びた一部の宇宙人は町中に潜伏している。世の中的には災害が一回起きたくらいの認識で、終わらない日常が続いている東京が舞台。

 親友の危機を知った優しい女の子と、人類の危機を知った優しい男の子は、友情と愛の為に決意し行動する。令和なのにセカイ系の王道をやりながらも、予測不能の展開を繰り返すので油断できないSF映画。

 セカイ系というジャンルは、90年代後半からゼロ年代に今の異世界系くらい流行った。

 一般的にセカイ系は「きみとぼく」と「世界の危機」しか頭に無い「ひとりよがりさ」が、文学的な感動を盛り上げる場合もある一方、視野の狭さが中二病的だと揶揄される要素もあるかもしれない。

 しかしこの『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション』では、作中で差別される可能性のある秘密を打ち明けても関係が変わらない友だちや、主人公の女の子自身による人生の選択を本当に大切にしてくれる兄といった、優しい仲間たちが描かれる(泣いた)。
 そこには、昭和の少年まんがやヒーローのような友情の心や利他性がある。(もちろん令和でも『鬼滅の刃』や『プリキュア』のように、その黄金の精神を受け継ぐ作品はある)

 また、大学で出会う友人が「宇宙人虐殺反対」を訴えるデモに参加していたり、居酒屋でその運動に反感を持つ酔っ払いに絡まれたりする。
 マスコミや為政者が、自分たちに都合のいい情報しか発表しないといった、この前の東京都知事選挙とシンクロするような風刺場面も多々ある。
 そういった「仲間」と「社会」の要素が大きいのが、今までのセカイ系作品を超えている。

泣いちゃう

 「STOP GENOCIDE」というメッセージは、2024年における最もシリアスで切実な訴え。
 それなのに『デデデデ』の作風は、『デスノート』や『進撃の巨人』以降の現代の漫画やアニメに一般的になった、「死と隣り合わせの日常」の空気を持ちながらも、常にユーモアと優しさで溢れている。
 主人公の女の子が常に周囲へツッコミとボケを繰り広げるのだが、妙に的を得ていたりしてとても楽しく、何度も笑ってしまった。しかも、台詞や口調はボケやツッコミなのに、表情は泣いていたりする。凄い!

 現状のセカイ系アニメ映画の中では最上レベルの作品。私はエヴァンゲリオンも新海誠も大好きですが、それらを超えている傑作です。観てください!


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