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輝く傷跡を目指せ

アクリルの断崖
透明度は抜群
足掛かりは皆無
天辺は見えたことがない

中途まで続く傷跡の道
思い出に照らされて輝く
思いの外に遠くて
忌々しい程に眩しくて

登る意味は恐らくない
得られる物も多分ない
止めて生きるのもありだろう
在りし日の傷跡を誇りながら

それでも

傷跡は嗤っている
此処がお前の頂点か、と
あの日の私は嗤っている
後は衰えていくだけか、と

だから行くのだ
言葉をピッケルにして
意地をアイゼンにして
四行の傷跡を刻みながら

命綱はいらない
堕ちても死にはしないから
何度でも落ちながら
かつての傷を超えていけ

そして、不意に彼方を見よう
余所の崖の遥か上方
先達が付けた輝く傷を
登る理由は、まだ尽きない






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