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今日も世界が美しい

朝靄が町を煙に巻く
夜明けは未だ五里霧中
湿度の底に溺れていても
光が差せば風は輝く

モノトーンの白昼夢
見上げた先で空を覆って
憂鬱をばら撒きながら教えてくれる
切れ間から落ちる光の鋭さを

夜来の雨が世界を叩く
夜泣きの声に睡魔も去って
月を見失った星達が
街灯の下で遊んでいる

快晴の日などあまりない
天気にも、人生にも
美しいことなどあまりない
世界も、世間も

それでも、明日を歩くしかない
雨が降らないことを祈りながら
奇麗でないことを責められようか
自分が美しいわけでもないのに

価値はないのか
晴れ渡らぬ空に
価値はないのか
澱んでいくばかりの世界に

そんなことはないさ
醜いばかりのものなどありはしない
錯覚しているだけさ
汚物ばかり見ているから

探そう
霧中の朝日を
曇天の切れ間を
暗雨に瞬く星達を

微かな煌めきでいい
それさえあれば安心できる
臆面もなく断言できる
今日も世界は美しい、と

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