権藤智之

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  • 東京大学 権藤智之研究室

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    建築構法を研究する、東京大学権藤智之研究室のnoteマガジンです。 権藤智之研究室のHPはこちら http://gonlab.com/

最近の記事

2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第4回 情報化

大学院では工務店さんの倉庫にこもって図面調査をしていました。その頃から、図面や写真の量が増えていると感じていました。倉庫を見ていても平立断の図面だけ保管していたような時期からCADになってデジカメの写真が入ってとファイルがどんどん分厚くなっていきますし、家歴書なども長期優良住宅が始まったころはよく聞きました。保管している中身を見ると、必要だから保管しているのもありますが、一方でCADやデジカメによって情報を作れるようになったから保存している面もあって、このままだとパンクしそう

    • 日本の高層建築における施工技術の変遷第3回 プレファブ化

      この記事は「建築士2019年2月号」(日本建築士会連合会)に掲載された原稿の文章・図を修正したものです。 サイトプレファブトップの写真は1950年代にフランスで開発され、オランダでも施工実績のあるポルトデリラ工法の建て方である(「Systems Building」, Thomas Schmid, Carlo Testa, 1969, Pall Mallより転載)。写真では10階建て程度の鉄骨造建築であるが、全階分の鉄骨柱と梁(2層ずつ)を地上で組んでしまい、一気に建て起こす

      • 2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第3回 部品化

        初回(前々回)は戦後の住宅生産を概観し、工務店が依存してきたオープンな資源が今後も持続できるのかを取り上げました。前回はそうした資源のうち、職人という人的な資源を取り上げ、職人と機械のトレードオフの関係やそれに合わせた構法の変化について考えました。今回は、モノ側の部品について考えたいと思います。 パイロットハウスとパイロット部品まず、住宅の部品化が出てくる流れについて、何度も言っていますが戦後の日本の住宅生産は終戦時の420万戸という住宅不足から始まります。住宅の大量供給の

        • 日本の高層建築における施工技術の変遷第2回 揚重

          この記事は「建築士2019年1月号」(日本建築士会連合会)に掲載された原稿の文章・図を修正したものです。 ブルネレスキの揚重機械 下図はブルネレスキがフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のために発明した揚重機械である。牛(スケッチでは馬)が車軸をまわすとギアがかみ合い荷物を上方に運ぶ。これ以前にも人間が大きな輪の中に入り、ハムスターのように輪を回転させ荷物を揚げる等の機械は存在していた(例えばトップの画像は「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル、SD

        2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第4回 情報化

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          日本の高層建築における施工技術の変遷第1回 工程計画管理

          「建築士」(日本建築士会連合会の会誌)の2018年12月号から2019年4月号に連載した「日本の高層建築における施工技術の変遷(全5回)」を転載します。図版・記述等で記事と異なる場合があります。画像の使用等問題のある場合はご連絡ください。 霞が関ビルディングから50年 先月号(建築士2018年11月号)で紹介したとおり、日本初の超高層建築・霞が関ビルディング(1968年、高さ147m)が竣工して今年で50年になる。登録文化財の対象が原則建設後50年とされるように、半世紀も経

          日本の高層建築における施工技術の変遷第1回 工程計画管理

          2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第2回 機械化と職人

          前回の通り、日本の住宅生産の今後の課題は、これを支えてきたオープンな人的・物的資源が、縮小時代にも持続していけるかだと思います。その代表的な人的資源が大工をはじめとする職人です。今回は職人とその不足を補うことが期待される機械化について考えたいと思います。 下図は中岡哲朗の「人間と労働の未来」に出てくる「まんじゅう製造ライン」です。まんじゅうの記事で餡子を包む作業が機械化されると何が起こるか。それまでの職人は、作りたいまんじゅうを構想し、材料や道具を揃え、生地を練り、餡子を丸

          2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第2回 機械化と職人

          2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第1回 戦後の住宅生産の変遷

           HEAD研究会ビルダーTFの委員長になりました。住宅市場の縮小や職人不足、ストック化など住宅生産も変わり目の時期だと思います。こうした時期ですので、多少視野を広げるような講義をしていこうと思います。今日は全6回の導入として、住宅生産の変遷を概観しつつ、今どのような時期なのか考えたいと思います。 住宅不足と三本柱 戦後、日本の住宅生産は420万戸と言われた住宅不足から始まります。住宅を早く大量に建てることが至上命題でした。1950年代に入ると住宅金融公庫(1950年)、公営

          2019年度HEAD研究会・ビルダーTF第1回 戦後の住宅生産の変遷