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2024年4月に読んだ本

ライトノベル多め。気分で読む小説を決めて読み散らかしているのだけれど、そのせいで読みかけが無数に出てきている。ラノベは特性上読み切ることが比較的楽だからこうしてリストを出してみるとラノベの比率がいつも多くなっている。
後ろを振り返ると100ページで止まっている小説群が早く俺たちを読んでくれと積みあがって訴えてきているけれどそんなの知らない。



不死探偵・冷堂紅葉01/零雫

ライトノベルレーベルから出たミステリ、更には不死という設定。過去にトラウマがあって正直あまり期待していなかった。当て馬にして申し訳ないが、『また殺されてしまったのですね、探偵様』は探偵とワトソンという関係性を使った”ライトノベルらしい”作品で、推理部分が不死という設定の強引さで進めていて、とてもじゃないけどミステリとは言えないものだったのだ。(キャラとかやり取りは萌え~って感じで良かったけどね!)
結果は想像以上に本格ミステリを汲んだ作品で、今後も追っていきたいなと思った作品だった。

本作も人によっては異能のゴリ押しに見えるかもしれない。しかし異能はあくまで材料集めの手段であり、謎解きには影響してこない。見せ場である「読者への挑戦状」及び論理的解決の魅力を削ぐものではないし、ラノベという舞台ならば異能は映えるだろう。

トンデモトリックや個性的な(ラノベ的)なキャラから「ライトノベル」的ミステリだった、と本作を評したそこのあなた。(そんな感想を投稿している読者は少なくなかったので)
本格ミステリと言われている小説たちも案外このノリで、バカバカしいトリックに奇抜なキャラたちが奔走しているんだぜ。バカバカしい世界観でロジックやトリックには並々ならぬこだわりを持って、真面目に筋を通そうとしている。ぼくは、その本格ミステリのノリがたまらなく面白い。

『冷堂紅葉』は本格たちの「伝統」は堅苦しいな、「ノリ」を引く継いだ正統派ミステリといって良いだろう。

みんな大好きな館モノだってトンデモ事件を書くために都合の良い「館」を強引に生やしたもので、ラノベ的発想と近しい物がある。
『冷堂紅葉』からいろんなミステリを読んでみて欲しい。ラノベ好きなら琴線の触れる作品に出会えるはずだろうから

※ここからネタバレ




 名前を逆に呼ぶにのは叙述トリック(あからさますぎるから二重、三重にトリックかかかると予想していた)もしくはトリックの材料に使われると思っていたけれど特に無かったことは気になる。ミスリードとして機能していた、させていたわけでもないので、リーダビリティを落としていると感じた。

 キャラクターがそれぞれが傷を負って終えるのも好きだ。ちゃんと人が死んで、捕まって、ぬるさが無いのも良い。スカッとしたオチを添える方が人気なのかもしれないけれど、ぼくは強引に明るくするよりありのままを写し取った暗さがよりリアリティを出して魅力的に見える。

モルグ街の殺人/エドガー・アラン・ポー

青空文庫にて。時期的には『冷堂紅葉』から半月後とかに読んだんだけど、ほんとにバカバカしくて笑っちゃった。よく推理できるな。ホントに。ここから現在までミステリが生まれていると思うとその歴史も面白い。

食卓にビールを2/小林めぐみ

感想書けない!なぜなら覚えていないからだ。申し訳ない。
お酒飲みながら2か月ぐらいかけてちびちび読んでた。ユーモアがおもしろいことは覚えている。
1のノリで短編集のつもりで読んでいたけれど、どうやら後半は中編になってたらしい。わお。こんなタイトルだけどSF。
作家だ女子高生で主婦の主人公がなんやかんやと異星人と出会って、巻き込まれて(巻き込まれに行って)てんやわんやする話。
ゆるゆるコメディなのにハードSF用語がポンポン出てきて、堅苦しいイメージが物語に呑まれてゆるゆるSFに変貌している。

創約とある魔術の禁書目録10/鎌池和馬

詳しくはこちらに。20周年おめでとう!


たかが従姉妹との恋。/中西鼎

読むつもりは無かったけど高評価レビューをよく見かけるのと、あとがきでぼくの好きな舞城や安部公房、坂口安吾などをあげていたから気になって読んでみた。

タイトルから分かるようにラブコメで、ちょいと痛々しい高校生と血縁関係の従姉妹”たち”に囲まれて話は進んでいく。前半はいかにもラノベのラブコメパートで好きな人は好きなんだろう。ぼくにはnot for me 読んでて辛い。
終盤、従姉妹たちでの恋愛談議がお気に入りシーン。年長者の従姉妹ちゃん(名前忘れた)が恋愛論を提示して場を制して、その恋愛論が作品の主張になるのかなと思って読んでいたら、他の従姉妹ちゃんもそれぞれ己の恋愛哲学を持っていて反論したり意見を出していて、作品のための道具じゃなくてキャラクターがそこに「いる」と感じられて良かった。

最後にもう一つ。
「誰かを愛したり愛されたりすることってね、世界を壊すことなんだよ」
作中この台詞が繰り返し繰り返し使われる。主題でありこの台詞のための物語なんだと思う。この手法は舞城に似ている。
1巻のみでこの台詞を語れていたかと言われると全然足りていない。2巻で「誰かを~」が一度も現れなかったらガッカリする。言い忘れていたけど全3巻のシリーズ本。
1巻の総評としては悪くないけど、ラブでコメな部分がnot for meの人はわざわざ読むのは…って感じ。だけどまぁ1巻目なので様子見。1000ページの小説と言われたらわざわざと言いたくなるけどラノベってそういうもんだから。

ぼくの妹は息をしている(仮)/鹿路けりま

タイトルから分かる通り(分かる通り?)たまにあるトンデモ系のラノベ。メタSFという言い方が一番分かりやすいかな。
MAYUという機械の中で眠るとその人間の脳を使って自動で物語を生成して小説として吐き出す。で、その小説の名前がお察しの通り「ぼくの妹は息をしている」で入れ子に入れ子が重なったりして読者もキャラもメタレベルが混乱してしまう、そんな小説。物語についての物語。円城塔にラノベ的ネタが詰め込まれてるイメージ。

変な小説だけど先行作品は幾つもあって、新しいというよりは懐かしいと感じる。
ぼくは村上春樹のナイーブな感じが思い浮かんだ。
雰囲気だけでも十分面白いので、上の情報から気になった人やふざけ倒した作品が好きな人、そしてふざけてる作品に抵抗がない人(ここ重要!)は是非是非触れて見てほしい。


虎よ、虎よ!/アルフレッド・べスター

おもしろい。おもしろかった。つまんないところがない。
動的な動きが多かったり、場面ごとに大きく場所が変わったりして飽きさせない。テンポもとても良い。描写からビジュアルが目に浮かぶ。映画みたいという例えがこれほど適当な作品は初めてだ。
My bestエンターテインメント。
全然中身について話せてないけど、とにかくおもしろかったということでここは。

万葉と沙羅/中江有里

良い本だった。学生の万葉くんと沙羅ちゃんとが本を読んで青くてナイーブな悩みを抱えてどう生きようか模索している。ぼくも彼らとそんなに年が離れてなくて、同じような悩みを持って、同じように赴くままに本を読んだりしているから重ねて読んでいた。なんだか恥ずかしい。

中高生に読んで欲しい。ブックガイドにもなる。通信制という光の当たりにくい所から書いているのもオススメポイント。

嘘つき姫/坂崎かおる

すっごく不思議な小説だな~と読んでいた。視点のねじれが多く、ふわふわしている。浮遊感というかなんというか。うーん上手く言えない。
偶然で作られたふわふわじゃなくて、計算高く作られてることは作風から伝わる。上手く感想を書けないな。雰囲気が凄く好きな作品集で、他の作品も読んでみたいと思った。

犬婿入り/多和田葉子

表題作「犬婿入り」よりももう一作の「ペルソナ」がお気に入り。
差別や偏見等の個人が無意識レベルで持っている攻撃性を自然に書いている。現代のインターネットにも通ずる話(というより永遠の課題なんだろう)で特にSNSだとポリコレから陰キャ・陽キャといったしょーもない事まで差別・偏見、そして攻撃で溢れかえっていて、そんな人の汚い所に気づかせてくれる。

お気に入りの文をひとつ

"本当に思っていることを言おうとすると、日本語が下手になってしまうのだった。自分の生まれ育った国の言葉なのに、それどころか、自分自身だと思っているものを生みだしてくれた言葉なのに、本当に思っていることを言おうとすると、それが下手になってしまうのだった。"

批評の教室/北村紗衣

批評指南本というよりはエッセイという印象が強かった。批評に対してネガティブイメージを持ってる人、批評とはなんぞやという人に読んで欲しい。
ぼくは批評についてさほど詳しくはないけれど、批評観は自分なりに持っていて、本書の言う「批評」とズレが少なかったことがちょっと自信になった。



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