【読書感想文】READING WOMEN 読書する女たち フェミニズムの名著は私の人生をどう変えたか
昨年末にフェミニズムと出会ってから、まだまだ私のなかでフェミニズムに対する興味は渦巻いています。
そんななか、今回の読書感想文はアメリカの作家ステファニー・スタールのエッセイ『READING WOMEN 読書する女たち フェミニズムの名著は私の人生をどう変えたか』です。
この本が面白いのはフェミニズムの理論が著者のステファニーの生活と密接に絡み合って描かれているところ。まさにフェミニズムとは女性の人生、生活そのものだと感じられます。
ステファニーは第三波フェミニズムの時代に大学生を過ごしており、平等とエンパワメントを重視してきた進歩的な女性である。学生時代は優等の成績や賞を勝ち取り、卒業と同時にやりがいのある職についた、いわゆるキャリアウーマンだった。そして進歩的で強力的な男性と結婚。けれども結婚したら、夫は洗濯も自分でしないし、妊娠・出産を経たらどうしてもステファニーが仕事を減らして家事育児に主に関わらざるを得ない。育児に関しては一見、分担しているようにみえても、細々したことはステファニーがやっている。自分のキャリアはどうなってしまうのだろうという不安。ステファニーは進歩的だったはずの自分が、先輩フェミニストたちが書いてきたのとそっくりなアイデンティティの危機に陥っていることに気づく。
今の日本の女性をそのまま映し取ったかのような状況にびっくり!!その状況のなか、ステファニーは母校で学生の頃に受講した「フェミニストのテキスト講座」を受講することを決意します。そして学生時代に読んだ本を再読し、年下の大学生たちと議論をすることで、なんとか今の心的危機から脱しようと思索をする。
たとえば、結婚し妻であり母であるという役割を押し付けられる状況を描いたケイト・ショパンの『目覚め』、シャーロット・パーキンス・ギルマンの『黄色い壁紙』を読むことで、妻や母として抑圧された状況から逃げ出す強さを得ようとする。
育児に追われるなか、なんとか仕事を取り戻そうとするステファニーはヴァージニア・ウルフの『自分ひとりの部屋』から女性の経済的自立について考える。
ベティ・フリーダンの『新しい女性の創造』は女性は「女らしさの神話」から逃れ、女性も仕事を持つべきだと書いており出版当時非常に売れた本である。だが、フリーダンのいう仕事と子育ての両立はどのようにすればよいのかステファニーは愛娘シルヴィアとの生活から学ぼうとする。
本書では他にもメアリ・ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』という古典的作品から、フロイトやラカンなどの精神分析、そして、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル フェミニズムとアイデンティティの撹乱』にみられるポスト構造主義まで多岐にわたる作品を取り扱っている。
だが、どの時代に書かれた本においても、古すぎるということはなく、今現代の女性が感じる苦しみについて描かれている。つまり、女の苦しみは時代によって変化はあるものの、根本的には変わらないのだろう。そして、どれほど難しく理論的な内容であろうと、ステファニーが家事や育児という日常と結びつけ書いてあるがゆえに、理論と実生活のあいだに橋が架けられフェミニズムの考えが腑に落ちる。
ステファニーにはステファニーの人生が、私には私の人生、それぞれ異なる人生がある。それでも私たちが女性としての危機を脱していく際に、フェミニズムが指針となることを示してくれた本でした。
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