見出し画像

002.ローテク

 新しい1年は頭痛で始まった。
せっかくの誕生日は朝から体調不良。寝不足に加えて長時間のゲーム、さらにジムで身体を追い込んだことによる疲労、全てがたたって起き上がれなくなった。

原因が分かっているので焦る必要はない。たっぷりと二度寝すること6時間、正午を回ったころ体調は回復した。

幸か不幸か今日は予定がない(どちらかと言えば不幸だろうが)。スッキリした頭で何をしようか考えていて閃いた。

今日はなにもしない。

ゲームのしすぎで眼が疲れているのだから今日はあらゆる電子機器に一切触れないことにした。普段は部屋の中央を占拠しているスマホ・PC・テレビ・ゲーム機を隅においやってコーヒーを淹れる。

 2時間が経ったころ、気づく。やることがない。
洗い物、掃除、洗濯など家事が一通り終わると手元には「読書」しか残らないのだ。インターネットから離れると出来る趣味すらここまで無くなるのかと驚愕する。(代わりに読書は異様に捗るが)
屋内で出来るローテクな趣味を持とう。早くも課題が見つかった。嬉しい誤算だ。

夕方、買い物から帰り再び読書。飽きるとストレッチをしてコーヒーを淹れる。字面は優雅だがなかなかつらい。普段は常に何かしらの音楽がかかっているが今日はそれもない。聞こえるのは本のページをめくる音、時計の針の音、冷蔵庫のコンプレッサーの音だけである。ツラいながらにこの環境に慣れて来てもいる。

これだけやることがないと昔の人たちがご近所で集まって酒盛りを開く気持ちもわかる。というか最高の娯楽だっただろう。田舎ではそれほどやることがない。
現代でもネットに触れない世代のお年寄りは家にいてもほとんどすることがないはずだ。炊事洗濯掃除にかける時間は昔と比べて劇的に短くなった。その余剰時間を家で消化する術を持たなければ外に出るしかない。

よく病院の待合に屯するお年寄りが非難されるが、こうなると仕方がないかという気がする。むしろ国は積極的に老人たちの屯できるスペースを増やすべきだろう。ついでに彼らが気持ちよくお金を使えるようコントロールできれば日本の景気は確実によくなると思う。

 読書にも飽きたのでこの記事を手書きで書いている。メモ用紙ちょうど1枚分の作文が捗る、捗りすぎる。自分はやはり”ながら作業”は出来ない人種なのだと再確認する。これも良い発見。

寝る準備が終わったころ日付が変わった。とりあえず電子機器縛りも終わりとなるが、特に触りたいとも思わなくなったのでそのまま寝ることにする。
ほんの半日だが良いデトックスになったらしい。明日はネットの世界に戻ってこの記事を清書することにしよう。

注:自分は子供の頃をネットのない世界で生きたためローテク世界に適応するのに抵抗はなかったが、生まれついてのデジタル世代の方々がこの環境に耐えられるかは分からない。もしお試しを考える方がいれば禁断症状にお気を付けて。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?