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バルアトルケものがたりⅢ

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「バルアトルケものがたり」は読み聞かせられるように、と思って書いています。
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2018年6月の記事一覧

5*秘密のスプーン

5*秘密のスプーン

バルアトルケものがたりⅢ*5

アリィが住む海のそばの村は、セオナルドの家から歩いて半日ほどのところにあります。川や丘をいくつも越えるので、休みながら3人はすすみました。

セオナルドのおかあさんは、念のため、と言って2回分のサンドイッチを3人分とビスケットをたくさん持たせてくれました。セオナルドのバッグには、はいりきらなかったので、ピリルが背負ってくれました。

セオナルドのバッグには、小さなコ

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4*前夜

4*前夜

バルアトルケものがたりⅢ*4

セオナルドは、みんなに聞こえるように、エルフィの言い伝えの本の一節、ルミナ島のドラゴンを読みました。静かではありましたがあきらかに違う空気がその場を包んでいて、みんな黙ってその空気を感じていました。

「なんだか暗いかんじがするなあ。ドラゴンが怒りと絶望から生まれたとは知らなかったよ。」

最初に言葉を発したのはカイトでした。カイトは沈黙が苦手なのです。

「どうい

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3*ドラゴンの魂

3*ドラゴンの魂

バルアトルケものがたりⅢ*3

その魂は、すべてのはじまり

悲しみのなみだは 川から海へと流れ 

怒りは炎となって すべてを滅ぼし 砂地には爪痕がのこされた

黒煙がたちのぼる絶望の淵 苦しみは痛みとなった

こころの奥底に眠る ひとすじのひかりを頼りに

我は生まれ 皆を導く 

怒りと絶望からうまれし魂は

いま ここに変容のときをむかえる

*エルフィの言い伝えより 「ルミナ島のドラゴン

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2*ルミナ島のドラゴン

2*ルミナ島のドラゴン

バルアトルケものがたりⅢ*2

みんなでお茶を楽しんでいる最中も、セオナルドは忘れていませんでした。急いでケーキを食べ、カイトと話をしているおとうさんのところに行き、聞きました。

「おとうさん、エルフィの言い伝えの本ってどこにあるの?」

セオナルドのおとうさんは、話をとめて聞き返しました。

「大切な本だからしまってあるよ。どうしたんだ?」

そこでセオナルドは、ピリルが朝の時間に、ドラゴンを

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1*帰り道で

1*帰り道で

バルアトルケ物語Ⅲ*1

「アリィ、ぼく、思い出したことがあるんだ。エルフィの言い伝えの本にドラゴンのことが書いてあって、そのドラゴンは、ルミナ島に住んでいるんだ。ピリルの名前の「ル」はルミナ島のルなんだよ。」

突然言われたアリィはびっくりした顔をしています。セオナルドはピリルのなまえの由来について話しました。

「・・・その言い伝えの本はどこにあるの?」

エルフィの言い伝えの本は、セオナルド

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