4*前夜
バルアトルケものがたりⅢ*4
セオナルドは、みんなに聞こえるように、エルフィの言い伝えの本の一節、ルミナ島のドラゴンを読みました。静かではありましたがあきらかに違う空気がその場を包んでいて、みんな黙ってその空気を感じていました。
「なんだか暗いかんじがするなあ。ドラゴンが怒りと絶望から生まれたとは知らなかったよ。」
最初に言葉を発したのはカイトでした。カイトは沈黙が苦手なのです。
「どういうつながりがあるのか、はっきりしないけれど、とにかく行ってドラゴンに会わないと。」
ピリルが言いました。
「うちに来たらどうかな?おとうさんはまだ終わらないでしょ?おかあさんも今、家にいないけど、近くにおばさんたちが住んでいるから大丈夫。」
アリィが言うと、カイトも言いました。
「ここから私たちの村まではそう遠くない。わたしももうすぐ終わるだろうし、エルザももうすぐ戻るから大丈夫だろう。」
「おとうさん、おかあさん、僕もピリルと一緒にアリィのところに行っていいでしょう?」
セオナルドの言葉に、二人は顔を見合わせました。
「思っていたよりも早いが、旅に出るときが来たんだな。独りではないし、大丈夫だろう。」
セオナルドのおとうさんは、不安そうにしているおかあさんの肩をだきながら、言いました。
「じゃあいいんだね!!やった~~~!!」
セオナルドはうれしそうです。セオナルドを囲んで、アリィとピリルも
にこにこしています。
「それでは私の出番ね。3人が安全に過ごせるように、護りましょう。」
ピリルのおかあさんユニコーンが言い、その場で頭を軽く振りました。前髪がわかれ、角が現れました。
角からキラキラとした青色のベールが出て、ピリルとセオナルド、アリィを覆っていきます。
青色のベールが完全に3人を覆ったあと、おかあさんユニコーンが口笛を吹きました。
ピィーッ!
その音と共にベールは消え、3人が見えるようになりました。
「もう大丈夫、3人は護られているわ。」
おかあさんユニコーンの言葉に、セオナルドのおかあさんはほっと笑顔になりました。
「今日はもう遅いから、明日の朝出発しなさい。」
セオナルドのおとうさんが言い、皆うなずきました。
「じゃあ、明日ね!」
ピリルたちが帰っていきました。
その夜、セオナルドはなかなか寝付けませんでした。
明日から旅が始まる!!!!!
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