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バルアトルケものがたりⅤ

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#スコットランド

8*アリィ

8*アリィ

バルアトルケものがたりv*8

ハーブティーの香りが部屋いっぱいに漂っています。

おかあさんは洗い場に立ち、洗い物をしています。

ルシスはケホケホしながら ハーブティーを飲んでいます。

 「ぼく アリィの様子を見てこようかな。ちょっと心配だし。」

セオナルドが言うと

「そうね。起きているようだったら 朝ごはん食べるか聞いてみてくれる?」

おかあさんが答え、セオナルドは台所をあとにしまし

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7*お母さんのハーブティ

7*お母さんのハーブティ

バルアトルケものがたりⅤ*7

セオナルドとルシス、おかあさんはポリッジを食べ終えました。

おかあさんがお手製のハーブティを準備しています。

おかあさんのハーブティはその日によってブレンド、割りあいがかわります。お天気や一緒に飲む人によっても変わるのです。

「今朝はみんながいつもとちがうからむずかしかったわ。」

おかあさんはハーブティをマグカップにそそぎながら言いました。

「わあ。いいに

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6*波打ち際で

6*波打ち際で

バルアトルケものがたりⅤ*6

それは波打ち際でのできごとでした。

砂と貝殻でアリィが夢中になって絵を描いているいるときのこと。

なんだか視線を感じ、目の前を見ると遠くの海面に白いものが見えたのです。

あれ?なんだろう?

アリィが目を凝らしてみていると、その白いものは波にのって、ゆっくりと近づいてきました。

近づくにつれて、その白いものはイルカだとわかりました。

体がそれほど大きくない

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5*あさごはん

5*あさごはん

バルアトルケものがたりⅤ*5

セオナルドは元気よく帰ってきました。

もとはといえば、夢見が悪かったので気分を変えようと家を出たのです。おもいがけずピリルにも会えたので気分はすっかりよくなっていました。

空はすっきりと明るくなり、鳥の声が響いています。蜂たちも起きたばかりなのでしょう。ブーンと言う羽音が聞こえてきます。

家が見えるところまで来ました。煙突から煙が出ています。

おかあさんが起

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4*朝

4*朝

バルアトルケものがたりⅤ*4

セオナルドのおかあさんの朝はとても早くはじまります。

居間の暖炉の火をおこしてから、お湯を沸かします。ティーポットに茶葉を入れてお湯が沸くまでの間、暖炉に手をかざし、朝ご飯になにをつくるのかゆっくりかんがえます。

ところが、今日はいつもと違いました。居間のテーブルにマグカップがひとつ、そしてマグカップのとなりにはティーナプキンが丸められて置かれているのを見つけた

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3*夜中から

3*夜中から

バルアトルケものがたりⅤ*3

その日の夜中、アリィは目が覚めました。なんだか胸がむかむかして、頭もズキズキとしています。こんなに気分がわるいのは、かなり久しぶりです。すこしでも楽な体制をとろうと動いていると、物音に気付いたルシスが目を覚ましました。

ルシスは少しの間アリィの様子をみていましたが、具合が悪い様子なのを察してそっと声をかけました。

「アリィ、大丈夫?お水飲む?」

アリィは返事を

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2*サイン

2*サイン

バルアトルケものがたりⅤ*2

ふたりは森の奥の奥の大きな石の上に座りました。

空が青くひかって、ところどころに雲が浮かび、ゆっくりと流れています。

のどかな景色とはうってかわって、二人は真剣です。頭を寄せ合って話しをしています。

「そのゆめのなかは雪で真っ白だったんだ。ぼくは何かを探していたんだけど、何を探したのかはわからない。」

「雪かあ。ずいぶんと季節はずれだねえ。寒くはなかったの?

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1*えがおのちから

1*えがおのちから

バルアトルケものがたりⅤ*1

セオナルドは家を出てピリルの家に向かって歩きはじめました。じぶんの足元をみながら歩みに合わせじゅもんをとなえながら進みます。おかあさんが教えてくれたじゅもんです。

一歩足を踏みしめて

ガ・オ・エ!ハ~!

一歩足を踏みしめて

ガ・オ・エ!ハ~!

一歩足を踏みしめて

ガ・オ・エ!ハ~!

ハーツ!のところで空を見て、思い切り口を開けます。くりかえしているうち

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