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意外と知られていないカナダの医療崩壊の事実(1)

今回は、カナダの医療の崩壊の事実についてお話しします。

最近英語でのツィートを読んでいると、今COVID19の影響もあり、カナダの医療制度が崩壊寸前いうことが伝わってきました。

そこで、これはここで共有しておくといいなと思いました。

理由はの一つは、カナダの医療に関することは日本語で語られることは少ないために、日本では知らない人が多く、カナダに対する誤ったイメージを持ったままの人が多いと感じること。

もう一つは、カナダはG7に入る経済先進国です。そんな国でも医療が崩壊すことがあるということを、理解しておくことは、今後高齢者の人口が増え、少子化の進む日本に住む私たちにとって意味のあることだと思うからです。

なるべくわかりやすく解説してみますので、時間があれば最後までお付き合いください。

カナダの医療は質が高いという幻想

皆さんは、カナダと聞くと「質の高いケアを無料で提供」しているイメージがありませんか。私もその一人でカナダは、日本よりも住みやすい国に違いない、と思っていました。

ところが、留学のためトロントについた翌日に読んだ地方紙の朝刊の第一面に「5歳の男児が救急室の前で死亡」というヘッドラインを見つけ、驚きました。当時日本では、救急車で病院へ運ばれた人が、治療を受けられないということは考えられなかったからです。

この一件から私は、カナダの医療制度や仕組みについて関心を持ち現地の何人かの人に聞いてみました。しかし、保健医療の政策の決め方や提供の仕組みが日本とかなり異なるために、私の期待する回答は得られませんでした。

これは多分、お互い自分の国の医療制度しか知らないために、医療制度という一つのことを話し合う上で、必要な共通言語を持ち合わせていないからだと思いました。 

そこで、私は、報告書や論文を集め、それをもとに自分で考えることにしました。今回、改めて調べ直した結果をもとに説明してみたいと思います。

カナダの医療の問題点

ここでは代表的な3つの問題を説明します。その3つとは以下の通りです。

  1. 急を要する状態なのに、診療や治療を受けるまでに長く待たされる(長い待機者リスト)

  2. 医療スタッフ(医師や看護師を始めとする医療従事者)の不足

  3. 不十分かつ古すぎる医療設備

では一つずつ解説しますね。

1-①長い待機者リスト

2018年のデータでは、カナダでは家庭医から紹介されて専門の医師へ受診するまでの平均期間が約8.7週間(約2カ月)です。それから、実際の治療の開始までに、さらに平均11週間待ちます。つまり、最初に家庭医に診てもらってから治療が始まるまでに、平均5ヵ月間待つことになります。

これが、医師の数の少ない州だと、平均45.1週間と待ち時間が長くなります。つまり1年間も待つことになる人もいるということです。

日本ではまず考えられないですね。アメリカでも医療が受けられない人が多いというニュースを聞きますが、そんなアメリカでも77%の人は、最初に家庭医に受診してから4週間以内には治療が受けられると言われます。

ある報告書では、検査を受けるまでの待ち時間も紹介されていました。カナダでは、超音波やCTスキャンを受けるためには約4週間、MRIにはなんと約10.6週間待ちます。

モントリオールのある男性の場合には、緊急手術が必要だったのですが、結局手術が受けられると連絡があったのは、その男性が死んで2ヵ月後だった言います。他にも、すぐに手術が受けられずに、麻痺が残ってしまう人も出てしまいます。

こんな状態ですから、お金のある人は、カナダで治療を受けるのを諦めて、米国などに自分でお金を払って治療を受けに行きます。2017年だけでも、22万人近くのカナダ人が国外へ治療を受けに行ったそうです。もちろん自費になりますので、人工股関節の手術に200万以上支払っています。

お金のある人は命が助かるが、そうでない人は悪化したり死亡したりするという、なんとも言えない不公平な状況になっています。

1-② なぜ待機期間がこんなに長いのか

主たる原因は、グローバルバジェットという州政府から病院へ資金が支払われる方式によると言われています。

日本では、一般には病院は出来高払い制と行って、実際にかかった診断や治療にかかった費用を診療報酬に基づいて計算し、それにより支払いを受けるというシステムになっています。

グローバルバジェットという方式は、出来高払いではなく、あらかじめ1年間にどれだけの費用がかかるのかを、州政府と病院が交渉し決めるというものです。この時の交渉では、これまでの病院の実績や、インフレ率、設備投資についての内容に基づいて額が決められるそうです。患者の重症度や治療の内容や、看護必要度などは考慮されることはありません

そのために、病院側は予算が減らないように、治療する患者、入院患者を制限することになります。また、手のかかる患者が増えたとしても、それに合わせて看護スタッフを補充することもないということです。

このことが待機期間を長くしている原因なのです。今先進国では、この方式はデメリットが大きいとして、採用されているのはカナダだけであると言われています。

これを聞いただけでも、カナダの医療が驚くほど崩壊していることがわかりますね。

さて、次は医療スタッフの不足です。これも大きな問題です。

長くなったので、つづきの話は次回のブログで書きます。

ではでは



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