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第二十四景 余裕がない時の話

僕は余裕がない時、人の悪いところばかりが目についてしまう。

その人が持つ良さなどにも目もくれず、悪いところを心の中で責める。そして軽蔑する。冷めた目で見る。

なんと意地汚い人間なんだろうと、自分で自分のことをそう思う。

なんであの人は先のことを考えて動かないんだろう?なんであの人はあんなにも仕事が遅いんだろう?なんであの人はそれをしたら失敗するって想像出来ないんだろう?なんであの人はあんなに臭いんだろう?

こんな感じで、心の中で呪詛を唱えて、勝手にムカついて、勝手にイライラする。

でもある時気づいた。

そんな自分は人のことを勝手に判断して、勝手に評価出来るほどの立場なのだろうか?と。

そうやって一歩引いて自分を見つめ直すと、人から見たら悪い側面が自分にもあるかもしれないということに気づく。

自分に余裕がないから、周りの人全員が自分の邪魔をするのだと勝手に敵意を剥き出しにしていたことにも気づく。

そうすると段々と心に余裕がでてくる。呪詛を唱えた人たちをもう一度見渡してみる。

きっとあの人は目の前のことに必死なんだ。きっとあの人は細かいことまでこだわる人なんだ。きっとあの人はまだ仕事に慣れていないだけなんだ。きっと臭い人は…?

みんなちょっと良く見えてくる。

でも臭い人は臭いのだ。どんな理由であれ、臭い人は臭い。

しかし、よく考えれば、自分がその臭いを臭いと認識してしまうのがいけないということに気づく。

もう一度、鼻から空気を吸いこんでみる。

やっぱり臭い。

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