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第五十七景 マッチングアプリ大戦記 episode9?10-1

「9人目 ?さん アラサー ?似」

諸事情により、割愛させていただきます。

「10人目 Mさん アラサー ?似」

この人は以前のこの話に出てきた人。いいねを送ってから、かなり時間が経って、マッチングしたような気がする。こっちが送ったメッセージの2分の1くらいしか返って来なくて、かなり手こずったけど、粘り強くアポに繋げた。

メッセージ交換も慣れてくるもので、相手の写真や自己紹介文を軽くいじると、打ち解けやすいことを学んでいた。

アポに誘った時も、ランチかと思いきや、片道3時間かけて行って、泊まることを伝えたら、飲むことになった。初アポで飲みは珍しかったので、ちょっとそっちのことを期待してしまった。

1泊2日の予定で、隣の県に向かった。太平洋側の県で、雪はそれほどないものの、とても風が強かった。そして寒い。ビール旅でもあったので、福島路ビールを買いにアンナガーデンというところに行った。

その後、宿にチェックインし、時間があったので、お風呂に入って、冷えた体を温めた。宿の前にバス停があるので、そこで待ち合わせをし、お店まで一緒に行くことになった。何軒か飲み歩く予定になっていた。

準備を済ませ、宿の前で待つ。まだ風は収まらず、もの凄く寒い。待ち合わせの時間を10分くらい過ぎ、来ないなあと思っていたら、やっと到着した。

背は結構低くて、くちびるに特徴があった。なんか良いと思った。好きになりそうな共通点は一目見たときになんかいいと思えたかどうかだ。最初に違和感を感じてしまうと、それがのちのち覆ることはなかなか無い。

1軒目に向かう途中、世間話をしたが、声が低く、つっけんどんなところがあったので、僕の硬さは取れなかった。1軒目は彼女がよく行く焼き鳥屋だった。

職人が焼き鳥を目の前で焼いてくれるカウンターに座れたので、ワクテカしていた。とりあえず串の盛り合わせとビールを頼んだ。

彼女はとにかく自分の話をしたがった。元カレの話や、友達の愚痴が多かった。僕は相槌を打ちつつ、職人の手さばきを見ていた。ちょっと口調がきついけど、東北っぽいイントネーションがちょくちょく出てくるのでニヤニヤしながら聞いていた。

色んな元カレがいるらしく、一番長かった元カレが、僕と同じ県の出身で、僕の近くの市まで来たことがあるらしい。たれかつが他県の人には人気なのだと初めて知った。

そのあとはビールを飲みながら、会話をした。ほぼ聞き役に回った。なにか話すと突っ込みがきついし、怒っているような口調で僕はたじたじだった。本当に怒っていたのかもしれない。


彼女は好きな漬け物を頼んで、喜んで食べる姿は可愛らしかった。にんじんを恵んでもらった。

彼女がトイレに行く隙に会計を済ませたが、食べた分は自分で払うと言って聞かず、財布にお金をねじ込まれた。一気に好感度が上がった。

次に向かったのは、僕が目をつけたおでん屋だ。カウンターオンリーで予約しないと入れないこともあるので、席は取っておいた。この土地で如何わしい通りにあるらしく、なかなか行きづらいところにあるようで、見つけるのに時間がかかった。

急な階段を登り、ドアを開けるとこじんまりとした店内が現れた。店の人がオール女性のため、男性客が多かった。この時もそうだった。日本酒、焼酎のボトルが奥に見えるカウンターに並んで腰掛け、ワクテカした。

頼んだのは、今宵のおまかせとビール。お刺身もあるうえに、おでんもある。最強だった。あまりにも美味すぎて、食べることに没頭していると、彼女が「今日は何でこっちまで来てくれたの?」と意地悪な質問をしてきた。

僕はちょっと考えたが、「福島のビールを買いに来ました!」と大真面目に0点の解答をした。彼女の求めていた答えとは違ったらしく、いじけて隣にいたおじさんと会話をし始めた。お酌をしてあげて、からすみを貰って満足そうにしていた。

かなり毒を浴びせられ続けていたので、恐怖心が芽生え始めていた。とりあえず、カウンターで手際の良さを見せつけている女性の手元に注目し、牡蠣のおでんを頼んだ。絶品だった。

またも、自分の食べた分を財布にねじ込まれた。終電を気にしていたので、ここでお別れかと思いきや話に出ていた馴染みのバーに案内されることになった。不機嫌なのか、どうなのかよく分からない人だった。

バーの割りにガヤガヤしていて、ほぼ満席だった。隣で話す彼女の声も聞き取り辛かった。時間もかなり遅かったので、2杯ほど飲んで、店を後にした。終電の時間は過ぎていた。

宿までは一緒に歩いた。彼女の方が年下なのに、かなり苛められた。靴紐を結ぶために止まると、先に行かれた。ふざけ合いながら、歩いていると宿についてしまった。名残り惜しかった。宿のフロントにタクシーを呼んでもらい、来るまでロビーで話した。

タクシーが着き、タクシー代くらい払おうと、渡そうとしたら、それも辞退された。彼女が乗り込み、見えなくなるまで、タクシーを見送った。つんとした横顔が印象に残った。

勝気なところもあるが、構ってくれないと、いじけるなど可愛らしいところもありもっと知りたいと思った。

宿の部屋に戻り、すかさずまた会いたい旨を伝えた。距離が離れているので、ちょっと迷っていたようだが、了承してくれた。

次の日、物産館のイベントでビールを買う予定があった。全種類をブルワリーの人に頼んでいたら、1本おまけしてくれた。ハイランドポートというブルワリーさんだった。

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