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第三十景 ここ数週間の話

ここ数週間、これを書き始めて過去のことを振り返ることが多くなった。時には、思い出したくないことも浮かぶし、できなかったことを後悔することもある。どうしようもない状態になる夜も増えた。

でも思いだして、書いてしまう。その時々を振り返るとその時の感情をその場で発散させることはほぼ無かったと思う。抑え込んできた、言い出すことをしなかった、その反動なのかなとも思う。

心の中で考えたことを100とすると、2くらいしか話さない僕には、下手でも文章にしておく方が良いのかもしれない。考えてることが分からないとよく言われたけど、それは僕が話さないことの方が多いから当然のことだ。大事なことほど言わないし、言えない。

まあ書いたとしても100のうち60くらいのことしか文章には出来ないし、100を120で書くという表現力も持ち合わせてはいない。なかなか難しい事である。

昔から自分の中で会話を完結させてしまうことが多い。心の中で相槌を打ち、相手がするだろうと思っている回答の2歩くらい先の答え方をしてしまう。会話がうまく成り立つはずもない。

先週は特に、昔できなかったこと、悪かったことばかりに注目しすぎて視野が点になっていた。下を見ることの方が多かった。以前の自分を今の自分から客観的に見て、責めては悔やむことを繰り返してしまった。

そんな時、僕は感傷に浸るためにそれっぽい音楽を聴いたり、映画を観たりすることが多い。大抵はその時の自分を肯定してもらおうと思って聴いたり観たりしているが、ただ泣くだけだ。

過去の自分、今の自分は同じ自分なのだから、仲良くすればいいもののそれが出来ない。自分の中にそういう自分がいたことを認めようとすればするほど卑屈に、そして惨めに感じてしまう。認めようとし過ぎてついに煮詰まってしまった。

過去の自分、過去の悪いところに目を向けている自分、そしてそれを更に上から客観的に見ている3人目の自分が、ついに今日の朝出現した。仕事に行くために玄関を出た瞬間にふいに現れた。

もはや意味が分からない。「もうそろそろ、そんなことは止めて、どれかは捨てないと」「なにかの嬉しい感情でそんな自分を隠すんじゃなくて切り離そうよ、置いていこうよ」「今を生きようよ、今できることを考えようよ」と頭の上から聞こえた気がした。

まったくその通りである。ああそんな単純なことだったのだと、頷きながら上を見上げた。そこにもうひとりの自分の姿を探したのだけど、あるのは青い空だけだった。最初からひとりだったんだ。

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