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第七十一景

今は大晦日の夜だ。お昼に年取りをしたので、昼から飲んだくれていた。本当な弟がこどもを連れてくる予定だったが、大雪で来れなくなってしまった。妹は昨日から帰ってきている。

外では軽く積もりそうな雪が降っている。もし今明るくなったら、外には真っ白な世界が広がることになるのだけど、見えるのは真っ暗な闇だ。暗闇は強い。凍り付いた窓をガラガラと開けてみたが、何も見えなかった。冷気が入り込む。細かい雪が顔に当たり、自分が持つ熱で解けていった。

さて、来年は何をしよう?と言ってもそれほど大したことは思い浮かばない。例年していて、今年出来なかったことといえば「県外への旅行」「温泉巡り」「県外の山に登る」くらいだと思う。

なんだかんだ県内限定で飲みには行ったし、自分の住む県に元からある魅力を改めて発見出来たと思う。あえて他の県に行かなくても、良いところはたくさんあった。

それは、すぐそこにある山の頂上から見える風景であったり、日常で出会う自然の景色、太陽に照らされた田んぼや神秘的な色に染まる空であったりする。

食べ物だって、ありとあらゆる物が揃っている。肉や魚はもちろんのこと、日本酒だって、クラフトビールだって飲める。特に魚は他の県に食べに行くのが勿体ないほど美味しい。山だって日本アルプスに登らなくても、心が洗われるほどの衝撃的な風景に出会えた。思ってもなかったけど、結構色んなものがあって恵まれている県だと思う。灯台下暗しだなあ。

こんな状況でも、物足りなかったということは全然無くて、逆にこの状況であるからこその楽しみを見つけることにも繋がった。非日常感を味わうことも、リフレッシュに繋がるけど、日常の中にもそれは転がっていた。

こんなことを頭に浮かべてみたあと、来年したいと思うことはなんだろう?

ひとつ思い浮かぶのは「オシャレな格好をして山に登りたい」ということだ。笑えてくる。

今まではそんな気は全く無かった。割りと無難だった。持っているものは悪くないと思うけど、実用的であれば良いと思っていたので、そこまでこだわって着るものや持つものを選んでこなかった。

どうせ汗でびちょびちょになるし、誰かに見せつけようなんて気も無かった。しかし来年からは、誰かに見てもらいたいというよりは、自分のテンションを上げるためにそういう格好をしたい。なにがなんでもしたい。

もう一度窓を開けてみたら月夜に変わっていて、うっすらと木や鉄塔の輪郭が見えた。


飲み過ぎて頭が痛い中、大晦日の夜にこんなことを考えている。

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