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小さな勝利を心の中に集めて~映画「ファザーフッド」

最近見た映画が、3本連続で偶然「父と娘」が主役でした。そのうちの1本目、「ファザーフッド」(2021年製作)です。

妻に先立たれた男が、悩み、苦労しつつも周りの人たちに支えられて、
一人娘を育て育てていく物語。

ストレートで素直によい映画でした。見終わってさわやかな気分になれます。
シングルファーザーの主人公はケヴィン・ハート。
少々神経質気味で真面目に子育てをするパパですが、真剣にやってるのにどこか可笑しさがあるのは、俳優さんの魅力ですね。

祖父母の温かいセリフとまなざし

最初は主人公と対立する妻の両親も、次第に温かく見守る姿勢になっていきます。娘を失った悲しみの中で、両親も自らを変えて成長していく。この妻の両親の姿勢は称賛ものです。

★妻の父の唯一のアドバイス「子どもはやりたいようにやらせろ」
★妻の母の励ましの言葉「小さな勝利を心の中に集めていくのよ、最高の財産になるわ」
(「勝利」と日本語訳してしまうと伝えたいニュアンスが違うかもしれません。私は「達成感」「成功体験」「自信」といった意味で受け取りました)

主人公が初めての健診に娘を保健センターに連れて行き、何か指摘されるんじゃないか?ドキドキしていたら、思いがけず保健師さんに「あなた、すごくよく育てているわ!」と褒められたり、子どもの何気ない一言に成長を感じたり、自分の友達と娘がうまく仲良くなってくれたり…

子育ては大変なことの連続で、そのたびに親は自分の未熟さに自己嫌悪を重ねてしまう(私はそうでした…)。でも少し見方を変えると「小さな勝利」はいたるところに見つけられるものです。親が自分でそこに気づけるほどの心のゆとりを持てるためには、周囲の協力と温かいまなざしは不可欠です。

子育てする人だけでなく、子育てする人の周りの人に見てほしい映画

両親が揃った恵まれた家庭でも、この映画のように困難を抱えたシングル家庭でも、「何かができる」とか「人より上手い」とか「モノや機会を持っている」ことだけで豊かな子育てができるわけではない。

それよりも「一緒に過ごす時間」「ありのままの子の姿を受け入れる」ことなのかも。子ども側はいつも「ありのままの親の姿を無条件に受け入れている」んですよね。有難いことに。

誰にとっても「小さな勝利を心の中に集めていく」ことで、親は親になっていくのだし、子どもとの関係を作って「親子になる」ことができるのだと思います。

「父と娘」映画、残りの2本は…?

「ダンガル きっと、つよくなる」
このお父さんが自分の夢を子に託し、子の意思に反して鍛えまくる筋書きは、たとえ娘が将来成功したとしても、私は好きになれませんでした~

ちょうど東京オリンピックも間近ですが、オリンピックの選手がこんな思いをして東京にやって来るのかと思うと、今の状況では胸が痛い。今回、オリンピックのうんざりするような内幕を見てしまったので、本来のオリンピックの意味って何?と考えると虚しくなってしまう。


「新感染 ファイナル・エクスプレス」
2021年度下半期に公開されるであろう?Netflixオリジナルシリーズ、ドラマ『静けさの海』の予習のため、ペ・ドゥナと共演するコン・ユの出演作を見ておかなければ、というわけで、嫌いなはずのゾンビものをまた見てしまいました。

これはゾンビですけど、コロナに置き換えて見ることもできます。人間の変質していくさまが本当に怖い。コン・ユとマ・ドンソクの圧の強さとゾンビの量で、もう「父と娘」のドラマは吹っ飛んだ!というのが正直な感想です。

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