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宅建士試験合格講座 不動産登記法 > 権利に関する登記 #2

■ 4 所有権に関する登記

(1) 所有権の保存の登記
 
所有権の保存の登記とは、権利部の甲区に初めてする所有権の登記のことです。
 所有権の保存の登記は初めてする所有権の登記なので、登記義務者はいません。したがって、所有者が単独で申請します。その際、所有者になりすました者が登記することがないように、所有権保存登記ができる者は以下の者に限定されています。

① 表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人
② 所有権を有することが確定判決により確認された者
③ 収用により所有権を取得した者

表題部所有者から不動産を買い受けた者は、表題部所有者と共同しても、所有権の保存の登記を申請することはできない。

【登記の分類】

保存登記・・・はじめてする所有権の登記
原則として、以下の者以外は申請することができない。
① 表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人
② 所有権を有することが確定判決によって確認された者
③ 収用によって所有権を取得した者

設定登記・・・新たに権利を設定した場合になされる登記
移転登記・・・ある者に属していた権利が他の者に移転した場合になされる登記
更正登記・・・登記事項に錯誤または遺漏があった場合にその登記事項を訂正する登記
変更登記・・・登記事項に変更があった場合にその登記事項を訂正する登記
抹消登記・・・既存の登記を抹消するための登記

(2) 相続等による所有権の移転の登記の申請の義務付け(申請主義の例外)
 所有権の移転の登記などの権利に関する登記の申請は原則として当事者の任意であるが、申請主義の例外として、不動産の所有権の登記名義人が死亡し、相続または遺贈によりその所有権を取得した相続人は、所定の期間内に、所有権の移転の登記を申請することが義務付けられます。

① 相続開始時における所有権の移転の登記の申請義務
(a) 通常の相続の場合
 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。
 なお、この登記の申請義務は、遺産分割の結果をふまえた登記を申請した場合だけでなく、遺産分割前の法定相続分に応じた登記を申請した場合でも、履行したことになります。ただし、後者の場合は、その後に遺産分割を行うと、遺産分割の結果をふまえた登記〔→下記②〕が義務付けられます。

(b) 相続人に対する遺贈の場合
 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様に、上記(a)の期間内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。

② 遺産分割後における所有権の移転の登記の申請義務
 通常の相続の場合において、上記①(a)による登記のうち遺産分割前の法定相続分に応じた登記がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。

③ 登記の申請義務が課されない場合
 代位者その他の者の申請または嘱託により、上記①または②の登記がされた場合には、その登記の申請義務は課されません。〔→すでに義務は履行されたことになるため。〕

④ 申請義務違反の効果
 正当な理由がないのに上記①または②の登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられます。

(3) 相続人である旨の申出等
 相続人である旨の申出は、上記(2)①による相続開始時における登記の履行義務の簡易な履行方法です。
 相続人に対する遺贈により所有権を取得した者については、相続人である旨の申出をすれば、あらためて遺贈に基づく所有権の移転の登記の申請義務が課されることはありません。しかし、この申出をしても、遺産分割により所有権を取得した場合は、あらためて遺産分割の結果をふまえた登記の申請義務が課されます。

① 相続人である旨の申出
 上記(2)①により相続開始時における所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨および自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができます。
 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続人である旨の申出をした者は、相続等による所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなされます。〔→これは、遺産分割の結果をふまえた登記は下記②により義務付けられるので、遺産分割前の法定相続分に応じた登記を申請したものとして扱われるということである。〕
 この申出をすると、登記官の職権により、その旨ならびに当該申出をした者の氏名、住所等が所有権の登記に付記されます。

② 遺産分割後における所有権の移転の登記の申請義務
 相続人である旨の申出をした者は、その申出の前後にかかわらず、遺産の分割によって所有権を取得したときは、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。
 ただし、相続人である旨の申出をした後に、遺産分割前の法定相続分に応じた登記がされている場合は、登記の申請義務を負うのは、遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者のみです。

③ 登記の申請義務が課されない場合
 代位者その他の者の申請または嘱託により、上記②の登記がされた場合には、その登記の申請義務は課されません。〔→すでに義務は履行されたことになるため。〕

④ 申請義務違反の効果
 正当な理由がないのに上記②の登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられます。

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