見出し画像

81_生誕の湯② -旅館みどり荘(明礬)-


 生誕の湯、2ヶ所目。観海寺から北上して明礬に向かう。
 
 観海寺も明礬も、バスや車といった移動手段がないと、巡るのは厳しい。2月末まで運行していた、別府八湯循環バスを活用して正解だった。
 地獄蒸しプリンで有名なお店の向かい側、明礬地獄のすぐ横に「遊ったり湯ったり家族風呂」の看板が見える。

 見た目は普通の一軒家のようだが、昔懐かしい昭和の引き戸玄関には、しっかり「ゆ」ののれんがかかっている。扉を抜け、女将さんから施設の説明を受ける。
 「今日は露天も空いてますから。ごゆっくり」


 階段を上ると、こじんまりとした部屋に浴室No1、2、3の扉が見えてくる。部屋の手前側には、露天風呂へと続く扉もあった。今日は露天風呂へ行くことにした。

 廊下を進むと、さらに3つの扉が見えてくる。露天風呂は菫(すみれ)の湯と蓮華(れんげ)の湯があり、菫には先客がいらしたので、蓮華の湯に入った。蒲公英(たんぽぽ)の湯は使用禁止だった。

 旅館みどり荘。硫黄泉。1時間、貸切湯。これでワンコインは、かなりの贅沢。木の枠で囲われた小さな浴槽に、ちょろちょろと明礬の湯が流れている。

 明礬にしてはお湯の色が薄いと思った。みどり荘から少し離れたところにある、明礬湯の里はシルキーブルーの色味が強かった。それぞれの個室には椅子と洗面器と石けんのみが置かれている。身体を洗い、いざお湯の中へ。足を入れると、沈澱した湯の花がふわりと舞った。どうやら底に沈んでいただけのようだ。ゆっくりお湯をかき回すと、見たことある色に戻った。

 硫黄泉だからなのか、それとも明礬のお湯だからなのか、やや熱い。少し風がある今日なんかは、これぐらいがちょうどいい。じっくり浸かって温まる。もちろん、加水のためのホースも備え付けられている。昔の自分だと、我慢できずにすぐに加水していただろうけれど、今ではすっかり熱さに慣れた。

 露天といえど、外から見られないように、竹の柵で囲まれている。ただし、屋根はないので、日の光はまっすぐこちらを照らしてくれる。明礬は市街地からやや離れているため、静寂な空間に心も身体も癒される。


 別府温泉は、基本的に“あちちの湯”のため、「少し入って、上がる」を繰り返す。別府のお風呂屋では、どこでも見られる光景だ。
 
 30分ほど経ったころだろうか。隣の先客、小さい男の子とおとうさんが「そろそろ、上がろうか。」と会話しているのが聞こえてきた。
 時計はもうすぐ14時を回ろうとしている。今日はあと1つ温泉に行くつもり。お隣さんと一緒になって、ゆっくり身体を拭き始めた。


この記事が参加している募集

至福の温泉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?