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19_梅雨間の晴れ湯 -日の出温泉(浜脇)-

 梅雨の時期、休日と晴れの日が重なると心がはねる。今日は少し離れたお風呂に入りに行こう。用事を済ませ、おやつどきの時間に自転車を走らせた。
 
 今日入るお湯屋は、10号線沿いにあるゆめタウンよりも先の、朝見川を大分市方面に渡る橋のすぐそばにある。この辺りは「浜脇温泉」と呼ばれるエリアで、初めて来た。番台さんはいらっしゃらず、箱にお金を入れておいた。建物向かって右側が男湯で、入ると早速、下へと続く階段が見えた。
 
 
 日の出温泉。単純温泉。ジモ泉。こちらも別府ではお馴染みのスタイルな半地下構造で、脱衣所と浴室は分かれておらず、開けた空間が待ち構えている。建物の見かけからは半地下になっているなんて全く想像がつかない。夕方手前の明るい時間のはずなのに、男湯は地元のおじさまたちでにぎやかだった。年を取ると1日の行動時間が早め早めになっていくのだろうか。こんにちは〜と挨拶をして、壁側の棚の一角に脱いだ洋服を押し込んでいく。湯屋に行くだけなのに、つい、いつものくせで腕時計をつけてきていた。習慣化された行動は、頭で考えなくとも体が勝手に覚えている。自分のことをフッと鼻で笑い、腕時計を外した。
 
 
 浴槽のまわりで座れる場所を探し、そろりそろりとお湯をかぶる。うおお、浜脇の湯もしっかり熱い。自分の腰掛けた場所がちょうど蛇口があるところで、すでにじゃぶじゃぶと水が出ていた。自分から蛇口をひねるのは少し勇気がいる気がしていたから、ホッとする。今度は洗面器の8割ぐらいお湯を汲み、残りの2割を水で埋めてゆっくり浴びた。これだと、少しはマシになる。
 
 お湯を救い、水を足して体にかける。そんなことを繰り返していると、目の前のおじいさんに「慣れんとあちぃやろ」とタオルで背中を洗いながら声をかけてきた。浜脇のお風呂は初めてきたんですけど、これから少しずつ慣れていきたいですね〜。そんなふうに言葉を返すと、そうかい。と、ふたたびにこりと相槌を打ってくださった。
 
 晴れといっても梅雨時だから、空気はじめっとやや重い。汗をかいてじとっとしている体を洗い、きれいさっぱり湯で流す。
 
 清潔なからだで、さあ、浴槽へ。多少はこの湯の温度に慣れてきたものの、肩まで浸かろうと深く座り込む時には、足先はすでにピリピリしていた。わずかな時間で体が温まっていくのがわかる。同時に、がまんして長風呂するものではないと察した。20秒ゆっくり数えて一度上がり、体を冷ます。
 
 かけ湯に入れる水の量を足して、湯水をかぶる。ちょっと冷たいぐらいのお湯が肌に触れるのが気持ちいい。徐々にお湯の方が多くなるように加減を戻し、再びかぶり、いっとき待つ。
 
 あちらこちらでは、もう上がろうとする人、T字カミソリでていねいにヒゲを剃っている人、これから入ろうと服を脱ぎはじめる人、人それぞれの湯屋で過ごす時間を眺め、もう一度浴槽に入るために全身を整える。次に浴槽に入ったときは、さっきよりも長く浸かれそうな気がしたから、今度は30秒数えてみた。せっかく浜脇まで足を伸ばしてきたので、今日はもう一ヶ所湯屋に行きたい。・・・29、30と数え終わると、上がる支度を始めた。
 
 
 建物を出ると、すぐ横のベンチでは、先に上がったおじさまたちが缶コーヒーを片手に湯上がりのひとときを楽しんでいらした。
 
 お先に失礼します〜と挨拶すると、おぉ〜、お疲れさん、と返してくれた。
 
 身も心もほぐれたまま自転車に乗る。
 
 漕ぎ出すペダルはいつもよりも軽い。



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