コンサルに注力する真意。顧客の”ホンネ”に踏み込むことで得られたことは何だったのか?
「よりよい食との出会いをつくり、365日の景色をあざやかにする。」をパーパスに掲げる株式会社SARAH。おいしい!が増えるグルメアプリ『SARAH』や食品の企画開発向けデータサービス『FoodDataBank』などのサービスを運営する一方で、掲げるパーパスをいち早く達成するために手がけているのが、食品業界向けのコンサルティングサービスです。
企業向けサービスとして、FoodDataBankとしてプラットフォームやデータベースの提供を行っている一方で、なぜプロダクトを介さないコンサルティングサービスまで行っているのか。
今回は、FoodDataBank事業本部 コンサルティング事業部事業責任者 兼 事業開発室マネージャーを務める安原さん、代表取締役の高橋さんに、会社にとってのコンサルティング事業の重要性や価値、今後の展望を伺いました。
顧客の”本音”に応えることから始まったコンサルティング事業
ー コンサルティング事業が立ち上がった背景をあらためて伺いたいです
安原さん:
きっかけになったのは、顧客への価値提供をもっと出来ないかと考えたことです。
私は、入社初期は『FoodDataBank』のセールスを担当し、その後にカスタマーサクセスチームのリーダーを担当しました。その中で、プロダクトを通じて成果を出せるユーザーさんがいらっしゃる一方で、プロダクトだけでは上手く成果につながらないユーザーさんもいらっしゃいました。
もちろん、プロダクトを通して成果を出してもらえるように可能な限り一緒に併走をして何とかしようと取り組みましたが、どうしても成果につながらない場合もあることを痛感しました。
ー 実際にどのようなパターンが多かったのか、具体的な例を知りたいです
安原さん:
背景として、近年、大手メーカーを中心に、食品業界でもデータを重視する企業が急増しています。
もちろん、この流れ自体は良いのですが、データを活用したいと考えてはいるものの、そもそものデータの扱い方を理解していなかったり、これまでの業務オペレーションを変えられない、などデータサービスとしてのプロダクトを導入するだけでは上手くいかないケースが想定以上に多いという実態が見えてきました。
他にも、たとえば、データから得られた示唆を実際の企画に落とし込むことに苦戦される方が一定数いらっしゃいます。
高橋さん:
たしかに、プロダクトが良くても、それを使いこなせなかったり、そもそもの仕事の進め方が上手く整備されていないと、事業として成果につなげるのは難しいよね。
これは他の領域でも起こっている問題で、たとえばマーケターはGoogle Analyticsのような分析ツールを使いこなせるのも大事だけど、それ以上にちゃんと周囲を巻き込みながら施策を進めていくみたいな方が成果につながりやすいと思う。
安原さん:
そうですよね。なので、まずはカスタマーサクセスのあり方を変えることから始めようと、一般的な”支援型カスタマーサクセス”から、より積極的に介入していく”先導型カスタマーサクセス”へと舵を切りました。
個人的には、”ライザップ方式”と私は呼んでいるのですが、まず自分自身がクライアントが目指す理想状態、つまり今の食領域であるべきマーケターや企画者の姿、だと捉えてもらうことから始めています。
そこから、この状態に辿りつくためには分析力の習得が必要不可欠であることをユーザーの皆さんに啓蒙することで、信頼を勝ち取りつつ、ユーザーさん自身に成長してもらうことで、成果につなげてもらうように動きました。
このように顧客やユーザーさんとのコミュニケーションを変えたことで、次第にプロダクトを超えた範囲の抽象度の高い内容を相談されることが増えました。そこで、『FoodDataBank』だけではカバーしきれない価値提供を行うための1つの手段として、顧客に対してデータを活かしたコンサルティングを提供し始めています。
成果を積み上げ、信頼を勝ち取る
ー コンサルティング事業が上手く軌道に乗った要因はどこにあったのでしょうか?
安原さん:
前提として、コンサルティングチームの目指す姿は、”先導者”です。もう少し詳しく説明すると、「クライアントのビジネス成長を牽引し、移り変わる生活者の食に対するニーズや市場の変化に迅速に対応する戦略を提供することで、継続的な競争力を築くパートナーとなる」というのが具体的なイメージですかね。
この目指す姿を体現するために最初に注力したのが、自分自身がマーケティングや商品企画の知識やスキル、経験を身につけることで、顧客のプロジェクトを主導し、その企業や部署が抱えている課題を解決できるように動くことです。
具体的な例を挙げると、食品メーカーの顧客からの要望には、大手企業の重要顧客に向けた商品開発の提案や受注率の向上に関する相談をいただきます。このような要望に対して、食品開発におけるマーケティング知識や経験、自社が持つデータを活用することで、企画の根拠や裏付けを行い、顧客の提案品質の向上に寄与しています。
高橋さん:
安原さんは簡単に言ってるけど、これってかなり難しいことだよね。プロジェクトの進め方とかもそうだし、企画提案におけるオリジナルのフレームワークを編み出して、それで実際に顧客の成果につながっているのは本当に凄いと思う。
そういえば、一度お客さんと会食をした時に、「安原さんの動きに本当に助けられているし、安原さんにもっと大きいことを依頼したい」と言ってもらえたことは凄く嬉しかったな。他にも、大手企業から商品企画プロセス全体の改革といった相談もいただけるようになっていて、確実に顧客からの信頼は高まっていると感じるよ。
安原さん:
そう言ってもらえるのはありがたいですね。
私は、コンサルティングの仕事は、顧客の要件をただ聞くだけの請負業ではなく、顧客の状況や要望を把握したうえで、顧客のお客様となる消費者の目線に立った企画に落とし込めるように正しく導くことだと考えています。
また、食品業界など食業界は、まだまだ消費者の傾向の変化に合わせたアップデートが進んでいない領域でもあります。だからこそ、コンサルティングを通じて、食品企業の商品開発や企画プロセス、マーケティング体制を再構築していくことが、顧客の成果にも直結すると考えています。
高まり続ける顧客からの期待に応え続ける面白味
ー たしかに、直近でも大手企業からの相談が増えている肌感があります
安原さん:
ありがたいことに、コンサルティング事業を立ち上げた初期から相談いただける内容や提供できる価値も幅広くなってきたなと感じます。
高橋さん:
直近でも面白い提案をしていたよね。
安原さん:
名前は出せないですけど、とある有名企業さん向けの企画提案の話ですかね。デザイナーのメンバーと協力して、ブランドを擬人化した提案をしてみました。
ー 面白そうですね、詳しく伺いたいです
安原さん:
提案したのは、ブランドイメージを擬人化して、これまでのイメージとは違う路線の商品企画だったのですが、大事なのは消費者の隠れた不満や欲求をキーインサイトとして、このキーインサイトを満たす価値提案できる商品設計や企画に落とし込むことです。擬人化はこのプロセスのイメージを持ちやすくするための一手段でしかありません。
この提案から目指すのは、既存のブランドイメージや商品を維持しつつ、新しい切り口の商品を提供することで新しいファンを獲得したり、消費サイクルを加速させることです。これによって全体の売上の底上げをし、成果につなげていければなと。
高橋さん:
今の話を聞いて、コンサルティング事業を立ち上げて良かったと改めて感じてる。会社のパーパスで、「よりよい食との出会いをつくり、365日の景色をあざやかにする。」というメッセージを掲げているけど、コンサルティングでここまで価値貢献出来たら、確実にこのパーパスを達成することにつながるよね。
経営の観点からも、プロダクトだけでなくコンサルティングでもマネタイズできるのは大きくて、コンサルティングでプロダクトを活用できる土台を整備して、そこからプロダクトを活用してもらう、みたいな流れができると理想的だと思う。
コンサルティングから得られたことを、プロダクトや組織に還元していく
高橋さん:
他にも、コンサルティング事業を立ち上げたことのメリットに、コンサルティングで得られた知見をプロダクトに還元できることも大きいと考えてるな。
プロダクトを成長させるためには、ユーザーが普段どのような業務を実際に行っていたり、何に困っているのか、解像度を高めることが大事だけど、ヒアリングやプロダクトに対するカスタマーサクセスだけでは、どうしても引き出せないこともあるはず。
だからこそ、うまくいった要因を抽出してプロダクトづくりにも活かしていくためにも、コンサルティング事業は大事な役割だと思う。
安原さん:
プロダクトへの還元は、たしかにそうですね。
もちろん、コンサルティングで提供している価値は、プロダクトに落とし込むのが難しい部分もありますが、プロダクトに反映させることでよりユーザーさんが成果を出しやすくなると思います。
ちなみになのですが、コンサルティングにおけるデータ活用で心がけていることに、”かゆいところに手を届かせる”ことがあります。
ー なるほど、具体的にはどのようなことなのでしょうか?
安原さん:
商品企画では、一般的にSNSのデータや売上やPOSの情報などを通じて、トレンドの兆しを探知し、市場の動向を把握することを行います。しかしながら、それだけでは消費者の心理や行動に関する仮説を多角的に探求し、そこから新たな価値を提供することは難しいものです。
その点と比較すると、『FoodDataBank』が持つデータの強みは”探索”にあります。消費者の生の声からインサイトを得て、消費者を理解することで、より深い仮説を立てられることに独自性があると感じていますし、そのような消費者の隠れた行動心理と企業の商品企画/開発のハブとなるプロダクトに進化させたいですよね。
高橋さん:
加えて、コンサルティングを通じて世に出せる事例を増やしていくことで、プロダクトのブランディングにつなげていくことは大事だよね。
これは少し別軸の話になるけど、経営戦略として、ブロックチェーン技術を活用して”グローバルな食と健康のデータ基盤”をつくりにいこうとしている中で、このデータを活かして海外展開も狙っていて。
で、グローバルで戦っていくためにはプロダクトを強化していくだけではなく、プロダクトとしてのブランディングにも力を入れていく必要がある。特に、ブランディング文脈においては事例は何よりもインパクトがあると考えていて、グローバルに進出するための土台を築くためにもコンサルティングは欠かせない。
そういった背景も踏まえると、コンサルティングで得られた知見を組織全体に浸透させる必要があって、ただ現状は組織としての横の連携はまだまだ課題があるので、連携をより強化しなきゃだよね。
”今のチームにはないスタイル”を持った人がいれば、もっとスケールできる
ー 課題というワードが出たので、コンサルティング事業における課題も質問したいです
安原さん:
明確にあるのは、リソース不足ですね。企業さんから新規の相談をいただいても、リソース不足から価値を提供しきれないと判断してお断りさせてもらうこともあったりするのも実情なので。
高橋さん:
コンサルティングをやっている会社の多くは、リソースが足りないと言っているよね。どうしても属人的な部分もあったりするし。この課題は、うちでも明確だし、採用活動を強化することは必須だと考えている。
ちなみに、安原さんはどんな人が新しく入ってくると良いと思う?
安原さん:
自分と違うスタイルの人が理想ですね。たとえば、消費財メーカーでブランドマネージャーを担当されている方が、食領域においてどのようなアプローチで企画を考えるか、みたいなことは気になります。
コンサルティング事業として、提供できる価値に多様性を持たせるべきだと思うので、他の領域でコンサルタントとして活躍されている方はもちろん、食領域で事業開発されている方だったり、マーケティングをやられていた方だったり。
今いるメンバーとは違う自分なりの思考の軸を持っている方と一緒に働ければなと思います。
高橋さん:
たしかに、その人なりのマーケティング観とかロジックを持ってる人にとって、新しい領域でも通じるかチャレンジをしてもらうのもありだと思う。
僕個人としては、顧客をリードして物事を前に進めるための熱量も大事だなと考えている。スキルやノウハウは後からでもついてくるので、熱量をもってクライアントワークに取り組めるかは外せないし、そういう熱量を持てる人に対しては、うちだからこそ得られる経験やキャリアパスを提供したい。
少し視点は変わるけど、世の中には、コンサルティングを経験してからプロダクトマネージャーに転身した人がいたりするので、会社としてそういうキャリアパスも提供できると良いのかもしれないね。
ー お二人とも、お時間をいただきありがとうございました!
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