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【ショートショート】しし座流星群

 梯子の上で泣いてる子。どうしたのと聞いた。
「お星様が取れないの」
 僕は、子供に叫んだ。梯子は結構高いのだ。
「降りておいで。お名前は何かな?」
 女の子だった。女の子は、言った。
「ひなたよ、ひらがなで」
 僕は、三流私大の大学生だった。少女に、言った。
「星はとっても遠くにあるんだよ」
 少女は、固く心からそう思っている事を、瞳や身体全体で表して、紅潮して、言った。
「でも、お父さんが言ったの」
「お母さんの死んだ日には、お母さん星が取れるって」
   かわいそうな言い逃れをしたものだ、この子の父親は。 

「じゃあ、僕が、お父さんに 掛け合ってあげる」
「お父さんも去年 死んじゃったの」
「じゃあ、あなたが20歳になるまでにあなたのお父さんとお母さんに会う方法を考えておくよ」
   嘘ついた父親の気持ちが分かった気がした。僕も真っ赤だ。

☆☆☆

 そして、ひなたが二十歳になった時、僕らは結婚した。ひなたが子供の頃から、ひなたに僕の両親と仲良くしてもらい、結婚式では、僕の両親は、自分らがひなたを嫁に出すような気だったろう。号泣してた。嫁ぎ先は、僕の家というか、あなた達の家だ。
 かくして、裏技的に、ひなたへの約束を果たせたのではないかと思っている。

  ひなたが結婚式の控室で言った。
「コルセット凄いね」
「ねー、なにか食べたら、骨が折れそう」
 僕は、愛おしさと共に言った。
「ああ、でも、お姫様みたいだよ」

 結婚式の今日は、たまたま、しし座流星群が観れる。もしかしたら、本当のお父さん、お母さんも、地上に降りて来るのかな?

(おしまい)


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