君の名は忘却の彼方へ
ある時コンパで出会ったその彼は、洋服もセンスが良く、会話も面白く、性格も良く、頭も良く、書いてるだけで良し良しづくしで、非の打ち所が無いってこんな人の事いうんだろうなーって思っていた。あ、もちろん顔も男前だ。男前豆腐の様に、物腰も柔らかい。
しかしなぜか、どうしてか、彼女と長続きしない…。モテるのだ本当に!
常に合コンでも1番人気で、必ずカップルになっていく。なのに、あーそれなのに、何故か長続きがしない。付き合った彼女たちに、なぜ別れちゃったのかと聞いても、決して体の関係とかではないんだけどね…と苦笑いをするだけなのだ。不思議だ…私が知らない彼の事と言えば、いわゆる夜のムフフ関係だけだから、別れる原因とするならばそれしかないと踏んでいたのに。
コナン君にも、金田一少年にも解けない難問だ。
そーし!じっちゃんの名に懸けて解明してやらねば!変な使命感と、そんな彼の弱点を見てやりたいという好奇心も手伝って、1日彼と付きあってみることにした。1日で事足りるのか?夜のムフフまで到達しないとわからないのか?そこまで自分を投げうって、彼の弱点を見つけて何になる?単に私も彼が気にっていたのか?これは言い訳というデートなんじゃないか?
違う意味でモンモンとしながらその日を迎えた。
待ち合わせの場所に行ってもやっぱり彼は素敵だ。襟なんか立てなくても、清潔感あふれる白いシャツが似合いすぎて、これで車に乗って颯爽とやってきたら、映画のワンシーンか、車の宣伝シーンみたいな爽やかさだ。
颯爽とか爽やかとか×が多い字なのに、バツなんか全然ない!赤丸急上昇!でもその赤丸が、✖だらけの落第赤点君になるまでそう時間はかからなかった。まず会って早々の一声に、わたしは<えええーーっ?>と耳を疑った。
私の本名ではないけど、イメージとしてはこんな感じ。
<ミチアゲバさーんこんにちはー!>新種の蝶々か、道場六三郎のなんちゃって弟子でもない。私の名前は<ドウジョウチョウだ>なんでそんなに見事に間違えるのか?しかも全て訓読みだ。
これか?これなのか?名前を間違えるのか?でもそんな事で、別れちゃうまでいくものなのか?
<いやだーー!私名前はドウジョウチョウだよーー!>とまだ最初だしそんな間違いはいくらでもないけど、まあ会って1分位だからいいか、と心の中で許してあげた。
しかし彼のびっくり読みはそれだけでは収まらなかった。
普段来ているスーツは<ジョージ・アマーニ>
好きな歌手はワムの<ジョルジオ・ミッシェル>
国内旅行で温泉なら<キドガワオンセン>、<ヨンマンオンセン>、<ハッコツオンセン>
昔のヘキサゴンもびっくりな珍回答だ。もちろん全部違う読み方です。
ちなみに<ジョージ・アマーニ>と、なんかジョージが甘いの好きみたいになっちゃたのはイタリアの<ジョルジオ・アルマーニ>が正解。
ワムの<ジョルジオ・ミッシェル>は<ジョージ・マイケル>
キドガワオンセンは鬼怒川温泉(キヌガワオンセン)
ヨンマンオンセンは四万温泉(シマオンセン)
ハッコツオンセンは白骨温泉(しらほねおんせん)のことだ。
なぜアルマーニがアマーニで、ジョージ・マイケルが、ジョルジオ・ミッシェルって読み方しちゃうのだろう?ウケ狙い?温泉なんて、旅行会社の入社試験なら間違いなく話題になるレベルだ。
いや笑えるんだけど、本気と書いて<マジ>と読むくらい真剣なのだ。ヤラセ一切なし。歴代の彼女達は直してあげなかったのだろうか?それとも、それくらいの事なんて、好きになったらアバタもえくぼで許していたのだろうか?びっくりした間違いはこんな感じだが、間に小ネタをちょこちょこと挟んできて、本当に日本語の音読みと訓読みもぐちゃぐちゃなのだ。
<俺、漢字苦手で、人の名前も覚えるの苦手なんだよね、へへ>と爽やかに笑っていたが、私にしてみれば<今日初めて車乗ってブレーキとアクセル間違えちゃった!テヘッ>と車が大爆走で、教官の私が思いきりブレーキ踏んでる状態だ。
これ毎日やられたら本当に疲れるに違いない。しかも英語と、イタリア語との読み方も違っているから、ワールドワイドに違ってる。
素敵な彼なので、辛抱強く漢字ドリルと名前を覚える訓練で頑張ってほしい。私は手伝わないけどね。
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