小説感想「三たびの海峡」 帚木蓬生
文庫本の奥付きをみると
1992年とある、30年の風月を重ねた
作品だ。
釜山でスーパーマーケットを
3店舗経営する、ある老実業家が
主人公。
彼の過去と現在が入り乱れた回顧録、
告白記の体で物語は進む。
そして「事実こそ小説」と信じて
疑わなかった故吉村昭さんの言葉を
反芻しながら、500頁近い長篇であるが
ほぼ、一気読了となった。
昭和17年、18年の戦時下に
慶尚北道に暮らす17歳の主人公
「河時根(ハシグン)」は、肺に持病をもつ
父親が戦時徴用となる知らせを受け