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作家さんと職人さんと落款と

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本日のお題:作家さんと職人さんと落款と
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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この日曜日に家で寝ているとお風呂場の方からゴボゴボと変な音が鳴るので見に行ったら、なんと風呂の排水溝から真っ黒な水が逆流して廊下の方まで溢れ出ておりまして(´・ω・`)。管理人さんに連絡して半泣きになりながら雑巾で拭きました。

発見が早く、管理人さんが上の階の排水を止めてくれたので被害は廊下だけだったんですが実はこれ2回目。何か呪われてるんちゃうーん、と思ってます。しかもこの日にマンションの排水管の洗浄したところなんですよ。


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■作家さんと職人さんと落款と

ごく普通の着物にはあまりつけられることはありませんが、作家物や有名工房の作品には少なからず落款(らっかん)が入れられております。落款とは簡単に言えば「作家さんや有名工房の作であることを示す印鑑(みたいなもの)でして、長着の場合は一般的に下前衽(おくみ)に押されていることが多いです。リサイクル着物を扱っていると、小紋や色無地などで稀に袖の部分など恐らく裁ち間違いのまま仕立てられたような「え?」と思うような部分に入っていることもありまして少々首をかしげることもありますがそういうのは例外として、ほとんどの場合は下前衽に裁ち合わせるようになっています。

ちょいと原点に戻って「落款」とは何かをネット検索してみると

「落款は、落成款識(らくせいかんし)の略語。書画を作成した際に製作時や記名 識語(揮毫の場所、状況、動機など)、詩文などを書き付けたもの、またその行為を言う。その文を款記といい、その時捺す印章を落款印と言う。慣習上、署名として押捺された印影、または署名に代えて押捺した印影をさすことも多い。署名用の印そのものを落款と称することもある。」(Wikipediaより引用)

とのことです。私も今まで知りませんでしたが落款とは「落成款識」の略だったんですね。さて、この落款ですがよくお客様に「この落款はどの作家さんのもの?」と聞かれますが、正直なところほとんどわからないです。もちろん超有名な作家さんでしたら落款を見るまでもなく作風を見るだけで大体の検討はつくのですが、作風を見てわからないものは落款を見てもよくわかりません。「それは勉強不足じゃないの?」と言われるかもしれませんが、まあ勉強不足は認めるとして(汗)この業界には多くの作家さんがおられるので落款を見ただけでその作品が誰のものか100%わかる方は業界人でもほとんどいないと思います。それに着物に付加価値をつけるためになんとなくそれらしい落款をつけているというのもたたありま…ゴニョゴニョ

もう一つ言わせていただくと、作家さんは呉服問屋専属で取引することが多いので、その呉服問屋と取引していない小売店だと全く接点がないということになります。いい作家さんであれば呉服問屋が丸抱えして「作った作品は全て買うから他の問屋には商品を出さないで」ということもありますのでそうなるとその問屋と取引していない小売店には全く情報が入ってこないのです。

着物が生活呉服から「特別なもの」になった昭和の後期あたり、いわゆるバブル景気の時期でしたが実際のところは店頭での販売はだんだんと陰りが見え始めておりましたので、販売方法を切り替えて催事販売が主とする店が増えてきました。おそらくこのメルマガをお読みの方もご覧になったこともあると思うのですが、展示会を開催するときに「○○先生来場!」とチラシに書いて付加価値をつけることが頻繁に行われ、もちろんその中にはご自身の卓越したセンスで勝負している本物の作家さんも多くおられましたが、その一方で好景気に押されて猫も杓子も作家として祭り上げられることが多々あったと聞いています。

バブル経済華やかりし頃、呉服業界も多少なりともその恩恵に預かり、各地で催事(展示会)等が開催されました。ここで少し解説しておきますと、展示会等を開催するためには自社だけの商品では少ないし、お客様も以前に見た商品ばかりという可能性が高いので、催事期間中だけ問屋から商品を借りることが一般的です。その時にも例えば訪問着○○円均一コーナー、小紋10000円ぽっきりコーナーなどとコーナーごとに商品を手配するのですが、やはり企画に一番熱が入るのが作家コーナーでして、普通にちょっと高級な商品をコーナー展開で置くよりも作家さんが実演販売する方がお客様も足を止めてくれるのです。

加賀友禅のように組合が落款を厳密に管理しており、作家と認める定義が明確なものもありますが、一般的には作家と職人さんの境目が曖昧ですので先日まで工房にこもって仕事をしていた職人さんが会社の意向で作家として展示会等に派遣されることもありました。

異論はあるとは思いますが、私自身はそれ自体は悪いことだとは思いません。職人さんも図案を考えたり微妙な挿し色を調整したり、ご自身のセンスで勝負している方がほとんどですし、先ほども書いたように職人さんと作家さんの境目が曖昧ですので、ご自身が作った作品に付加価値をつけてなるべく高く販売するというのは着物に限らず昔からどんな商品にもよく行われる手法です。

かくして、催事にコーナー展開してもらうためにメーカーさんは作家を仕立て上げ、商品には作家物という付加価値をつけて「作品」に変わりました。ここで念のために申し上げますが、ほとんどのメーカーさんは今まで職人さんとして働いていた普通のおっちゃんを作家に仕立て上げてぼったくりの値段をつけたわけではなく、真面目に物作りをしたうえで作家という付加価値をつけて売り出そうとしたと考えていただけると幸いです。

余談ではありますが、展示会でコーナー展開をする時にはメーカーから応援が来ることが多いのですが、普通にメーカーの営業が応援に来られるとそれはただの「お手伝いのメーカー社員」。しかし「作家さん」となると1日展示会場に拘束するために小売店に対して1日数万の日当を請求することができました。これはメーカーさん側からすれば全く売れなかった時のせめてもの安全弁として、またメーカーに比べて力の強い小売店が「あまり販売の見込めない催事にも関わらず、無責任にメーカーの人間を拘束させない」という視点では悪くない商慣行だったと私は考えています。

ちょっと話が逸れ気味になりましたが、かくしてメーカーが「作家」として売り出すと様々なメリットがあったので展示会が全国の小売店で多く開催された頃はあちこち作家さんだらけで、当然落款もその同じ数だけ作られていたので、その全ての作家さんのことを知っているかというと業界の人間でも落款を見ただけで作家名がわかるのは一般の方が考えるほど多くはありません。その証拠に、私は毎月月末にオークション形式でリサイクル着物を仕入れるのですが、その現場でも参加者同士(60代、70代の方も多く参加しておられます)で「この落款なんやろ?」「さあ、知らん」というような会話はごく当たり前に交わされております。

というわけで、結局結論としては落款を見ただけではプロでもよくわかんないのであまり聞かないでくださいということで(なんのこっちゃ笑)。

最後に今までの話とは真逆の話をいたしますと、「私は名前を出されるのが好かんねん。あくまでも私の作品だけを見て、その作品がいいと思って買ってもらえたらすごく嬉しい。落款をつけて変な付加価値をつけて私のハンコがあるから買う、ではなくあくまでも作品だけを見て気に入ったものが私の作品だった、というのが理想やねん」とある職人さん(ここはあえて職人さんと呼びます)が話してくれたことがありました。これもまた職人のプライドで常に良いものを作っているという自信があるからこそ言えることですし、逆に落款で自分の名前をつけているからこそ良いものを作り続けたいと思うのもまた一つの考え方だと思いますが、落款があるからいいものだと判断できるかどうかは…微妙なところですな。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
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