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筋トレと腎臓(最終回)

過剰な糖質は万人にとって有害
  腎機能が低下している場合、タンパク質を制限することは確かに重要ですが、前述したようにエネルギーは確保する必要があります。そのため糖質と脂質の摂取量を増やすことになるのですが、糖質と脂質も摂り過ぎると問題が出てきます。特に糖質は要注意です。
 
 糖質は腎臓に限らず、身体にとってはあまり有難い栄養素ではありません(特に果物は要注意)。摂取量は最小限に抑えるべきです。ただし、バルクップには必須なので、腎機能が低下している人で、適度なバルクアップと筋量維持を目指す場合は過剰にならないように注意して摂取した方が良いでしょう。また仮に糖質を全く摂取しなくても、体(肝臓や腎臓)は約150gのブトウ糖を自ら作りだします(糖新生)。しかし、このことは肝臓や腎臓に余計な仕事をさせることにもなるので、肝臓や腎臓に問題のある人は、少なくとも150gのブドウ糖は摂った方が良いでしょう。
 
糖尿病と慢性腎臓病の関係
 糖尿病による血糖コントロールが不十分で高血糖状態が長期間続くと、糸球体が障害を受けてタンパク尿が出るようになり、腎臓の濾過機能が低下します。この状態を「糖尿病性腎症」といいます。糖尿病性腎症も慢性腎臓病(CKD)の1つです。
 
 糖尿病の治療をしないまま高血糖状態が続くと、腎機能は悪化し続けます。最後は尿を作ることが出来なくなり、腎不全になります。
最近では、糖尿病性腎症が進行し、透析が必要となる人の数が急増しているとの報告もあります。透析を受けている人の原因となった病気で一番多いのは糖尿病性腎症です。

 さらに、糖尿病性腎症が進行すると糸球体の中の血管が狭くなり、濾過作用が低下して血圧が上昇するため、高血圧になりやすくなります。結果として腎臓の状態をさらに悪化させるという悪循環に陥ることになります。このため糖尿病性腎症の発症・進展を抑制するには、血糖値が適切になるようにコントロールする必要があります。そのためには食事管理が非常に重要となってきます。

水分およびカリウムと腎臓の関係
●水分と腎臓の関係
 「水分」は腎臓病の状況によって制限の内容が変わります。尿を濃縮させて排泄する働きが低下した腎臓では、老廃物を多く排泄させるために大量の尿が必要になりますので、水分を十分に摂る必要があります。
 しかし、尿量が低下して摂った水分が排泄せずに体にたまってしまう場合は、水分を制限する必要が出てきます。
 
 追記:一般的にコーヒーやお茶はカフェインを含んでいて利尿作用があるので、水分としてはカウントしないように、と言われますが、最近は見解が変わってきているようです。コーヒーでもお茶でも、水同様、水分としてカウントすべきである、という考えです。
 利尿作用ですが、頻尿の人や高齢者は、利尿作用のない水を飲んでも、排尿の回数が増えます。健常者や若い人とは状況が違います。
 いずれにしろ、何らかの尿のトラブルを抱えている方は、専門医で診てもらうことをお薦めします。
 
●カリウムと腎臓の関係
 カリウムは生命活動にとって非常に重要なミネラルのひとつです。腎臓の働きが低下すると「カリウムを制限しましょう。」と言われることがあります。よく誤解されるのですが、カリウムは決して腎臓に悪いわけではありません。カリウムは腎臓から排泄されたり、再吸収されたりして、その濃度は調節されています。カリウムは多すぎても少なすぎても良くないのですが、腎臓の働きが低下すると、その蓄積が問題になります。血液中のカリウム濃度が高くなりすぎると不整脈を起こすことがあり、最悪の場合、死に至ることもあります。一般に血清カリウム値が5.5mEq/L以上では制限が必要と言われています。
 
筋トレと腎臓保護を両立させるためのヒント
 最後に筋トレと腎臓保護に有益と思われるヒントを挙げておきます。
 ●体を温める 
* シャワーではなく、お風呂に入る(温度は約39℃~40℃、時間は約10 
  分~15分)。
* 冬は腹巻を使用する。
* 冬は温かい物を飲む。夏でも出来るだけビール等の冷えた物は避け、
  常温で飲めるような物を選択する。アイスクリームもNG。
* 体を温める食材を摂る。
 生姜、ニンニク、ニラ、根菜類、赤身肉、羊肉、鶏肉(加工肉はNG)。

 注意:肉類、特に赤身の肉は週に2日位の頻度で、かつ少量に留めます。タンパク尿が常に出る、あるいは血尿が出る人は、肉類は摂らない方が良いと思われます。
●塩分は1日6g未満に抑える(天然塩もNG)。
●カリウムを摂取する。
「(日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の予防を目的とした成人1人1日当たりのカリウム摂取の目標量を、男性3,000mg以上、女性2,600mg以上としています。また、2012年に公表されたWHOのガイドラインでは、男女とも3,510mg/日を推奨しています。
 
●黒い食材を摂る
 ひじき、昆布、黒ごま、黒米、黒豆、きくらげ、わかめ、海苔、黒酢、こんにゃく、ごぼう、プルーン、牡蠣、しじみ、コーヒー、ココア、黒ニンニク、など。
●その他のお薦めの食材、栄養素
 韃靼そば茶、ビタミンC、ビーツ、アルギニン&シトルリン、大豆製品(豆乳、納豆、豆腐など。ただし納豆は尿酸値を上げるプリン体が比較的多いので、痛風が出る人は控えた方が良い)。
 
●漢方を試してみる
 エキス剤ではなく、煎じて飲むタイプの漢方を試してみる。この場合、中医学専門の先生に相談することを推奨します。
 
●尿酸値を下げる食材を摂る(痛風が出る人)
 バナナ、野菜、米類、卵、乳製品(特に低脂肪乳製品)、豆類、キノコ類、豆腐、コーヒー、
●睡眠はしっかり摂る
 出来れば8時間は寝ましょう。ショートスリーパーはNG。また昼間でも5分位横になれると腎臓が休まります。
 
●ランニング等の有酸素運動は控えめに
 ランニング等の有酸素運動は、週2回までに留め、1回当たりに走る距離は10km以下とします。またペースはkm/7分台位のジョギングペースで行います。有酸素運動に関してはウォーキングがお薦めです。仕事等で普段から歩くことが多い、あるいは自転車で通勤、通学している人などは、ジョギング等は特に行う必要はありません。逆にやり過ぎると、筋量を減らしてしまう恐れ(特に40歳以上の人)があるため要注意です。ジムなどでは、トレッドミルやエアロバイクなどは使用しないで、筋トレに集中することを強くお薦めします。
 
●筋トレは週2回、または3回が理想
 腎臓に問題がすでに出てしまっている場合は、筋トレも週2回までとします。週2回の場合は、1回のトレーニング時間は休憩も含め2時間までとします。もし週3回行える場合は、1回のトレーニング時間は休憩も含め1時間までが良いでしょう。筋肥大のことも考えると週3回の方が望ましいですが、週2回でも大丈夫です。大切な事はオーバーワークにならないようにすることです。バルクアップやパワーアップに関しても「やり過ぎ」はダメです。怪我の原因にもなりますし、当然、腎臓への負担も増大します。

 特に中高年の人は怪我をすると、最悪、二度とトレーニングができなくなります。若い時のトレーニング方法は止めるべきです。

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