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『パンデミック下のイギリスには財政出動の計画がもっと必要だ』(2020年10月25日、フィナンシャルタイムズ)

 IMFが積極財政を主張し始めたことをいち早く報じたフィナンシャル・タイムズ自身も積極財政論に転換しているようです。特にイギリスが財政出動の支出計画を先延ばしにしたことを厳しく批判。驚くべきは、フィナンシャル・タイムズまでもが「政府は家計や企業と違うだろー!!」と言い始めていることです。
 緊縮財政は民間部門の所得損失を悪化させる。また、政府が財政出動に長期的なコミットメントを示すとき初めて、財政出動は経済の不確実性を緩和し経済活動を安定化させる働きを持つ。財政赤字の削減といった誤った政策を止め、公共投資を増やせ、と。どうでしょうか、これを日経新聞あたりが社説として主張することを想像できますか?こうした財政政策の大転換が長期的な潮流となり我が国も覚醒していくことを願ってやみません。

 今回は抜粋部分だけ要約して紹介しますね。(原文リンク: https://www.ft.com/content/14a62562-a0d6-4d85-939b-3b92cc85a3fd )

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『パンデミック下のイギリスには財政出動の計画がもっと必要だ』(2020年10月25日、フィナンシャルタイムズ)(抜粋を要約)

 英国政府が水曜日に下した、3年間の支出計画を取り消すという決定は誤りだ。政府はパンデミックによって引き起こされた巨大な経済的不確実性が理由だとしている。確かに、不確実性は、大規模な長期的コミットメントを延期する理由になる可能性がある。霧で視界が非常に悪い場合は、霧が晴れるまで待つのが理にかなっている。経済学の専門用語で言えば、家計や企業は「待つという選択肢の価値」を享受するために最善を尽くすかもしれない。
 しかし、政府は家庭や個人の企業とは異なる。私たちは、家計に例えることが財政政策を誤らせることを学んだ。政府の倹約(緊縮財政)が民間部門の所得損失を増大させるため、不況下での財政引き締めは事態を悪化させる可能性がある。政府の優柔不断は民間部門の不確実性を増すのだ。
 この点については英国の防衛支出が好例だ。長期的な財政出動の計画が可視化されなければ、長期の投資プロジェクトを伴う調達も戦略的な軍事計画も適切に実行できない。
 防衛分野に当てはまることは、より広い経済にも当てはまる。あるビジネスリーダーが説明したように、「(政府が支出計画を)遅らせると、ビジネスの回復を可能にする中期投資を完全に失速させることにつながる。」
 明確に発表された長期的な財政政策へのコミットメントはアンカーとして機能する。大胆な長期の支出計画により、政府は民間部門の経済動向への期待を調整し、補助金やその他のインセンティブを通じて、民間部門が財政計画が導く方向にシフトすることで収益性を高めることができる。
 英国とEU諸国はいずれも、今後数年間、財政赤字が他の重要な支出計画を脅かすことはないことを明確にする必要がある。とりわけ、IMFが良好な回復に不可欠であると主張した公共投資が重要だ。不況下で政府の赤字を削減することが国にとって誤った経済政策であるのと同様、短期の公共部門以外のすべての支出計画を延期することは、経済のコントロールへの誤った認識を生むだけである。(以上)

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