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【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く②(ヤン・リアン ウィラメット大学教授、 2023年11月21日)

 中国は、大規模な統一国内市場の建設を加速させ、インセンティブ政策を用いて国内の有効需要を拡大する一方、輸出企業の輸出能力のアップグレードと製品・サービスの輸出競争力の向上を支援する必要がある。

本文より

 前記事に引き続き、ヤン・リアン教授による寄稿「"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く」(11月21日付『中国社会科学報』)のその②をお届けする。(〔〕は訳註。)

 ここでは、リアン教授が各経済指標のデータを示しながら、中国経済は概ね回復傾向にあり、欧米で言われているような崖っぷち状態にはなく、今の課題は国内の有効需要の拡大や輸出競争力の強化等であると論じている。

(前回:①のリンク


最新の経済データは誤った主張を強く否定

 中国経済の最新のデータを見ると、2023年第3四半期の国内総生産(GDP)は2022年同期比4.9%増と、市場予想の4.5%増を上回り、2023年前期(=第2四半期)比では1.3%増と、0.8%加速した。2023年第1~3四半期のGDPは91兆3,027億人民元(=約12.5兆米ドル。1米ドル=7.3人民元で換算)、前年同期(2022年第1〜3四半期)でGDP成長率は5.2%と健全な水準を維持し、約5,808億米ドル増加した。言い換えれば、2023年の第1~3四半期だけで、中国のGDP増加分は2022年のノルウェーとベルギーの年間経済合計額(それぞれ5,793億ドル、5,786億ドル)を上回る。

 供給面では、2023年第1~3四半期の全国「一定規模以上工業企業」(年売上高2000万元=約4.1億円以上の工業企業)の付加価値額は前年同期比4%増となり、9月には前期比で実質4.5%増となった。工業の成長が現在加速中なのは明らかだ。さらに重要なことに、第1~3四半期の太陽光電池生産は63.2%増、新エネルギー自動車生産は33.7%増となった。これは、工業生産が健全に回復し、産業界のアップグレードが加速していることを示している。サービス部門の付加価値額は6%増加した。これは雇用創出と所得増加にとって重要であり、また消費者の需要を満たすための観光、交通、ホテルなどのサービス提供にとっても重要である。情報伝達、ソフトウェア、情報技術サービス部門の付加価値額は12.1%増加し、サービス部門における技術の実用性も急速に向上していることを示している。情報産業の活況は、他の産業や経済全体を大きく押し上げるだろう。

 需要面では、2023年第1~3四半期の全国固定資産投資は前年同期比で3.1%増加した。不動産部門はまだ調整中で、全国の不動産開発投資は9.1%減少したが、インフラ投資と製造業投資はそれぞれ6.2%増加した。ハイテク産業への投資は引き続き速いペースで伸びており、ハイテク製造業への投資は11.3%、ハイテクサービス業への投資は11.8%増加した。不動産投資を差し引くと、民間投資は9.1%増となり、民間投資家の経済に対する信頼と投資意欲が着実に高まっていることがわかる。これは、欧米の一部の専門家が主張する「国は進めど、国民は後退し、民間投資は断崖から墜落している」という誤った見方を強く否定するものだ。

 対外貿易では、2023年第1~3四半期の輸出額は17兆6025億人民元で0.6%の増加、輸入額は13兆1996億人民元で1.2%の減少となった。輸入と輸出で相殺すると、4兆4029億元の貿易黒字となった。輸出の伸びが鈍化した主な理由は、世界的な需要の低下と保護主義の台頭である。国際通貨基金(IMF)の情報によると、各国が毎年導入する新たな貿易障壁政策の数は2019年以降大幅に増加し、2022年には3000近くに達した。IMFは、2023年の世界貿易はわずか0.9%の成長にとどまると予測している。このような国際環境では、国内外での双循環戦略が特に重要である。中国は、大規模な統一国内市場の建設を加速させ、インセンティブ政策を用いて国内の有効需要を拡大する一方、輸出企業の輸出能力のアップグレードと製品・サービスの輸出競争力の向上を支援する必要がある。特に、1月から7月までの中国の自動車輸出台数は253.3万台で、67.9%増加した。中国汽車工業協会は、中国の自動車輸出台数が2023年には400万台を超え、新エネルギー車は着実に100万台を超えると予想している。これは、中国の産業高度化とバリューチェーンの向上にとって画期的な出来事である。同時に、中国の電気自動車の生産と輸出は、世界のグリーン転換の加速に貢献するだろう。

(③に続く。)
【MMT×中国:関連リンク】
2023/11/23
【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く①(ヤン・リアン ウィラメット大学教授、 2023年11月21日)

2023/04/20
中国の地方政府債務問題について。

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「MMTと中国のマクロ経済政策立案に対する重要な意義」(賈根良・中国人民大学教授、2022年6月17日)

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