(掌編小説)くろねこ春子の日常#005続・小春の結婚。終わりの物語
満月の夜に黒猫に変身する女の物語
小春(35歳)が結婚を意識した彼には、やっぱり秘密があった。
そして
彼は生きていた…。
午前3時。私は起きたまま天井を見ていた。このまま仕事を休んでばかりはいられない。それは分かっていたけれど、体は思うように動かない。
大好きだった祐也くんがいなくなって半年。もう秋。スマホを離せないまま布団に潜り込む。SNSでは祐也くんがいたバンド「クリームパン」のアニメタイアップ曲、「僕は戦うよ」の大ヒットの記事。以前ならイラついく記事のはずなのに、何だか愛おしくさえ思えてきた。そこには彼の幻影が生きているんだよ。
画面をどんどんスクロールしていく。「えっ!!!嘘っ!!!」
私は思わず飛び起きた。それは何かのテレビ番組を録画した動画。祐也くんが変身したサビ猫サビチィが、「僕は戦うよ」の曲に合わせてエアギターをしている!
「ここは長野県○○村です!山田さんのお宅の猫ちゃん、サビオくんは、なんとクリームパンのヒット曲、僕は戦うよに合わせてギターを弾く真似、エアギターをするんです!いつからなんですか、山田さん?」
「サビオを引き取っのは2ヶ月前なんですけど、テレビであのアニメが流れていて、その歌に合わせて急にやりだしたんですよ。私も驚きました」
山田さんという方がサビチィのお母さんなんだ。私はいてもたってもいられなくなった。今度の満月の夜に合わせて、何とか2日間の有給を取ろう。ひと目、祐也くんに会いに行こう。私はベッドから飛び出た。ありがとう祐也くん、今日は仕事に行けるよ。
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