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クリスマスツリーに宿したgoen°の物語(高さ12mのクリスマスツリーができるまで)

二子玉川駅「二子玉川ライズ」では、2018年から高さ12mのクリスマスツリーのデザイン制作を担当させていただいております。商業施設のツリーで、物語から全てのオーナメント、音、光まで手作りなのは、世界でもこのツリーぐらいなほど貴重な存在です!
今年も企画し、現在まさに制作中です。
今回はクリスマスというものが今の私にどれだけ大きく影響しているのかや、ツリー作りの拘りや制作過程を、3年間分振り返ってお話いたします。

「THE HOLY FAMILY」
【2020年11月14日(土)~12月25日(金)】

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(2020のテーマ、メッセージ)
 街も生活も一変した2020年。 春が静かに訪れていた緊急事態宣言の中、 季節外れの雪が降った日に今年のクリスマスを想いました。 そして筆をとり描いたものです。
 人と人がまた繋がりあえる世界が来ますように。 喜びを分かち合えますように。 決して大勢で集まれなくても、 優しい灯火に照らされ心を暖めてくれますように。 大切な人や時間を想って静かに祈ることができますように。 たとえ小さくても、 家の中でもお祝いする気持ちが大切。 距離があってもプレゼント交換をすることもできるかもしれない。 当たり前で気づきもしなかったことに感謝の気持ちを込めて描きました。
 私たちが住むこの二子玉川。 私たちが通うこの大きなriseの屋根の下。
 「THE HOLY FAMILY」—原点に立ち戻り、 今年のクリスマスはしんしんと雪を降り積もらせた心に灯火を贈らせていただきます。

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(2020 「THE HOLY FAMILY」企画スケッチ)

クリスマスとのご縁

私は幼少期から聖歌隊に入っていて毎年クリスマスは近所の教会で歌わせていただいたり、カトリック系小中高ではクリスマス劇をしていました。だからクリスマスとは元々馴染みが深いのです。父がクリスマスイブ帰宅しすぐにトイレに駆け込んだ時に玄関に置かれたプレゼントと同じものが翌朝枕元にあるのを見つける日まで、サンタも信じていました。(笑)

旧約聖書のイエスキリストの誕生の日ということだけを重んじてきましたが、広告を目指しはじめた頃に、クリスマスを別の角度からも感じるようになりました。それはクリスマスがキャンペーンをきっかけに、キーカラーが赤になったことなど人為的にアートディレクションによって現在の形が生まれているということを知ったからです。

大切な人のために贈る気持ちや、灯火、歌がうまれ、物語がうまれ、商品がうまれ…と人の優しい気持ちを鳴らす最大のクリエイティブキャンペーンであり世界中の人が参加できるプロジェクトである「クリスマス」を尊敬するようになりました。それ以降は、プロジェクトを展開するときクリスマスのアイテムや拡散の仕方を参考にしています。
いつか私も日や物事を表現できたら素敵だなと、ひとつの目標を持つのです。

goen°コインを最初に渡したのはサンタ
2007年goen°を立ち上げて、初めて名刺ができた時、名刺とgoen°のコイン(ご縁がある方に手渡すもの)をロヴァニエミのサンタクロース村のサンタに渡しにいきました。これまでありがとうと伝えに行ったのですが、ロヴァニエミには至る所にサンタがいて戸惑いました(笑)

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エストニア(タリン)のクリスマス

新人の頃、仕事でパペットアニメーションの作業をするためバルト三国エストニアのタリン に滞在していました。(最近だとTENETのロケ地と言えばわかりやすいでしょうか)
マイナス20度の極寒の中でも旧市街の広場のクリスマスマーケットは暖かく幸せな空間でした。サンタ小屋があり子供、恋人、家族が小屋に向かって歌を贈っていました。わたしも歌いました。とてもささやかな小さなクリスマスの喜びを街全体から感じました。

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その後、クリスマス時期になるとフィンランドのヘルシンキの港でクリスマスマーケットを堪能し、フェリーに乗ってエストニアに行くことが多くなりました。数年前も「アナザースカイ」という番組でエストニアに親娘で行かせていただきました。

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街そのものが昔読んだ絵本のようで、静かでせつなく、でも人が暖かい。そんな空気は何年経っても変わりません。
そして2018年二子玉川駅でクリスマスツリーを作らせていただく機会を得たので、私が感じるクリスマスの暖かさを形にする日々がはじまったのです。

Merry Tick Tock (2018)

クリスマスの企画書作りがはじまりました。まずツリーの絵に小さな村のような広場やコンセプトを描きました。そしてプレゼンは事務所をクリスマスの飾り付けをして説明させていただきました。世界各国どこへ行ってもオーナメントは必ず買ってくるので、それも並べたりしました。

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(ディスプレイデザインで幾度とお仕事をご一緒したことのある佐藤さんと模型をつくり)
他にも企画書にはツリー以外のアイデアも盛り込みました。叶ってないアイデアもありますが、こうしてビジョンが出来上がっていきます。

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ツリー作りは想像を超える大変さでした。気軽に描いたオーナメントが実際は巨大で、すこしずらすだけでクレーンを動かすことになります。

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そして、出来上がったクリスマスツリー。オーナメントの時計がクリスマスタイムを刻みます。
そして、プレゼントラッピングや村の看板を現場で作り上げて、完成です。

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ツリーの麓には小さな生き物たちの村が広がっています。それぞれの生き物のサイズに合わせた家が立ち並び、時を刻んでいます。それぞれ小さな仕掛けも施しました。例えばウサギの恋人同士の家では、結婚指輪と人参が回転しています。

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イルミネーション
そして、何より大事なのは音と光です。
音楽は私が空間デザインをさせていただいた二子玉川ライズ内保育園「はじまり はじまり えんniko」の子どもたちによる時を刻む歌声と、高木正勝さんによる聖なる奏でを、宮脇孝之さんが楽しい村祭りの音まで導いてくださることでオリジナルソングが完成しました。
愛おしい音楽は30分おきに奏でられ、光の演出が起こります。時計だけが灯ったり、小屋の窓灯がついたり。このイルミネーションの演出は畑秀樹さんが手掛けています。畑さんはツリーの企画スケッチを私が説明する時から同席くださり、いつも一緒に考えてくれます。まさに光もツリーの一部なのです。

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(深夜からはじまるイルミネーションとサウンドチェック)
そして、数日間に及ぶ寒さとの戦いの現場制作も無事終了し、Merry Tick Tock のツリーの完成です!

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(完成したMerry Tick Tockツリー)

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お披露目、点灯式当日、多くの方が集まってくださいました。私はサンタのようなGeorge Cockle (interFMの「LAZY SUNDAY」のDJ )と司会を担当しました。

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雪ん子と化したTABASA(ダンサー)が舞い、サンタが踊り出し、演奏がはじまります。

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なんと高木正勝さんが駆けつけてライブをしてくださいました!ツリーの麓にグランドピアノがおかれ、今回のために書き下ろしてくださった曲を奏でたのです。

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そして、クライマックス。小さな村の子たち(保育園はじまり はじまり えんniko)が時計の針を持って登場しツリーに登ります。何日も練習したのですが、ticktockの発声がばらばらで、真顔でした。(笑)しかし、子どもたちの可愛らしさに会場は暖まりました。そしてサンタと共に魔法をかけ、ツリーが点灯し時計が動き出したのです。
当日の様子はこちらからご覧ください↓

我々は制作物の過程をきちんと見て日々微調整を繰り返しました。近くのカフェからずっと皆さんを眺める日々。嬉しいことに多くの人が足を止めて眺めてくださってました。子ども達は小屋を覗き込んだりはしゃいでいました。長く二子玉川に住む老婦人が「これまで住んできて1番美しいツリーです。クリスマスというのはそもそも…」と話しかけてくださったこともあります。

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(ステップビジョンのアニメーション)

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そして、クリスマス期間中はエストニアの街のようにクリスマスマーケットを開催しました。毎日クリスマスライブが行われ、子どもたちが歌い、パフォーマンスがあり、楽しい屋台が立ち並びました。

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(マーケットに参加したgoen°によるオリジナルショップ。販売品はスタッフによる手作り。)

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(坂本美雨さん、おおはた雄一によるユニット「おお雨」のライブ)

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(最終日は高木正勝さんが再びライブしに来てくださいました。感謝)

サンタが街にやって来る⁉︎
ツリーにはSANTA POSTも設置しました。以前ロヴァニエミでサンタクロース村の郵便局に世界中の子供達から手紙が届いているのをみたことがあるからです。

そこではサンタクロースのお手伝いさんが、国別に手紙をきちんと整理して、サンタが実際読んでお返事を書いていました。
二子玉川の子どもたちもサンタに手紙を描き、沢山の手紙が集まりサンタの元へ送りました。

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そして、想いが届いたのかクリスマスフェスの時にフィンランドからサンタがツリーにやって来たのです。子ども達も、元子どもの我々も大はしゃぎでした。サンタはきちんと、我々が制作しておいたサンタ小屋の中に座って皆の手紙を読んだり、願いを聞いてくれたり働いてくださいました。

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こうして、2018年のクリスマスは私が当初思い描いたクリスマス村を実現できたのです。

ELECTRIC MOON Xmas(2019)

この地球🌏を宇宙から見たら、我々が住む灯そのものがクリスマスツリーのように美しいのではないかというところから発想を始めました。
子どもたちの大好きな宇宙めがけて発信するツリーです。不思議なオーナメント星人がツリーに宿り、麓にはクリスマス装飾されたUFOがあり、誰でも乗ることができ、UFOからツリーを見上げる視点でデザインしました。

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(ツリー、点灯式、フェスに至るまでの企画メモ)

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(ポスターにもなった企画スケッチ)
今回の企画スケッチは全て砂絵で作りました。
企画をはじめる前に、オーストリアのズリーンという街で行われていた子供映画祭にて砂絵のワークショップに娘と夢中になったことがきっかけです。それ以降、大量の砂をコレクションしたので、宇宙の星の粉を触る気持ちで砂絵に挑戦しました。しかし、慣れてないのでイルミネーションや手前のトナカイなど細かすぎて後悔しました。
一度砂絵と決めてしまったので、ロゴもキャラクターデザインも全て砂絵で制作しました。

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(砂絵で描いたオーナメント星人たち)
砂絵でいくつもの素材を描いてたある日、車の屋根に乗せたまま忘れて走り出してしまい、気づけば原画が消えて無くなる事件がありました。慌てて近くの交番を回ったり、走行した道を辿ってもみつかりません。きっとどこかの道端、または誰かの手に未だに砂で描かれた惑星や星人の絵があるかもしれません(笑)
さて、ツリー制作は昨年よりも大変でした。砂絵を図面化、立体化するのが困難なことだったからです。昨年のクリスマスを通して制作チームの団結力はますます確固たるものになっていたので、頻繁に打ち合わせをし一緒に組み立てていきました。
模型どころか打ち合わせ中に、その辺にある缶やアルミホイルですぐ組み立てては進んでいきます。
12mのツリーのフォルムで1番難しいのは、台座(鉢)にあたる部分のデザインです。ここが森なら根を張っているので美しく作れますが、ショッピングモール空間なので、耐久性、安全性が問われます。

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建て込み
周りのショップが閉まった夜22時以降から作業開始です。風通しが良い分、この時間になると極寒です。でも帰宅途中の方々が優しい言葉をかけてくださるので頑張れます。

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(どこまでも高く登りオーナメントをつけてくれる棟梁(左)、打ち合わせから全てを受け止めて設計制作してくださる春山知久さん(右))

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(棟梁にお願いし、クレーンでツリートップにあがりました。上からの景色は頑張るスタッフたちでした)

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(巨大なアルミホイルで子どもが作ったかのようなオーナメント)

niko and...のUFOが上陸⁉︎
niko and...winter2019 Christmasの広告で制作したUFO。菅田将暉さんと小松菜奈さんがプレゼント作りをしながら操縦していたUFOをツリーの麓にディスプレイしました。

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UFOもツリーの麓に無事着陸し、「ELECTRIC MOON Xmas」ツリーの完成です!

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昨年と違い、ツリーの天辺には地球が輝いています。地球より下のツリーは宇宙で、世界を逆さにしたかったのです。しかし、すべてを逆さまに展示することはできませんでした。

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(近くでみると巨大な地球。大陸が星の形になってたり、トナカイソリの形になってたりしますが下からは見えません…)
点灯式、多くの人がまた集まってくださいました。ロケット打ち上げのカウントダウンから始まりました。いよいよELECTRIC MOON Xmasの出発式です!

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(銀河の彗星のごとく舞うTABASA

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(UFOから現れる坂本美雨さん)

ELECTRIC MOON Xmasのイルミネーションサウンドは、関口シンゴさん作曲、坂本美雨さん作詞・歌唱で生まれました。このテーマに合わせて書いてくれた詩もメロディもとても素敵です。oto°goen°レーベルから配信(Luminous for Electric Moon Xmas - Single)もしています。ぜひ、ひと味違うクリスマスソングを求めていたらおススメです。

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(xmas and...niko and...winter2020の広告楽曲に決定)
そして、坂本美雨さんがテーマソングにあわせ、小さな宇宙人たちが登場します。

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(はじまり はじまり えんnikoの子どもたち。先生のお手製衣装は、流れ星、惑星、飛行士…?バラエティに富んでいて可愛らしい)
そして、地球から地面に光が注がれ点灯し、クリスマスがはじまりました。
クリスマスツリーのUFOは行列をつくり、多くの方に楽しんでいただきました。

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(サンタへのお手紙はロケットポストで届けます。)
そして象徴的なelectric eye movieを作り瞳に映しました。

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ELECTRIC MOON PARTYでは多くのミュージシャンが奏でてくれました。
マーケットも賑やかに開催され、goen°はオフィシャルショップで砂絵のワークショップをしました。

(結束力の高いクリスマスチーム)
POPで賑やかなクリスマスとなりました。しかし、点灯式の夜から、暖かみのある従来のクリスマスツリーの方がよかったのではと悩み始め、2020の企画を早くもはじめるのでした。

(この年の娘と飾り付けしたツリー)

THE HOLY FAMILY(2020)

先ほども書いたように、2019年のクリスマス点灯式の夜から企画を始めました。

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(企画メモ)
初心に帰ろうと、いくつかアイデアを考えました。自宅のアトリエにクリスマスアイテムの一部を年越しも飾り続けました。なぜなら、クリスマスツリーの企画決定は毎年5月前後で、クリスマスの感覚を忘れてしまうからです。今年こそは忘れないでおこうと決心しました。

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(外は桜。内はツリー)
考えがまとまり絵を描こうと思ってた頃にコロナ禍により緊急事態宣言となりました。ある日春だというのに雪が降りました。窓から雪を眺めながら、今しかないと思い企画スケッチを描きました。

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(企画スケッチ)
そして、仲間とリモート会議で小さな窓枠から必死に家にあるクリスマスアイテムを見せながら企画説明をしました。

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こんな状態でも団結力のあるクリスマスチームはすぐに理解してくださり、さっそく夏には模型やオーナメントが出来上がり始めました。例年より遥かに早い準備です。

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(goen°事務所でオーナメントの素材検証。)

本年は初心に帰り、ツリーは小さな灯火と天然素材をヒンメリのように組んだオーナメントのみです。
そして根元には小さな村を作ろうとしてます。窓が中心となり、その窓で世界中のクリスマスやそれぞれのメッセージが繋がる仕組みです。

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まさに、これから今年のツリーの建て込みが始まろうとしています。今年は点灯式はありませんが、誰でもどこからでもツリーを楽しんでいただけるよう参加型の工夫をしております。皆様に協力していただきたいことのお知らせも今後あります。ぜひ、よろしくお願い申し上げます。

どうぞご期待ください。(つづく)

Merry Xmas
(goen°森本千絵)

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【森本千絵プロフィール】

1976年青森県三沢市で産まれ、東京で育つ。
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科を経て博報堂入社。
2007年、もっとイノチに近いデザインもしていきたいと考え
「出会いを発見する。夢をカタチにし、人をつなげる」を
モットーに株式会社goen°を設立。
現在、一児の母としてますます勢力的に活動の幅を広げている。

niko and...の菅田将暉・小松菜奈のビジュアル、
演出、SONYmake.believe」、組曲のCM企画演出、
サントリー東日本大震災復興支援CM「歌のリレー」の活動、
Canon「ミラーレスEOS M2」、
KIRIN「一番搾り 若葉香るホップ」のパッケージデザイン、
NHK大河ドラマ「江」、
朝の連続TVドラマ小説「てっぱん」のタイトルワーク、

広告の企画、演出、商品開発、ミュージシャンのアートワーク、
本の装丁、映画・舞台の美術や、
動物園や保育園の空間ディレクションを手がけるなど
活動は多岐に渡る。

現在、本年の二子玉川駅ライズ空間のクリスマスツリーや、
青森新空港のステンドグラス壁画を制作中。

【受賞歴】
N.Y.ADC賞、ONE SHOW、朝日広告賞、アジア太平洋広告祭、
東京ADC賞、JAGDA新人賞、SPACE SHOWER MVAADCグランプリ、日経ウーマンオブザイヤー2012、
50th ACC CM FESTIVALベストアートディレクション賞、
伊丹十三賞、日本建築学会賞、など。

【著書】
「GIONGO GITAIGO JISHO」
(ピエ・ブックス/2004年)
作品集「MORIMOTO CHIE Works 1999-2010 うたう作品集」
(誠文堂新光社/2010年)
ビジネス本「アイデアが生まれる、一歩手前の大事な話」
(サンマーク出版/2015年)
絵本「おはなし の は」(講談社/2015年)
絵本「母と暮せば」(講談社/2015年)




goen°の活動を応援してくださる皆さま これからもご支援よろしくお願い申し上げます!