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フランチェスコ・リッソの大人カワイイ『Marni』

ラウンドトゥブーツ。カラフルだが上品なモヘヤニット。「大人カワイイ」印象の柄で包まれたワンピース。様々な視点から大人エレガンスに遊びを忘れないブランド『MARNI』。今回は17AW、前マル二創設者コンスエロ・カスティリオーニからバトンを受け継ぎ、現在までクリエイションし続けるフランチェスコ・リッソにフォーカスしたい。

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※ファッションはどういうものか。どうすれば魅力的な恰好で思考で服を見れるのだろう。デザイナーの思考や服作りは常に高いところにあり、私たちはそれに魅力を感じ共感する。もしくは新たなクリエーションを行う。つまりその思考を少しでも理解しようとすることができれば私たちのなりたい自分。魅力的な自分、新たな自分に近づけることができるのではないか。という考えをもとにこのノートを毎週不定期で作成しています。(何かに従事するという意味ではなく新たな自分を創るという意味で)

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Francesco Risso

彼はフィレンツェのポリモーダ、NYのFIT、修士課程としてロンドンのセントラル・セントマーチンズで博士号所得後、数店舗でデザイナーを行い、彼はその中で販売員としても働いていた経験をあり、リックオウエンスやアレキサンダーマックイーンを取り扱っていた経験がある。その後ウィメンズ担当で「PRADA」加入。17AWより「MARNI」のクリエイティブディレクターに就任。

彼は好奇心旺盛で(大学三つはしごしていることからもわかる)映画、ニュース、旅、読書、音楽、関わる人々様々なものに関心があり服作りにも表れている。昨今ドーバーでも即完売していたようだが、彼が意識しているアップサイクルをプリントに落とし込んでシャツとして販売していたり、彼が使用しているチェックの多くは18世紀に使用されていたタータンチェックだったりと歴史にも深く知識を広げている点からもわかるとおり知的で、その好奇心が存分に発揮されている。

20年間マル二を支えたコンスエロの後任

MARNIは1994年にコンスエロの夫が経営しているCiwifursという毛皮会社から派生してできた(コンサルされた)実験的だった彼女の服作りは毛皮のファブリックを使用。初の試みで構築的なイタリアンスタイルを実現。50年風の幾何学模様を重ねたスタイルは(現在でもマル二で健在の柄on柄)マル二を世に知らしめることになる。

時代に合わせない彼女の芸術的で大人エレガンスなマル二は多くの顧客に愛されるブランドになったが、17AWリッソにバトンが渡される。。。

約20年間を一瞬にして変えてしまうのだからリッソのショーが始まるまでは批判もかなりあった。(変化にあふれるパリと違いミラノは伝統に富んでいる部分も少なからずある)しかし彼の作るコレクションはその考えを一掃することになる。

大人カワイイエレガンス

リッソが成功した大きな要因は、彼がプラダで学んだBEINGSという考え方で、簡単に言うと想像したものを実体化する力。(らしい)リッソはこれを「個人が模索している最中」と表現している。(現にマル二の明確なコンセプトを作らないようにしていて、その都度表現したいことを落とし込んでいる)これは、ミウッチャは抽象的な概念から物事を多元的に思考し表現するプロということから、リッソはプラダの七年間で破壊したものから新たな価値を見出すことを学んだ。だから、マル二が約20年かけて行っている伝統的で構築的な服づくりをリッソなりに解釈した結果、伝統を損なうことなく、大人エレガンスを継承することができた。これは紛れもなく知的で好奇心旺盛なリッソだからなし得たものだ。

そして彼の私生活でも周りの友人や従業員に対する接し方も素敵である。彼はマル二のショップもプロデュースしておりよく遊びにいくと必ず声をかけるという。デザイナーチームのなかでも彼は細かく指示を出さない。それはマル二を『ミステリーボックス』のようだといった彼のファッションに対する考え方からきていると考える。「ミステリーボックスは無限の可能性でファッションにもその要素が含まれている。コミュニケーションであったり、性格、感情、世界をそう見ているか間でもわかる」つまりリッソは個々の表現を大切にしていて、それをひっくるめて「MARNI」といえるのだ。そこにフォーマルなスーツがあれば、リッソはパジャマ生地でスラックスにはやわらかい生地を使い、仕立てはスーツでナイーブな雰囲気から一変大人カワイイに変わってしまう。彼にとってファッションは自分を表現するツールでもあり同時に幸福を与える表現のようだ。

私的考察

リッソは人間大好きでとても人情あふれる素敵な人間。デザイナーは尖っているイメージがあるが彼は多様性を大切にしているデザイナーの1人。
多様性はファッションにおいて危険性も孕んでいる。それは先ほども触れたがコンセプトがずれて明確なクリエイションに向かえないこと。となった場合かなり危険。なのに多様性をとる。そこにリッソのファッションは自由という観点が、ある種私たちを旅させてくれるような感覚に陥らせてくれる。リッソの服作りには着る人を明るく遊びのある生地やカラーでカワイイ印象に。しかし、柄や仕立ては手を抜かないエレガンスな再構築的手法。この絶妙なバランスが常に彼の思い描く大人カワイイエレガンスを演出し私たちに新たな表現のツールを提案してくれている。

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