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「ポイントカードはお持ちですか?」は聞かれなくなる / 共通ポイントに起きた3の大きな変化とは?[考察②]

前編はこちら。

前編では、近年のTポイント加盟店の撤退はサービス開始当初の「1業種1社」方針と独占契約が時代の変化ともに成り立たなくなってきたと紹介しました。

以前まで1業種1社に絞ってもらう変わりに、加盟店側もTポイントだけにするという関係が成り立っていましたが、今はその契約に加盟店側がデメリットを感じているのです。

後編ではなぜ以前の関係が成り立たなくなったのか。時代の変化の中で起きた3つポイントを解説します。

競合サービスの台頭

Tポイントは2003年にサービスを開始し、競合がほとんど居ない状態で共通ポイントサービスの代名詞としての地位を築き上げました。

2010年から「Ponta」が登場しましたが、それでもしばらくはTポイントのシェアは高く推移していました。

Tポイントがファミマ、エネオス、TSUTAYAなら、Pontaはローソン、昭和シェル石油(Shell)、ゲオといった棲み分けがされていました。メンツを見てもTポイントの方が会員を多く獲得できそうです。

しかしその後、2014年に「楽天ポイント」、2015年にドコモの「dポイント」が登場したことによって、徐々に雲行きが怪しくなります。

CCCのTポイントと違い、楽天とドコモは共通ポイントとして加盟店でポイントが利用できるのはもちろんですが、自社サービスとの強い連携をアピールできました。

楽天ポイントは楽天市場、楽天トラベル、楽天カード、楽天銀行や楽天証券。ドコモは携帯料金、dマガジンやdtvなどd関連サービス。

これら自社サービス郡での料金支払に対してポイント還元率を高めたり、固定費の支払いにポイントを利用可能にできる強みを持っていました。

ユーザーとの接点を元々持っていた2社ですから、全くのゼロからユーザーを集める必要もなく、利用者数は一気にTポイントへ追いつく規模になりました。

物理カードからアプリ管理へ

競合サービスの台頭と同時に、ポイントカードの管理方法にも変化が起きました。物理的なカードからアプリでポイントを管理するのが一般的になったのです。

10年前はレジでカードを渡していましたが、最近ではスマホでバーコードやQRを表示/読み込みするだけで、ポイントを利用したり加算されたり出来ますね。

物理的なカードのシステムを構築するためのコストとアプリを開発するコストを比較すると、よっぽどのことが無い限り、一般的には後者の方がコスト低く抑えられます。

さらに物理的なカードに比べて顧客管理や購買履歴の管理などビックデータの取得や活用が容易という点もアプリの強みです。

例えば、物理的なカードへポイントサービスから情報をプッシュすることは出来ませんが、アプリであれば簡単です。

コンビニでお弁当を買った人には、次の日に弁当と一緒にお茶を購入してもらえるように飲み物のクーポンをプッシュ通知するなんてことが出来るわけです。

物理的なカードでも顧客情報や購買データは加盟店側に多少提供されていたり、追加料金を払って取得しているとされていますが、こうした即時性のあるビッグデータの活用は昔の物理的なカードでは出来ません。

アプリ管理への移行により、こうしたコストやビッグデータの利活用に変化が起きたため、各社の自社アプリを含めた競合サービスが乱立することとなりました。

決済機能と共通ポイント


アプリ管理への移行に伴い、ポイントアプリ ≒ 決済アプリ という認識が広まったことも大きな変化です。

PayPay、楽天ペイ、d払い、au Pay、メルペイ、ファミペイなどなど、◯◯ペイと名前の付いた決済アプリが過去4,5年で急速に浸透してきました。

2018年に誕生しスマホ決済でNo.1のシェアを誇るPayPayには2023年4月末時点での利用者は5,700万人、2022年度のポイント発行額は6,000億ポイントですから、物凄い勢いで成長しているとわかります。

これらの決済アプリには、各アプリごとにPayPayポイント、楽天ポイントなど自社運営の共通ポイントサービスだったり、au PayはPonta、ファミペイはdポイント、楽天ポイント、Tポイントのように提携している共通ポイントサービスが組み込まれています。

そして、決済アプリが広まるにつれ共通ポイントサービスに起きた大きな変化は、もはやポイントカードは表示する必要すら無くなったという点です。

決済アプリではバーコードやQRを表示/読み込みで決済をしたら勝手にポイントが貯まるのです。ポイントを利用して支払いたければタップして「ポイント利用」をONにすれば良い。

ユーザーはポイントサービスを使っているし、貯めたりもしているけれど、表示する必要すら無くなりつつあるのです。

お店(加盟店)側としては共通ポイントサービスをどれにするか選ぶのではなく、どの決済サービスに対応するかユーザーの利便性と手数料を検討するように変化しました。

前編の記事で「Tポイントカードはお持ちですか?」と聞かれる機会が少なくなり、「dポイント/楽天カードはお持ちですか?」の方が増えたと書きました。

しかし、何も聞かれなくなるのは時間の問題でしょう。ユーザーは支払い時にスマホを出せばそれでOK。 決済アプリ ≒ ポイントアプリなので勝手に貯まるし、使いたければポイント利用をタップしておくだけ。便利です。

Tポイントはこの決済機能との紐付きという点で遅れを取ったというのも昨今のシェア低下に繋がっている要因のひとつと言えます。そして、それを補うための三井住友FグループのVポイントとの統合なわけですね。

以上が共通ポイントに起きた3つの大きな変化でした。

まとめ

前後半に渡り5,000文字近くなってしまったので、簡単にまとめておきます。

・2003年のTポイントサービス開始
・1業種1社方針で独占契約、加盟店とTポイント双方にメリット
・時代変化と共に加盟店側が独占契約に難色を示す

・競合サービスの台頭:楽天やドコモ、自社サービスと強い結びつき
・物理カードからアプリ管理:コスト低下。自社アプリや新規サービスの参入増加。さらに競争激化
・決済機能と共通ポイント:決済アプリ≒共通ポイント になってきている

このような変化があったため、高いシェアを誇っていたTポイントが徐々に地位を失い、今回のVポイント統合に繋がったと考察しました。

Tポイントはなんで最近見なくなったんだろう?といった疑問をお持ちの方が少しでもスッキリ納得して頂ける内容になっていれば幸いです。

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