[日刊]2ヶ月前のビル・グロース氏の発言からすれば米長期金利はさらに上昇の余地有
こんにちは、GOEMONです。
10月26日(木)のレポート。
このnoteでは前日の米国市場から当日の東京市場までの株式投資、経済に関するニュースや出来事をまとめたレポートを平日18時を目安に投稿しています。
自分では2~3時間かかる量のニュースをこの記事1つで済むよう、可能な限り網羅し、要点をまとめています。
さらに深掘りしたい方は「ニュースメモ」から各ニュースのリンク先を御覧ください。
■米国
▼概要
昨晩25日の米株式市場は大幅安、著名投資家2名の発言により米金利上昇が一時的に落ち着いたことを受けて前日は6営業日ぶりに反発していたが、その流れが続くことはなかった。
・S&P500 :4,186.77 (-1.43%)
・ダウ平均 :33,035.93 (-0.32%)
・NASDAQ :12,821.23 (-2.43%)
アルファベット(Google)の決算でクラウド事業の業績が市場予想に届かなかったことなどもあり、ハイテク銘柄に失望売りが出ている模様。NASDAQ総合指数の下げ幅は今年最大。
▼アックマン氏&グロース氏の発言での反発は一時的な可能性大
米経済が高金利の維持によってじわじわとダメージが蓄積がされているデータが相次ぐ中で、今週は著名投資家の2名が米国債の弱気な見方を撤回した。
詳しくは昨日の日刊記事をご覧頂きたいが、ローンやクレジットカードの延滞率がここ数十年の中で最高水準になっていることなどから、米国長期金利が5%の段階からさらにショートするのは危険な賭けだと判断したようだ。
ずるずると米長期金利が上昇し、何か材料を欲していた市場からすれば待ち望んでいた材料だったのかすぐさま米長期金利は5%から4.8%まで低下していた。
しかし喜んだのも束の間、昨晩の米市場で長期金利は4.95%まで再度上昇し、リスクオフムードから株式市場はまた下落している。
タームプレミアムはどこまで上昇するのか
上下動を繰り返しながらも大筋としては米長期金利が上昇する流れは今後も変わらないだろう。
10年債の5%という大きな壁があるが、その水準を越えて推移し始めるのが常になればその先の目安は現時点では見通せない。
あしもと2ヶ月の間に米長期金利が上昇した理由のメインは「タームプレミアム」の上昇だと言われている。パウエル議長も10月18日に講演で同じ認識を示している。
タームプレミアムは"期間の長さに伴う上乗せの利回り"のことだ。
簡単に言えば、友人に1万円貸す場合、明日返してくれるなら1万円をそのまま貸すだろうけど、1ヶ月後と言われたら1万1,000円にして返して欲しいし、半年後なら1万3,000円で返して欲しいように、返済日までの長さに応じて投資家が要求する利回りがそれだ。
米経済の先行き、インフレがどこまで続くかor高止まりするかや、米政府の増発による受給悪化、中立金利の上昇、ウクライナやイスラエルの情勢によって米国債に求められるタームプレミアムが上昇した。
1ヶ月前までは4.2%でも購入していた投資家たちは、今の債券市場では5%前後の利回りがないと米国10年債を買わないよ、と言っているわけだ。
2ヶ月前のビル・グロース氏「10年債利回りは政策金利+135bpsが妥当」
最後に、今回一時的に米長期金利を低下させた2名の著名投資家の一人である「債券王」ことビル・グロース氏が2ヶ月前にインタビューで語っていた10年債利回りの目安を紹介しておこう。
9月頭のインタビューでビル・グロース氏によると、米国10年債は過去にFRBの政策金利を135bp(1bp = 0.01%)上回る程度の水準で取引されて来たそうだ。
つまり、現在の5.25%~5.50%と照らし合わせると6.60%~6.85%の水準ということになる。
今の市況ではさすがにそこまでの上昇は無いと思われるが、来年再来年とFRBが政策金利を高水準維持している中で、タームプレミアムの上昇を含めてその他の金利上昇圧力がかかれば、今の5%を優に上回る可能性もありそうだ。
▼住宅ローン金利が8%に接近も、新築住宅販売が急増
昨晩米金利上昇したのにはもうひとつ、9月の新築住宅販売が大幅に増加したことがある。
参考:米新築住宅販売が急増、昨年2月以来の高水準-予想も大幅に上回る
新築一戸建て住宅販売は年率換算で前月比+12.3%の75.9万戸(予想 68万戸)と予想を大幅に上回った。住宅ローン金利が8%にも迫る中でも依然として消費者が住宅を購入している。
高金利下ですでにローンを組み住宅を保有している人々は家を手放そうとせず、それゆえに中古住宅の在庫が逼迫しているため新築住宅の需要が高まるのは仕方がないが、それでもこの数字の強さは市場にインフレの根強さを思い起こさせるには十分だろう。
来週のFOMC会合では政策金利据え置きが既定路線だが、12月の利上げ可能性が高まり、来年の利下げ期待が後退した。
結果、米株式には下げ材料となった。
■日本
▼概要
26日(木)の東京株式市場は米国株安を受けて大幅に反落した。
・日経平均 :30,601.78(-2.14%)
・TOPIX :2,224.25(-1.34%)
・マザーズ :632.29(-2.33%)
アルファベットやメタなどビックテックのうちAI銘柄としての期待が高まっていた所へ成長への懸念や期待外れな数字が出てくれば、瞬く間に株価は下落してしまう。
日本株は国内業績に関わらず米国株の煽りを大きく受ける形になっており、本日のマーケットも米株安に押された。
▼岸田首相は減税と給付案をしこしこと準備
来年夏ごろに向けてバラマキ政策をちらつかせて支持率を上げておこうという魂胆が見え見えな岸田首相は住民税非課税世帯に7万円の給付、その他に4万円の減税に加えて、条件に漏れが生じないよう低所得者層向けの給付上乗せを検討している模様だ。
参考:1世帯10万円の軽減に、低所得層は給付上乗せ 首相指示
給付案の良し悪しは置いておくが、インフレ疲れにより徐々に弱ってきている消費活動を下支えするだけで済むのかが心配だ。
給付タイミングまでに外部要因のインフレが落ち着いていて、国内の需要が要因のインフレが継続している場合、1世帯10万円の給付金が何百万世帯にも渡れば、そこからさらにインフレが加速しかねない。
今すぐに給付できるのであれば、円安によるインフレ対策として消費を支え、企業の賃上げに繋がるイメージが湧くかもしれないが来年の夏頃となると全く見通しが立たずリスクも高い。
▼日本国債
本日の債券市場では10年債利回りが0.88%へ到達した。
7月のYCC柔軟化後から有識者たちの間で目安とされていた0.75%の水準はどこへやら。月末の日銀会合での政策修正への警戒に加えて、米金利上昇の後押しもあり10年3ヶ月ぶりの高水準を更新している。
今週24日(火)に、なぜかよくわからないタイミングで臨時オペを入れていた日銀だが、今日は朝方から金利が上昇していたにも関わらずオペを通知しなかったため、そのままズルズルと金利が上昇した形だ。
為替市場でドル円が150円を突破しており、ここで金利を抑えつけると日米金利差がさらに拡大して155円を目指し始めてしまうため、臨時オペを入れることは出来なかったのかもしれない。
これでYCC上限の1%まであと12bps( 1bps = 0.01%)と迫っており、日銀会合までにさらなる上昇が続けば今会合の結果も事前予想とは違ってくる可能性も高まる。
■為替
▼ドル円は150円を突破、円安を止める材料は今のところなし
26日の外国為替市場は朝方に1ドル150円を突破してからは150円台で上下動を繰り返している。
一時は150.8円まで円安ドル高が加速し、為替介入の警戒が強まった。
村井官房副長官がいつもの決まり文句「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要」と市場を牽制してももはや誰も反応しない。
何度も書いてきたように、円安を止める材料は今のところ無いに等しく、為替介入への警戒のみが機能している。
米金利の低下への期待はゼロ、日本の緩和スタンスも継続、残るは今会合のYCCのさらなる柔軟化や撤廃ということになる。
結論として、少なくとも来週の日銀会合までは円安ドル高を止める材料はなく、日銀会合が無風で終われば為替市場には円安ドル高にさらなる追い風が吹くことになる。
ニュースメモ
■米国
▼株式市場/経済全般
米住宅ローン金利が8%に接近、需要をさらに圧迫-購入申請落ち込む
米国の住宅購入申請指数が1995年以来の水準に落ち込んだ。住宅ローン金利は8%に近づいた。購入能力が圧迫され、需要にブレーキがかかっていることを浮き彫りにした。
【米国市況】円が年初来安値を更新、ナスダック100は今年最大の下げ
米株式相場は反落。米国債相場のボラティリティーが高まっている中、発表が相次ぐ企業決算や地政学的状況をにらみながらの軟調な展開だった。大手ハイテク株中心のナスダック100指数は2.5%安と、今年に入って最大の下げとなった。
▼経済指標
米新築住宅販売が急増、昨年2月以来の高水準-予想も大幅に上回る
9月の米新築住宅販売件数は大幅に増加し、2022年2月以来の高水準となった。住宅ローン金利が急騰している中でも、消費者の住宅購入意欲が依然あることが示唆された。
新築一戸建て住宅販売(季節調整済み、年率換算)は前月比12.3%増の75万9000戸
ブルームバーグがまとめた市場予想の全てを上回った
予想中央値は68万戸
販売価格は41万8800ドルに下落もコロナ禍前を依然大きく上回る
▼債券市場
米国債市場が「悪循環」に陥るリスク、FRBのQT戦略に注目集まる
米長期債が過去40年余りで最悪の売りを浴びたことで、最大の買い手だった連邦準備制度理事会(FRB)の不在にスポットライトが当たっている。
NY債券、長期債反落 10年債利回りは4.95% 底堅い米経済を意識した売り
25日のニューヨーク債券市場で長期債相場は4営業日ぶりに反落した。長期金利の指標となる表面利率3.875%の10年物国債利回りは前日比0.13%高い(価格は安い)4.95%で終えた。
▼要人発言/アナリスト見通し
「リスクテークへのリターンや、リスクを取るよう誘い込むリターンが増えつつある」と述べ、「これは危険だ。なぜなら革新的な産業や企業への資本の流れを阻止することになるからだ」との考えを示した。
▼その他
米下院議長にトランプ氏寄りのジョンソン氏、共和党の右傾化鮮明
米連邦議会下院は25日、共和党のマイク・ジョンソン氏を新議長に選出した。トランプ前大統領に近いジョンソン氏の知名度は低い。議長空席を巡り3週間に及んだ泥沼は、共和党の右傾化が確実になることで決着した。
■日本
▼株式市場/経済全般
クレジットカードでの投資信託の購入上限額が上がる。現在は実質月5万円までだが10万円になる。2024年1月に始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)で投資可能額が増えるのに伴い金融庁が規制を緩和するためだ。
厚生労働省は自営業者らが加入する国民健康保険の年間保険料の上限を2万円引き上げて106万円とする。2024年度に実施する。高所得者の保険料を上げることで、保険財政の安定を狙う。
▼経済指標
人材サービス会社でつくる全国求人情報協会(全求協、東京・千代田)が25日発表した9月の求人広告件数(週平均、職種別)は、前年同月比5.1%増の131万3851件だった。29カ月連続で前年を上回った。
日銀が26日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は109.5と、前年同月比で2.1%上昇した。上昇幅は8月から横ばいで、2カ月連続で2%台となった。
▼債券市場
長期金利が10年超ぶり高水準、日銀政策修正を警戒-臨時オペ通知なし
26日の債券相場は下落し、長期金利は一時10年3カ月ぶりの高水準を更新した。日本銀行の金融政策修正観測が重しになった。金利上昇が続く中でも日銀が臨時の国債買い入れオペを通知しなかったことで午後に下げ幅を拡大した。
日銀の金融政策の不透明感が国内社債の投資や発行を阻んでいる。三たびの政策修正による金利上昇が警戒され、投資家は社債を買いたくても手を出しづらい。利率などの条件で折り合えず、社債発行を延期する企業も相次いでいる。月末の金融政策決定会合を経ても不透明感が晴れなければ、企業の資金調達への影響が長引きかねない。
債券15時 長期金利、0.880%に上昇 10年3カ月ぶり高
26日の国内債券市場で長期金利は上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.030%高い0.880%で取引されている。米連邦準備理事会(FRB)による米金融引き締めの長期化観測から、25日に上昇した米長期金利が日本時間26日の取引でも高止まりしており、国内債相場の重荷になった。
長期金利は一時0.885%と2013年7月以来10年3カ月ぶりの高水準をつけた。
▼コラム
▼その他
■中国
中国「不動産不況」が長期化するワケ、日本経済に悪影響もたらすシナリオ
習氏、中国不動産不況の「犯人捜し」を拡大
■為替
円は対ドルで年初来安値更新、米金利上昇でドル全面高-150円台半ば
26日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=150円台半ばに下落し、年初来安値を更新した。米国で長短利回りの逆転(逆イールド)が解消に向かっていることに伴い、ドルが主要通貨に対して全面高となり、日本の通貨当局による通貨安対応が警戒される中、じりじりと円安が進んだ。
村井官房副長官は「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要」との見解を示した。為替介入の可能性については「市場に不測の影響を及ぼす恐れがあることからコメントは差し控えたい」と述べるにとどめた。
FXアプリで攻める日本のミドル世代、日銀の政策変更を見逃すな
■コモディティ
中国指導部が経済への支援強化を打ち出したことを受け、アルミニウムが上昇した一方で、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を前に銅は下落した。
■その他
イスラエルが地上侵攻延期に同意、米国の防空システム配備まで-報道
イスラエルは、米国が中東に防空システムを配備できるまでパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を遅らせることに同意した。米国とイスラエルの当局者の話として、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。
カナダ中銀、政策金利を5%に据え置き-追加利上げの可能性残す
カナダ銀行(中央銀行)は25日、政策金利を2会合連続で5%に据え置いた。据え置きは予想通り。
来年のインフレ率見通しは3%、7月時点の予想2.5%から上方修正
2023年の記録破りの異常気象、気候変動の影響浮き彫りに-年次報告書
「地球上の生命は四面楚歌の状態に置かれている」-リップル教授
今年7月は10万年強で最も暑い月であった可能性高い
サポートを頂くことがありましたら、主に投資資金としてありがたく頂戴しますm(_ _)m