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香川 隆登/GOCKO
2021年5月29日 00:30
『キレイキレイしましょ』世界が浄化されている。COVID-19以前以降に限らず、世界は浄化を辿る一方である。街は浄化され人間も浄化されている。それが絶対的な"善き事"として世間では流布されている。人間も世界も、決してそんな善にだけ存在する様な都合の良い生き物ではない。第四部では悪党テナルディエの息子、ガヴローシュが大活躍する。路上で暮らし、隠語を巧みにこなす彼もまた、立派な悪党だ。だが
2021年5月23日 18:20
『雨蛙』読書感想文前回の森鴎外著『カズイスチカ』の読書会では倒錯と逸脱に惑わされる事なく本質を見ること、遠くのものに憧れるのではなく、近くのものを大切にする、ということについて考えさせられた。本書に登場する賛次郎はどうだろう。田舎者の彼は、その生活に単調さを感じ、友人からの影響でそれまで興味のなかった詩や文学に目覚める。妻が妊娠し、病の末流産しようとも、彼の文学趣味は亢ずる一方だった。そし
2021年5月15日 00:06
『父親』翁の生活に対する態度に感銘を受けた。盆栽を眺めることも、煙管を吹かすことも、茶を飲むことも、私が知っているそれとは異なる時間を翁は過ごしているようだった。彼の所作には一つ一つに丁寧さが感じられた。日常の些細な事を意識的に行う、というのはとても難しい。何しろ私にとって日常とは永遠のようなものだ。勿論それは永遠ではなく有限であり、だからこそ人間は1日1日を大切に過ごさなければならない、と、
2021年5月8日 00:07
『登場人物、全員悪人』人間は様々な集団を形成するがその中でも家族ほど結束力が強い集団はない。しかしその強い力故にその関係は時に異常なものとなる。家族問題なんていうものはグラデーションこそあれど全ての家族にある。結束力が強い故に繊細で、微妙な問題があらゆる家族関係には常に孕んでいる。この事件の発端はそもそも誰に、どこにあったのか。クズの息子か、息子を縛る父親か、泣いている母親か、無能な妹か、
2021年5月1日 00:25
『色眼鏡』私は中島敦という作家について何も知らない。氏の著作を読むのも、以前に信州読書会にて課題図書となった『名人伝』、そして今回の課題図書である『李陵』、のたった二作を読んだに過ぎない。作品を除いた、作者のパーソナリティーについて知っている事と言えば、夭逝の作家だと言う事だけだ。小説を読む際、それがどんな小説であったとしても、作者のパーソナリティーを知っているか否かは、その作品を読む上で