コロナ禍でオフィスを引っ越し、折衷案を採用したら「誰も来ないオフィス」ができた
リモートワークがメインになったことで、オフィスを縮小、もしくは固定オフィスの解約を検討した会社も多いのではないでしょうか。
私が勤めるGOB Incubation Partersでも、コロナ禍における働き方を模索し、2020年5月に方針を定めました。
これに合わせてオフィスのあり方も見直し。引っ越しをしてオフィスを縮小しました。
引っ越し担当というハズレクジ
昨年末、東京・千駄ヶ谷駅にあった90平米の一軒家のオフィスから引っ越しをすることが決まりました。
そんな中、引っ越しプロジェクトのリーダーとして白羽の矢が立ったのが私でした。
これは、最悪です。年末年始の忙しい時期。しかも私自身はリモートワーク中心だったため、ほとんどオフィスを使うことはありません。
何はともあれ、オフィス移転チームが発足し、早速議論が始まりました。
まずは当時の状況を整理します。
リモートが主流になり、オフィスを使う人が激減。1日の利用者は2〜4人ほど(それ以前は10人前後が利用)
客員起業家(EIR、Entrepreneur in Residence)(*)の独立が間近で、オフィスの利用は、今後ますます減ると予想できた
同じ部屋の中で、同時に複数のオンラインミーティングが行われることも多く、不便があった
ワークショップや起業家へのメンタリングもリモート中心になったため、今後EIRも東京に限らず、全国各地からの参加が予想された
当時の家賃は40万円
その上で、オフィスに求めたい役割は次の2点でした。
偶発的な会話、楽しいコミュニケーション
対面での会議や打ち合わせ場所の確保
みんなの意見をヒアリング、選択肢は3つ
まずは、メンバー全員へのヒアリングから始めました。今生じている問題や現状のオフィスについての不満、こういうことがしたいなど意見を集めていきます。
ヒアリング結果をまとめると、選択肢は次の3つに絞られました。
その1:固定オフィスをなくす
そもそもオフィスを都内に構える必要が特にありません。固定オフィスをなくして、対面で集まる機会は別で施策として設け、その都度、雰囲気ある古民家や、自然に囲まれたロッジなど素敵な場所を予約するのが良いのではないかという案です。
とはいえ、ヒアリングでは、オフィスを使いたいと回答する人も少なからずいました。というよりも、使いたいか使いたくないかを聞けば、大抵の人は使いたいと答えます。
そうした意味で、オフィスの廃止は、思い切った選択肢なので合意形成が難しそうでした。
その2:要件を満たす良いオフィスにする
むしろ、もっといいオフィスにすればいいじゃないかという案です。
ヒアリングでは実にさまざまな意見が出ていました。
GOBの知り合いの人が、「近くに来たからちょっと寄ったわ〜」と来れる雰囲気
積極性を引き出す、積極性が弱い人も受容できるオフィスがあってほしい
はじめましての挨拶が笑顔でできる
底面積が広い。上下より、横の広がり(かつ、closedとopenでわかれている)
開放的なハイジみたいな感じ
ブランコとかゲームとか欲しい
アトリエとか音楽室
奥さんを連れてきたいようなオフィス
ミーティングスペースがちょっと外にある(オープンテラス的な)
開放感がありつつも、オンラインミーティングをしやすい小部屋があって、みんなで集まることもできて、カフェやコワーキングスペースみたいにゆるいつながりの人もが出入りできるような広い場所——。
たしかに理想的ですが、もっとも予算と時間がかかる案なので、慎重に進めなければなりません。
その3:1と2の折衷案
3つ目が固定オフィス持ちつつ、足りない分は他の方法で補うという折衷案です。
例えば、こんな具合です。
月20〜30万円で借りられる50〜90平米の物件を契約
日経が運営する「OFFICE PASS」など、全国にあるコワーキングスペースを使えるようなサービスを契約
大人数または社外の人と対面での会議をする場合は「スペースマーケット」などで会議室を予約する
折衷案で見つかったのは、「最高」のオフィス?
そもそもオフィスの利用者は減少傾向にあり、あえてオフィスを拡大する積極的な理由はなく、かつ維持管理にもっともコストがかかる案2は速攻で選択肢から消えました。
ただし、当初オフィスに求めていた「偶発的な会話」や「楽しいコミュニケーション」といった要素は必要だと判断。結局、折衷案であるその3を選択しました。
引っ越し先に決めたのは、旧オフィスから歩いて10分ほどの場所にあるマンションの1室で、最寄りの北参道駅から徒歩1分。家賃は20万円なので、年間240万円が浮くことになります。
当時、内見に行った際のSlack、正直ゴリ押しで進めたかったこともあり、過剰にテンションを上げた文面になっている
当時の議論では、浮いたお金を「リモートワーク応援費」として給与に上乗せし、リモートワークにより負担が増えているだろう電気代やインターネット代を補填したいとの案が上がっていました。
ここまで書いていて思い出しましたが、この制度は結局やっていませんでしたね......。
折衷案は何も解決しない、かもしれない
そんなこんなで、引っ越しを検討してから約1ヶ月後の2020年12月、現在の小さなオフィスに引っ越しました。
机を並べた、メンバー作業用のメインスペース
オフィスにあった備品などは思い切って断捨離し、新しい家具なども一切買わず、とりあえず荷物を部屋に格納。荷ほどきとインターネットの開通、プリンターの設定だけを完了し、いわゆる、Viableなオフィスができあがりました(笑)。
窓際のスペース。引っ越し後カーテンがないまま5ヶ月放置していたが、見かねたメンバーが模造紙をカーテン代わりに引いてくれた。
引っ越しからはや半年弱。オフィスにいる顔ぶれは以前と変わらず、みんなが気軽にきてくれる雰囲気はあまり見られません。
その上、現在さらにこのような問題が生じています。
2部屋しかないため、オンラインミーティングのやりにくさは変わらず
スペースマーケットで会議室を借りるルールが機能しない。いかんせん人数が少ないせいか、オフィスで打ち合わせをしようとする
たまにはメンバー同士対面で会いたいという話は出るが、「オフィスには行きたいと思わない」「狭い」など不満が続出
何か、解決したんだろうか......。
思い切ってなくすか、たくさん部屋数がある素敵な物件を借りるか、どっちかに振った方が良かったのかもしれません。
折衷案は、意思決定の場では対立した両方の意見が取り入れられたように感じますが、その結果、何も解決しないオフィスができあがってしまいました。
ちなみに案1を選んでいた場合、オフィス自体がなくなるため、現在起きているオフィスにまつわる問題はそもそも消えます。スペースマーケットで会議室を借りるといったルールも、オフィスがなければ機能せざるを得ないでしょうし、オフィスがなければ、逆にみんなで集まる場所を会社の施策として設定しようという意見がより強まったかもしれません。
案2を選んだ場合も、コストはかかりますが、やはり現在起きている問題はすべて解決できます。
本来であれば、「望む結果を得るのに、このくらいコストかけてもいいよね」という話をするか、もしくは、コストをかけずにこれを達成する方法を模索しても良かったのかもしれません。
最高のオフィスを目指して——深夜に決まった「銭湯にする」
“最高のオフィス”とは——。
思い切ってオフィスをなくすか、グレードアップするか、はたまたまったく違う方法があるのか、その形はまだ見えませんが、今のオフィスをそのままにしておくわけにもいきません。
私たちにとっての最高を見つけるために、今のオフィスを使って実験することにしました。
先日、社長の山口さんから社内のSlackに1本のメッセージがありました。
呼びかけに集まった数人のメンバーが深夜にアイデアを出し合い、現在のオフィスを「銭湯にする」ということになりました。
何を言ってるかよくわからないと思いますが、文章のままです。