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大事なことは「耳でなく目で」チーフコンサルタントの説明術【小笠原剛:第4回】

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所の但田(たじた)です。チーフコンサルタント小笠原へのインタビューということで、第1回ではどんな仕事をしているか、第2回・第3回では過去にさかのぼって、小笠原ができるまでを探ってきました。ここからは、今の「小笠原らしさ」について話を聞いて行きます。

これまでの連載は、以下の小笠原マガジンからまとめてご覧いただけます。

いつもカバンにスケッチブック、文字より伝わる図解を多用

但田:さて、小笠原さんと言えば図解です。私は入社してすぐの頃、小笠原さんが「〇〇駅に集合」という説明をする時でさえ、左手でマーカーを持って、駅の改札と登場人物を図解していたのが衝撃でした。図解を重視するようになったきっかけや考えを聞かせてください。

小笠原:図解、多いですね。自分自身は文章を読んで理解するのが好きなんですが、人に伝えるためには、文字だけよりも図解の方がうまくいくと思っています。若手の頃からホワイトボードの前に立つ仕事でイニシアチブを取ってきたので、その延長です。コンサルタントになる前からそうやっていましたし、今の仕事では、いつもスケッチブックを持ち歩いています。お客様の相談を聞いたらパパッと紙に図解を書いて、渡してあげるとすぐですから、伝わるのが早いです。

但田:たまに読めない、判読できないこともあります。時々社内で小笠原文字と揶揄されてますね(笑)。

小笠原:これ汚いですけれども(※試しに1枚図解を示す)。

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但田:とはいえ、図解でイメージするのって難しいですよね。私はなかなか上手にできないです…。

小笠原:難しい時もありますが、相手に伝わりやすい方が良いであろうと思っています。言葉で伝達したとしても、どっちみちイメージを付ける作業が必要になります。言葉だと「分からないけれども分かったような感じ」がしてしまうしね。

例えば、売上が年々落ちていますよねという言葉を使うんだったら、折線グラフで下がっているのを表現したくなります。「落ちてますね」だけではどれくらい落ちたかわからないけれど、折れ線で示せば伝わりやすいから。理解してもらって、次の深いところに入っていく時にも便利だったりします。

小笠原のトリセツ:比喩表現には「その心は?」と聞いてください

但田:図解とあわせて、小笠原さんのアナロジー(比喩)の独特さも特徴的だなと思います。比喩表現が無尽蔵に出てきて、言い得て妙な独特な表現も多いですよね。そのアナロジー力はどこから出てきたんですか?

小笠原:常に物事の特徴、構造を気にしています。以前、MBTIという、ユングのタイプ論を基にした性格検査を会社のみんなで受けましたが、私は物事の構造を見抜くのが得意な型ではあるようです。

但田:あんまり誉めたくないですけど、本当に構造を見抜くのが上手だなと感心します。私にとっては点と点なんだけど、小笠原さんの中では面的に描けていて、後で解説してもらって納得することも多いです。

小笠原:たとえば、ひとつのモノでも、紙コップ、円柱、容器を切ったもの…。どの話でも割と行き来できるように、自分でもすぐ面白がる傾向があるのでしょうね。とはいえ「その例えは全然分からない」と言われることもありますよ。

但田:正直なところ、私も入社当初はわからないことが多かったです…。ただ、途中から「追加解説を頼むとすごくわかりやすい」ってことに気付いて、しばらく小笠原さんの比喩表現が面白すぎてマイブームになってました(笑)。

たとえば「今は子供のサッカーだから」って言われて「その心は?」って聞いたら、「みんな目の前のボールに飛びつくでしょ」って。そこまで聞くと、なるほど!と腹落ちして、私も小笠原さんの比喩がいつのまにか伝染していたりします。解説を聞いて理解できると深イイんですよね。

小笠原:深イイでしょ(笑)。小笠原のトリセツとして、比喩がわからないときは「その心は?」まで聞いてくださいっていうのが必要かもしれませんね(笑)。

「違うこと」よりも「同じこと」に着目して記憶を結び付ける

但田:図解、アナロジーに加えて、もうひとつ小笠原さんに特徴的なのが、知識の豊富さだと思います。製造業の研修の時など、畳みかけるように事例を重ねて行くスタイルが印象的です。しかも、概括的な話だけではなくて、具体的で生々しい説明が多いです。その製造業の知見の深さは、どうやって身に着けたんですか?

小笠原:この仕事をしていると「具体的に」と「要するに」を行き来する必要があると思っていて、そういう説明ができるように気をつけています。特に、シズル感というか、具体的なイメージが浮かぶ方が良い。事例を出すときに、本来は、どういうモノを作っているかまで説明しなくても良いはずなんだけど、敢えて説明するようにしています。その事例企業で作っているのは、大きいものなのか小さいものなのか、液体なのか固体なのか…そういう情報があった方が、聞いている人も追体験しやすいはずだと思うので。

自分のタイプとして、たくさんの事物がある中で、違うことよりも同じことを見つけることに意識がいく方だと自覚しています。「AとBは違う文字」というよりも、AもBも同じアルファベットだよね…こういう方にセンサーが強めに利く感じだなと思っています。そういうのが見つかると面白く感じる。例えば、ITにSIerという職種があります。また、ワンオフ(特注品)の機械を作っている会社があり、銀座山形屋がありますと。この3つは、自分には仕事がほとんど一緒に見えるんです。どれも、お客様の受託で何を作ったらよいのかを定めて作るから。業務フロー化しても同じようになりますし、設計図書、作るアウトプット、書類などもほとんど同じになる。

但田:作っているモノは違うけど構造が似ているんですね。

小笠原:ええ。一方で、「ワンオフの機械」と「量産品の機械」となると、違うことの方が多いと感じています。そうすると、ワンオフの機械を作っているところに、仕立てのスーツ屋でやっているような工夫を持ってくるのも面白いのではないかと。そういう発想の仕方をすることが多いです。

但田:なるほど…。

小笠原この仕事をやっていると、違いが分かってもあまり意味がない。違うことから何を発案したらよいのかがあまりよく分からないから。コンサルティングは、過去の知見と合わせてリアクティブな取り組みであるはず…自分の過去の経験と知見をあさってきて「これは未知の出来事に使える」と考える仕事なので。そのためには属性情報のようなものを持っておいて、同じものを引っ掛けられた方が良いかなという感じがします。

但田:コンサル先で、小笠原さんがお客様にエピソードを話しているときに、「そのエピソードの現場に私もいたのに…そんな風に理解できてなかったな」と、内心思うことがあります。私も小笠原さんも同じことを見ていたのに、私はぼーっと忘れて、一方小笠原さんは、それを整理して次のネタ帳にストックして、すかさず出すというようなことをされているんだなと思います。ああやってエピソードを取り出せるのも、今おっしゃっていたような共通点などで整理して、頭の中にストックしているからですか?

小笠原:多分そうだと思います。それから、良かったな、残念だな、皮肉だったというような形容詞とセットにして覚えていることが多いです。「こういうことがあった」とかではなく。私は「面白かったね」とよく言う方ですが、失敗エピソードも結構持っています。そうやって結びつけてインプットしているはずです。

但田:そうか、インプットの量だけではなくてそれを自分の中でどうやって肥やしにして再利用できるかが関わっているのかもしれませんね。

小笠原:あとは、聞かれたから「何か言わなきゃいけない」っていう経験の量が思い切り関係あると思います。一方で、自分のストックが増えるにつれて、コンサルタントって「私の経験からすると」みたいな話が増えていきそうなので、鬱陶しくならないようには気を付けています。相手が知るべきことを伝えるのが理想ですよね。自分もつい楽しくなっちゃって喋っちゃうから、ほんと気を付けないとね(笑)。

ご覧いただきありがとうございました!今回は、小笠原と一緒に働いていて常々気になっていた「図解・比喩表現・製造業知識」について聞いて行きました。「コンサルの横顔」は一人3回ぐらいかなと思って連載を始めたのですが、小笠原に話を聞いたらつい楽しくなってあれこれ聞きすぎてしまいました!次回はいよいよ最終回なので、もう一回お付き合いください。小笠原が人と接する時の特徴や、コンサルタントとして目指していることを聞いて行きます。お楽しみに!

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