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こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。2021年7月より私たちの会社にジョインする、渡辺薫さんの連載第7回です。毎週火曜日に更新します。

これまでの連載は、以下のマガジンからご覧いただけます。

私たちは、TOCは知識体系(Body of Knowledge)である、という認識を共有していると思います。
しかしながら、TOCの「知識体系」とうまく付き合えていない、「知識体系」として上手に使いこなせていない人も少なくない、と感じています。

私たちが良く知っている知識体系としてはPMBOK(Project Management Body of Knowledge)や、BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)があります。これらは知識体系として以下のような性格を有しています。(と、私は考えています)

✔ 成功のための方法や進め方のマニュアル化・手続き化が困難である業務に対して、成功のために必要なタスクと関連する知識を包括的に集積し、体系化したものである。
✔ タスクを実行する際にどんな知識を使うかが体系的に整理されている。
✔ タスクの構造は体系的に整理されているが、この通りに実行すべきというプロセスやマニュアルではない。
✔ 知識体系を学んだだけで、もしくは知識体系を使うだけで成功する、というものではない。
✔ 知識体系を現実のプロジェクトで適用するための知識・ノウハウ(メタ知識)が必要である。
✔ タスクを実行するためのテクニックやツールに関しては、知識体系に含まれていないものも含め、実践者が自分の意思で選定し、活用する。

PMBOKを使う人々の多くは、明示的にではないにせよ、こういう認識を共有していると思います。だからこそ、PMBOKを使ってプロジェクトに失敗したとしても、PMBOKのせいにする人は、ほとんどいないのだと思います。

仮に誰かが「俺はPMBOKを使って、しっかりとプロジェクトマネジメントをしたのに失敗した。やっぱりPMBOKは使えない」と発言したとしたら、周囲の人から「PMBOKが悪いのではなく、おまえの使い方が悪いのだ」と、叱られると思います。

一方、「TOCは知識体系」であると言いながら、TOCと以下のような付き合い方、使い方をしてしまっている人も見受けられます。

✔ TOCを「この通りに実行すれば成功する」必勝プロセスのように扱ってしまう。
✔ 知識体系を現実のプロジェクトに適用するための知識・ノウハウ(メタ知識)を重視していない。
✔ タスクを実行するためのテクニックやツールの必要性を重視していない。

これは、ダイエット方法などで良く見られる「〇〇すれば△△できる」という表現に似ています。シンプルで分かりやすく、人を引き付けるメッセージです。「そんなに簡単なはずはないだろう」と思いながらも、シンプルで分かりやすいメッセージと劇的な成功例を見せられると、「そうかな」と思ってしまいそうになります。スマホの画面は痩身や美肌だけではなくDX(デジタルトランスフォーメーション)なんかでも、こうしたシンプルで強力なメッセージを伝える広告(とかセミナーの告知)であふれています。

こうした広告に乗せられて「やってみたけど、失敗した」人は、「やっぱりこの手法はダメだ、使えない」と思うに違いありません。手法の問題ではなく自分の使い方、実践手法に問題があると反省する人は、ほとんどいないと思います。

TOCでも同じだと思います。TOCが「この通りに実行すれば成功する必勝プロセス」である、という認識・理解をした人が「TOCを使ったのに失敗した」場合、その人が「やっぱりTOCはだめだ、使えない」と考えてしまうのは、ある意味、当然ではないかと思います。

私の周囲にはTOCと、(PMBOKやBABOKと同じような)「役に立つ実践的な知識体系」として向き合い、上手に使いこなし、継続的に成果を上げ続けている人が大勢います。単なる私の印象ですが、そうした人は、あまり失敗しない(少なくとも大失敗はしない)ように見えます。また熱狂的ではないにせよ、着実にTOCのファンを増やし続けています。

TOCを活用して成果を上げる、TOCをもっともっと広げる、そのためには「TOCの素晴らしさ」を伝えるだけではなく「TOCの知識体系としての使い方や注意点」を同時に伝えることが重要である、私はそう信じています。

渡辺 薫 (わたなべ かおる)
ゴール・システム・コンサルティング株式会社 
チーフ・カスタマーサクセス・オフィサー(CCSO)※2021年7月より就任予定

プロフィール
ハイテク企業でR&D、経営企画、マーケティング等を経験したのち、90年代のデジタルマーケティングの黎明期にはエバンジェリスト&コンサルタントとして活動。その後、外資系ITサービス企業等でITサービスのマーケティング、コンサルティング等に従事し、2010年日立製作所に入社。超上流工程のコンサルティング手法の開発と指導にあたるとともに、日立グループ内でのTOC活用に尽力。2018年からは日立製作所社会イノベーション事業推進本部エグゼクティブSIBストラテジストとして、日立グループのデジタルトランスフォーメーションの戦略策定・実行のサポートと人財育成に注力し2021年3月に退任。
TOCICO認定Jonah(思考プロセス)
TOCICIOからThe TOC Company of the Year を受賞(2018年)
TOCICO理事(2018年~)
日本TOC推進協議会顧問(2018年から2021まで理事長を務める)
(TOCICO=Theory of Constraints International Certificate Organization)

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