見出し画像

Affirm: The Morality of Money

今回はThe GeneralistのAffirmの分析記事の翻訳をお届けします。元記事はこちらです。

今回の著者もマリオ・ガブリエレさんです。本当にいい記事をいつもありがとうございます。

マリオ・ガブリエレさんのTwitterアカウント ↓

今回の記事は、主にAffirmのS-1資料から、ビジネスモデル、市場環境、コロナの影響などを深く読み取っています。日本語の記事でここまでの分析がなされているものはあまりないかもしれません。

また、前回のStripeの記事が比較的ドラマチックに書かれたのに対し、今回の記事では非常にロジカルに企業分析がされており、Affirmのことを後払い企業だとしか知らない方にとっては非常に面白い内容となっています。

今回も2万字を超えるボリュームとなっていますが、ぜひ最後までご覧ください!

僕のnote、Twitterではスタートアップ情報や海外の翻訳記事を中心に発信しています。ぜひフォローお願い致します。

それでは以下、本編です!

ーーーーー

1分で分かるAffirm

PayPalの共同創業者であるマックス・レヴチンが戻ってきました。Affirmは、レヴチンが率いる「Buy Now, Pay Later(BNPL)」サービスで、年内にナスダックに上場する予定(実際に2021年1月13日に上場)です。

100億ドルとも言われる同社の評価額は妥当なのでしょうか。Affirmは、コモディティ化した商品を販売する金融業者なのでしょうか?それとも、消費者の嗜好の変化を利用して、大手銀行からシェアを奪うペイメントネットワークなのでしょうか?レヴチンは、Affirmが伝統的な金融を破壊することは、ビジネスチャンスであるだけでなく、道徳的にも重要であるとしています。

Affirmの2020年6月期決算の売上高は5億950万ドルで、前年比93%増となりました。この売上高のうち28%はPelotonという顧客からのものです。
また、今年公開された他の多くの企業と同様に、Affirmはまだ利益を計上しておらず、2019年には1億2,050万ドル、2020年には1億1,260万ドルの純損失を計上しています。

Affirmに投資しているVCは、Founders Fund、Khosla Ventures、Lightspeed Venture Partners、Jasmine Venturesなどで、総額15億ドルとなります。これらのVCはAffirmの上場で大きな利益を得ることになるでしょう。

アナリスト

Julie VerHage
Marc Rubinstein
Nic Dardenne
Yoni Rechtman
Chauncey Kerr Hamilton
Annika Lewis
David Wei
Jake Singer
Sayshu Medicherla
Mario Gabriele

Introduction

男がガイガーカウンター(放射線測定器)を少年の足に振り下ろすと、再び不吉なほど大きなビープ音が鳴る…。彼は杖を手に持ち、目の前の細い人物を見て、少年の母親に向かって言いました。

「足に刺さっています...切らないといけないかもしれません」

その48時間前、キエフから北に90マイル離れた発電所で火事か爆発が起こっていました。何が起こったのか誰も正確には分かりませんでしたが、エルビーナ・ゼルツマンにはある考えがありました。

物理学者であるエルビーナは、食品科学研究所の放射線検査室で毎日を過ごし、毎朝、鉛の入った容器に農産物や食品を入れて、その測定値を観察していました。

卵はどのくらい汚染されているのか?何が卵を汚染したのか?

エルビーナは、その結果をキャビネットのような重厚なコンピューターに打ち込みます。時々、息子が手伝ってくれました。マクシミリアンです。彼は頭が良く、家に帰っても一心不乱にコンピュータにかじりつきました。コンピューターがないときは紙に「プログラム」を書くほどでした。

The Generalistに登録 (無料)↓

チェルノブイリ原子力発電所の事故から間もない4月下旬の朝、エルビーナは光っているパンを見ました。それは発電所から遠くない北側から届いたものでした。

エルビーナは何が起こったのかを一瞬で理解しました。彼女はすぐに動き出し、数時間後、彼女は子供たちを連れて列車に飛び乗り、1,000マイル離れたクリミアに向かいました。黒海近くで降り、そこではガイガーカウンターを持った警察官が出迎えます。

制服を着た男は、エルビーナをスキャンし、次にまだ幼児だったセルゲイをスキャンしました。そして、最後にマクシミリアンに向かいました。マックスに。どんなに解像度を上げてもガイガーは鳴り続けます。足を切断する以外の解決策はありませんでした。

しかし、その男がマックスを病院に連れて行き、処置をしてもらう前に、エルビーナは思いつきました。

「靴を脱いだ状態でもう一度試してみよう」

ガイガーカウンターは、靴下を履いて足を失いかけているマックス・レヴチンの上を通り過ぎましたが、ビープ音は鳴りませんでした。ビープ音の原因は酸性雨に濡れたバラの棘が靴底に刺さり、数値が高くなっていたのでした。

レヴチンは、この時のことを「異常に明るい瞬間だった」と振り返っています。

レヴチン
その靴はそれ以来見ていません。その時の記憶がフラッシュバックするのです。40歳を過ぎると、あの時の記憶は薄れ、事実ではないような気がしますが、当時の記憶は何か光っていたように感じます。

このチェルノブイリの事故は、ある意味でコンピュータに夢中になっていた少年の人生の分岐点にもなりました。その直後、レヴチンは家族とともにボロボロのソ連から移住し、733ドルの資金でアメリカに到着しました。帰りの飛行機の中で、レヴチンは母親に650ドルをコンピューターに使ってもいいかと尋ねたところ、母親は「あなたは完全に狂っているわね」と答えたことを思い出しました。

AffirmのS-1は、レヴチンがやってきたアメリカの時代を彷彿とさせます。もちろん、明確に言及されているわけではないですが、目論見書にはそれを彷彿とさせる要素がたくさんあります。1980年代は、少なくともある界隈では、嬉々として肉食系のマントラが喧伝されるような時代です。

「欲張ることは良いことだ。」

それとは違いますが、Affirmは似たようなことを言っています。「欲しがっていいんだ」「買うのはいいことだ」「正しい方法と間違った方法があるんだ」と。

レヴチンは、オープニングレターの中で、Affirmが従来の銀行に比べて「道徳的」に優れていることを3回にわたって強調しています。

カードは進化し、改善されたとさえ言えるかもしれません。しかし、このようなほとんど読めないような細かい字で書かれたカードでは、消費者は購入した商品が実際にいくらかかるのかを正確に知ることができません...
私たちは、消費者に提供されるそれぞれの金融商品の道徳性が重要であり、Affirmブランドに不可欠な要素であると考えています。

その後、彼はこう付け加えます。

私たちの強みと競争力は、2つの基本的な分野にあります。それは、私たちがテクノロジーに非常に長けていることと、優れていることを約束することです。

決済サービスを提供する企業が消費者主義(大量の財・サービスの購入を奨励するような主義・主張)を非難するのは無理があるように、Affirmが消費者主義を善と悪の戦い、つまり主義主張の問題として捉えているのは驚くべきことです。

問題は、私たちの購買意欲ではなく、与えられたツールにあるのです。

AffirmのS-1は、消費者を受け入れ、「消費者の長期的な繁栄」を実現することをミッションとしている点で、アメリカ的なものを感じさせます。今日の混沌としたアメリカではなく、1980年代の財政的に余裕のあるアメリカ、つまり若き日のレヴチンを迎えたアメリカです。

こんなハリウッドのフレーズにきれいに収まるような時代は実際には存在しなかったかもしれません。しかし、Affirmが長期的に成功するためには、ビジネスの基本を超えて、このエートスをさらに強固なものにし、私たちの欲望を刺激し、衝動と購入の間の距離を縮めることができるかどうかにかかっています。

身の丈を超えた買い物をしたり、買えないコンピュータを手に入れたりするのはいいことだ。そうすることで、顔の見えない銀行や略奪的な貸し手を鼻であしらうことができ、何らかの反抗をしたことになる!

Affirmとレヴチンは、お金にユニークなモラルを持っているのです。

Affirm S-1での言及回数

Max Levchin: 131
Cross River Bank: 77
Shopify: 44
Lending: 39
E-commerce: 35
Transparent or transparency: 33
Keith Rabois: 22
Peloton: 20
Credit card: 15
Buy now pay later: 10

Affirmの歴史

 Affirmの歴史を語るには、レブチンに焦点を当てなければなりませんが、レヴチンについてはもっと深掘らなくてはいけません。

電子決済の黎明期にPayPalの共同設立者兼CTOとして活躍したレヴチンは、詐欺、アンダーライティング、オンラインでの消費者行動といった分野でキャリアを築きました。この世界にどっぷりと浸かっていた彼は、オフィスに寝袋を置き、会社のプロダクトを開発していました。

その後、彼はPayPalを離れ、Slideを設立してソーシャルメディアの世界に身を投じましたが、すぐに決済の原点に戻りました。レヴチンは、2012年にスタートアップスタジオ「HVF(Hard Valuable Fun)」からのスピンアウトとして、ネイサン・ゲティングス、ジェフリー・カディッツ、アレックス・ランペルとともに、Affirmを設立しました。

The Generalistに登録 (無料)↓

翌年には、1-800-Flowersとの提携により、Affirmがスタートしました。Affirmは、クレジットカードの代わりに、消費者が予定以上の借金をすることなく、購買力を拡大することを目的としています。特に、Affirmは、電子決済の際に、消費者が最終的にいくら支払うのか、いつ支払うのかを前もって説明し、明確にすることを目指した。その点では、細かい文字を理解しなければならないクレジットカードや、バンドルされた手数料を解析しなければならないクレジットカードよりもシンプルです。

また、他の融資商品とは異なり、支払いが滞ってもレヴチンがPelotonのエアロバイクを差し押さえに来ることはありません(ただし、信用情報機関に報告することはできますが)。

消費者(特に若い世代)は、透明性を求めているため、クレジットカードを恐れ、多額の借金をしたくないと考えています。このような消費者にとっては、1,000ドルのマットレスをクレジットカードで購入し、利息(そしてその利息を頭の中で計算すること)や遅延損害金を支払う前に完済しようとすることはかなり酷です。

Affirmのモデルが比較的シンプルであることに加えて、若年層の顧客は、Affirmのプラットフォームの持つ即効性を評価しました。このモデルでは、借金を返済してから商品を受け取るのではなく、商品を受け取ってから支払いをしてもらうという風に順序が逆になっています。

米国では当初、BNPLの普及が遅れていましたが、近年、BNPL、特にAffirmは、Peloton、Casper、Expedia、Shopifyなどのパートナーを得て、その勢いを増しています。このAffirmの成功により、Square、JPモルガン・チェース、Klarna、AfterPay、そしてLevchin氏の母校であるPayPalが現在、BNPLサービスを提供しており、競合となりました。しかし、Affirmは、複数の勝者が生まれる余地のあるこの市場の規模の大きさと新しいプロダクトのの可能性を指摘します。

レヴチンは、2015年の時点で大きな夢を抱いていました。

レヴチン
私たちは、テクノロジーを駆使して、新しい銀行、願わくば世界最大の銀行を一から作り上げたいと思っています。今日はマットレスや食器セットの購入をサポートし、明日は中古車、もしかしたら新車、そして家を買うかもしれません。

このことから、今回のIPOは、花を買うための手段としてスタートした会社が、新しい家を買うための手助けをしたり、貯蓄口座を開くための手助けをしたりするための、次のステップとしてのものだと言われています。

マーケット

現在BNPLの市場は、全小売支出のごく一部で、特定のカテゴリーに集中しており、ほとんどがオンラインで利用されています。そのため、まだまだ成長の余地があると考えられています。

Affirmの市場の中心である米国では、2019年の小売全体の売上高が6.2兆ドルに達しました。この数字は、自動車やガスの販売を除くと45億ドルにまで下がり、2018年比で+4%の成長となりました。

また、BNPLは、小売売上高の5,000億ドル以上を占めるアパレル、美容、家具、電子機器などのカテゴリーで強い導入効果を発揮しています。20年第3四半期の時点で、Eコマースが小売全体の売上高に占める割合はわずか14.3%であり、米国の小売売上高の85%以上がオフラインのままであることを示唆しています。

画像1

現状では、BNPLプロバイダーは数百億円規模の売上しか処理できていません。そのため、BNPL事業者は、食品、自動車部品、ホームセンターなど、新たな業種に参入することで成長できると考えています。さらに、電子商取引でのシェアを拡大し、オフラインの小売業にも進出したいと考えているでしょう。すでにBNPLのプレイヤーは、このような行動を促進するためのカードの提供を開始しています。地域的には、特に北米での力強い成長が期待されています。

画像2

Cardifyの調査によってBNPL の典型的な顧客像が明らかになりました。BNPLの利用者の70%は女性で、80%が19~34歳、60~65%が年収5万ドル以下です。つまり、BNPLの顧客層は主に若年層、女性、そして比較的低所得者となっています。

ただ、この調査で注目すべきは、Affirmが分析対象から外れていることです。おそらく、Affirmが高額商品に焦点を当てていることと、消費者に利息を課すことを決定したためでしょう。

画像3

さらに、データによると、多くの消費者は、クレジットカードの限度額のかなりの部分を使った後にBNPLを試しているようです。これは、BNPLの消費者がクレジットを使いすぎているという業界の懸念を裏付けるように見えるかもしれませんが、この調査では、ほとんどのお客様がその気になれば購入費用を前払いすることができるほどの資金を持っていることも証明されています。

画像4

画像5

繰り返しになりますが、この層を見てBNPLの限界を指摘する人がいる一方で、チャンスだと考える人もいます。現状の顧客は、商品を買う余裕があるときもBNPLを利用しています。このことから他の顧客も同じように利用すると言えるのではないでしょうか?また、Affirmやその競合他社のように、支払いを先延ばしにする富裕層が増えてくるのではないでしょうか。

BNPLはまだ始まったばかりです。Affirmとその競合企業は、カテゴリー、地域、人口構成を問わず普及率を高め、世界の25兆ドルの小売支出のうち、ますます大きな割合を占めることになるでしょう。Visa、Mastercard、PayPal、Squareのような決済分野の勝者は、長期的に1,000億ドル以上の時価総額となることが多いため、BNPL領域でもこれが起こる可能性があります。

The Generalistに登録 (無料)↓

プロダクト

 Affirmは、S-1の中で3つのプロダクトについて言及しています。

サードパーティ経由の融資
マーチャント向けのツールとアナリティクス
Affirmのウェブサイトとモバイルアプリ

サードパーティ経由の融資

Affirmの主力製品は、加盟店のチェックアウト時に顧客に提示される融資オファーです。これには、Shopifyとの提携も含まれます。

具体的には、Pelotonの自転車を購入しようとしている顧客に、他の支払い方法と合わせて最小でAPR(年換算金利) 0%の融資オプションが提供する、というものです。

Affirmは、融資の適格性と関連する金利を取引ごとに評価し、加盟店の交渉に基づいて決定します。Affirmのヘルプページによると、

現在の経済状況、クレジットスコア、Affirmでの支払い履歴、Affirmのアカウントを持っている期間などの融資資格基準、融資を申し込む加盟店が提示する金利など、さまざまな要因が考慮されます。
これらの融資資格基準や金利は、Affirmが各加盟店と個別に交渉します。そのため、ある加盟店ではAPRが0%で返済期間が6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月となっていますが、他の加盟店ではAPRは特になく、返済期間が3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月となっている場合があります。

Affirm社のチェックアウト・クレジットは、特にAPR0%で商品を先行して購入できる余裕のあるユーザーにもアピールできるかもしれません。このようなユーザーは、Affirmを利用することでクレジットカードのポイントを獲得できないものの、購入時のトータルコストをスムーズにすることができます。

また、商品を購入することができない人は、Affirmを利用することで、目的の商品を購入し、支払いを先延ばしにすることができます。従来のクレジットカードと比較して、Affirmの「間違いのないファイナンス」は、遅延損害金ゼロ、有利な金利、透明性のある支払いスケジュールを約束します。

加盟店向けツール

S-1では、Affirmは8つの加盟店向け機能を紹介しているが、そのうちの6つは他の製品分野からのリパッケージです。例えば、Affirmは「加盟店向け機能」のセクションで、消費者に0%または有利子のローンを提供する機能を「柔軟なマーケティング機能」と呼んでいます。そのため、実際のマーチャント向けの機能としては、ダッシュボードとアナリティクスの2つだけともいえます。

この機能の少なさは、加盟店がAffirmを採用する理由が、その充実した製品群ではなく、Affirmによってビジネスが活性化されることにあることを示しています。

画像6

Affirmのフリクションフリーな借り入れと借り手に優しい条件は、高額商品の購入に対する障壁を減らし、AOV(平均購入金額)やリピート購入率を向上させます。

マーチャントは、Affirmとの交渉次第で、スライド制で支払いを行います。最終的には以下の2つのいずれかになります。

・0% APR merchant
Affirmに比較的大きな金額(3〜5%)を支払う。
・> 0% APR merchant
加盟店がAffirmに支払う金額は、0%に近い少額。Affirmは、0に近い融資率を提供することで収益を得る。

Affirmを経由することで、マーチャントはStripeなどの通常の決済処理業者への支払いを回避できるため、これは魅力的なサービスとなります。当然のことながら、Affirm はドルベースで 100% 以上のマーチャント維持率を誇っています。

画像7

ウェブサイトとモバイルアプリ

Affirmのウェブサイトとモバイルアプリは、消費者の旅の始まりを捉え、ローンを返済するための簡単な方法を提供し、将来の支出を制限するように設計されています。主な機能は以下の通りです。

ショッピング
ユーザーは、加盟店や非加盟店の商品を購入することができます。

支払い
ユーザーは、進行中のローンや過去のローンを管理することができます。これには、次回の支払いの確認、未払い残高の返済、返品の報告などが含まれます。画面の例を以下に示します。

貯蓄
貯金箱にお金を入れておくことができます。Affirmはこの商品を2020年に、2020年11月時点で1.00%のAPY(年利)を提供しています。

画像8

Affirmのサイトやアプリがなぜ必要なのかを理解するために、Affirmがどのように顧客を獲得しているかを考えてみましょう。

これまでAffirmは売上のわずか4%しかセールス&マーケティングに費やしていません。
これは、Affirmがショッピングファネルの中でどのような役割を果たしているかを反映しています。つまり、顧客は検索エンジンやマーチャントサイトで買い物を始め、決済画面まで移動した後にAffirmに出会います。従来、Affirmはクレジットカードのように購入意図を把握するものではなかったのです。

このような背景から、Affirmはファネルの上位にいる顧客を獲得することがわかるでしょう。そうすることで、Affirmは競合他社よりも優位に立ち、サードパーティマーチャントにとっての価値を高め、より高いテイクレートを得ることができ、また、既存の顧客にパーソナライズされたオファーを提供することでリピート購入を促進することができるのです。

顧客がAffirmを通じて何かを購入した場合、その取引を管理する場所はAffirmのサイトやアプリだけです。そのためAffirmは、顧客がサイトやアプリ上でオファーを見て購入してくれることを期待しています。同社の貯蓄口座のような商品は、収益に貢献するかもしれませんが、それが本当の目的ではありません。顧客がAffirmにアクセスする理由を増やし、購買意欲を高めることが真の目的なのです。

The Generalistに登録 (無料)↓

Flywheels

AffirmがS-1に記載しているFlywheelsは、消費者と加盟店のFlywheelsと、クレジットモデリングのFlywheelsの2つである。

消費者 - 加盟店

Affirmは、加盟店と消費者のために次のようなFlywheelsを作っていると思わせわせています。

1. 消費者は、Affirmを提供している加盟店をより多く目にすることで、より多くの購入資金を調達することができる。

2. 消費者は、Affirmを提供する加盟店が増えれば増えるほど、Affirmアプリをダウンロードしたり、Affirm.comにアクセスしてローンを管理したりする可能性が高くなる。

3. より多くの消費者がAffirmのサイトにアクセスすればするほど、Affirmはより多くの加盟店からの購入を促すことができる。また、Affirmは、貯蓄口座のような他のサービスをアップセルすることもできる。

4. サードパーティによる導入を促進することで、Affirmの魅力が増し、加盟店への導入が促進される。

画像9

このFlywheelsが成功するかどうかは、Affirmが自社のプロパティから購買行動を促すことができるかどうかで決まります。これはかなり難しいことでしょう。結局のところ、あなたが最後にChaseのウェブサイトで購買行動を開始したのはいつでしょうか?バンク・オブ・アメリカのサイトで購買行動を開始したのはいつでしょうか?Affirmは、他の決済ビジネスが失敗したところを成功させることに賭けているのです。

信用モデルリング

S-1の中でAffirmはこう書いています。

私たちは、消費者に力を与え、加盟店と資金調達者に価値をもたらす方法で、リスク評価を含む分析と意思決定にデータを利用しています。モデルの学習には、750万件以上のローンと6年間の返済データを含む、申込データと取引データを使用しています。

これは、Affirmがより多くの取引に融資することで、そのリスク評価が向上するというものです。表面的にはうまくいっているように見えます。

画像10

このグラフは、Affirmのチャージオフレート(回収不能と判断された取引の割合)が、新しい顧客コホートで減少していることを示しています。これは、必ずしもAffirmのローンアルゴリズムが賢くなっていることを意味するものではなく、例えばPelotonとの提携のように、Affirmがますます豊かな顧客を獲得していることを意味しているのかもしれません

この話題で、Affirmが挙げているもう1つのデータは、延滞率です。S-1によると、Affirmの36カ月後の延滞率は1.1%。この数字は、改善しているのか、減少しているのかという文脈がなければ解析することは困難です。St.Louis Fedによると、過去5年間のクレジットカード全体の延滞率は2.0%から2.7%の間で推移しています。その点では、Affirmが有利と言えるでしょう。とはいえ、ポジティブな選択バイアスがかかっている可能性もあります。Affirmを利用している加盟店から購入する顧客は、クレジットカードの支払いを延滞する可能性が低いのかもしれません。

結局のところ、この「Flywheels」は、答えよりも疑問を投げかけているのかもしれません。AffirmがBNPL市場でどのような独自の強みを持っているのかは不明なのです。同社は、クレジットカード会社や競合他社よりも多くのデータを収集しているわけではないでしょうから。

The Generalistに登録 (無料)↓

ビジネスモデル

前述のとおり、Affirmのビジネスモデルは、顧客と加盟店間のオンライン取引を促進する製品の開発を中心とし、消費者がオンラインで大規模な買い物をした際に、3カ月、6カ月、9カ月の期間で融資を受けることができるクレジット商品でよく知られています。

Affirmはすぐに事業を拡大し、Split PayやShopify社との提携によるShop Payなど、2〜3カ月後に返済される少額のオンライン購入に対する融資商品を提供しています。また、Affirmは、パンデミックの際に購入したPelotonだけでなく、あらゆるオンライン消費者の購入時のトランザクションレイヤーになりたいと考えていることが最近の製品リリースから伺えます。Affirmは、バーチャルカードのインターチェンジフィー、消費者の購入時の金利、購入時の加盟店手数料、ローンポートフォリオのサービシングと販売による手数料という4つの収入源で収益を上げているのです。

では、このビジネスはどのように成り立っているのでしょうか?
この複雑なモデルを説明するために、一つの取引をみてみましょう。Affirmが成功するためには、消費者、加盟店、銀行パートナー、第三者の資本提供者を巻き込む必要があります。

具体的には、

1 . 
消費者が販売店を訪れ、1,000ドルの商品を購入します。消費者は販売時にAffirmを支払い方法として選択します。Affirmは消費者の審査を行い、ローンの価格(年率0%〜30%)と支払い方法(3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月)を提示し、消費者は、1回限りのバーチャルカードで商品を購入します。
Affirm は、カード発行者(イシュアー)として、利益率の高いインターチェンジフィーを得ています。ちなみに、これは20年3月期第3四半期の収益の3%を占めており、小規模ではありますが、消費者に新たな手数料を課すことで決済手段としてのAffirmの魅力を低下させることなく、1件あたりの利益を増やすための戦略的な仕組みであることがわかります。
2. 
購入が完了すると、Affirmのパートナーである銀行(Cross River)がローンを組成し、Affirmの手数料を差し引いた資金を加盟店に分配します。
加盟店には、消費者金融のようなリスクを負うことなく、かつ値引きをせずに柔軟な対応ができるというメリットがあるのです。
3. 
Affirmは消費者との間で支払いプランを設定します。消費者は、Affirmにローン期間中の返済に加えて、貸倒リスクに応じた利息を支払います。Affirmがローンをバランスシート上に保持している場合は、Affirmは消費者から利息を得ることとなります。
4. 
20年3月期第3四半期の売上高に占める消費者からの利息の割合は、前年同期の45%から31%に減少しました。Affirmが消費者以外の手数料から収益を得られるのは、マーチャントが信用リスクを補助してくれるからです。驚くべきことに、GMVの46%は手数料なしの0%APR商品によって生み出されています。消費者手数料を低く抑えることは、Affirmの成長にとって非常に重要なのです。
5. 
Cross Riverとの銀行契約により、Affirmはパートナー銀行から債権を購入することになっています。Affirmは、買取金額とオリジネーション・フィーをパートナー銀行に支払います。この図では、Affirmの機械の重要な歯車である第三者の資本提供者が強調されていないため、破綻しています。Affirmは、パートナー銀行からローンを購入するために、第三者の資本を活用しています。20年第3四半期の時点で、AffirmはプラットフォームのGMVの8%しか自己資金で調達しておらず、42億ドルの第三者資金調達枠を持っていました。これは、Affirmがコストのかかる自己資本を別の場所に投資できるという点で重要であり、Affirmの成長ストーリーにとって重要な要素です。
Affirmが十分な第さん者資金を調達できなければ、ビジネスは成長できません。私たちは、Affirmのビジネスが時間とともに資本効率を高めていくことを期待しています。資本コストと必要資本は規模に応じて減少し、投資した資金はAffirmが新しい高頻度商品を導入する際に、より頻繁にリサイクルされるようになるでしょう。Affirmのバランスシート上のローンの平均改修期間は6ヶ月であるが、特にSplit Payのような商品を提供することで、この期間は短縮されていくと考えています。これにより、ユニット・エコノミクスが改善されるでしょう。
5. 
Affirmから資金を受け取ったパートナー銀行は、Affirmにマーチャントフィーを分配します。20年3月期第3四半期のマーチャントフィーは、売上の53%を占めています。加盟店手数料は、Affirmが消費者に無料で提供する商品を補助するために必要なものであり、ビジネスにとって重要なものなのです。

ここでは、Affirmがバランスシート上に保有するローンを対象としています。また、Affirmは、第三者のオーナーにローンを売却することで、資本の柔軟性を維持しています。ローンを売却した場合、Affirmはローン売却損益を計上し、新しいローン所有者には継続的にサービシングフィーを請求します。20 年第3四半期の売上高に占めるサービシングフィーとローン売却の割合は、1 年前の 9%から 12%に増加しました。これは資本効率を高めるための機能であり、収益の大部分を占めることはないでしょう。

Affirmの直接的なコストは、上述の資本コスト以外には、サービシングコストとクレジットロスだけである。以上を総合すると、Affirmは現在、顧客 1 人当たりの GMVが 1600ドルの場合、アクティブな顧客 1 人当たりの売上が 192ドル、貢献利益が87ドルとなります。

最後に、Affirm は、前述のようにマーチャントモデルを採用しているため、顧客のほとんどを直接獲得していません。その代わりに、Affirmは加盟店を通じて顧客を獲得しています。これは、Affirmが、マーチャントベースで消費者にリーチできるという点で価値があると言えるでしょう。

画像11

The Generalistに登録 (無料)↓

貸金業者か?決済プラットフォームか?

Affirmは、S-1の中で、自分たちは決済プラットフォームとマーチャントネットワークであって、貸し手ではないと主張しています。このことは、長期的なビジネスモデルだけでなく、短期的な評価にも影響を与えるでしょう。

決済プラットフォームは、収益と営業利益で取引され、貸金業者は簿価とポートフォリオの株主資本利益率で取引されます。IPOに投資するには、前者を信じる必要があります。しかし、どちらのケースも考えられますので、ここではどちらのケースも検証してみます。

強気のケース:
AffirmはPayPalのようなマーチャントネットワークと決済プラットフォームである

Affirmは、マーチャントとコンシューマーの両方にとって価値のある製品を作っています。加盟店は、価格決定力、リピート購入率、コンバージョン率を向上させるためにAffirmを利用します。この価値提案が持続可能であると考えるならば、Affirmは、PayPalやVisaのように加盟店手数料で収益を上げているペイメントネットワークと変わりません。Affirmはそのアプローチにより、金融機関の最大のコストセンターである顧客獲得を、消費者に圧倒的な価格(APR0%)を提供できる収益センターに変えたのです。

Affirmが新たな支払い方法を提供し、リピート利用が増えれば、加盟店と顧客の取引の重要な部分をAffirmが占める可能性があり、それによって加盟店の価格決定力が高まります。このシナリオでは、Affirmは引き続き50%以上の収益を加盟店手数料から得ることとなり、ネットワークへの投資により、従来の金融機関よりも大幅に優れた経済性を実現することとなります。

弱気のケース:AffirmはLendingClubのような貸金業者である

悲観論者は、Affirmのユニークな価値提案が崩壊し、コモディティ化してしまう世界を想像するかもしれません。このシナリオでは、資本コストの低い銀行や他の資本提供者が同じような商品を作り、その結果、消費者はAffirmでリピート購入しなくなり、Affirmのマーチャントに対する価格決定力は低下し、顧客獲得コストが高まることになります。Affirmの収益は消費者の資金で賄われるようになり、成長は困難になり、ビジネスはテクノロジーを駆使した個人向けローン会社のようになっていくでしょう

The Generalistに登録 (無料)↓

経営陣

Affirmの経営陣には、長年一緒に仕事をしてきた経験やフィンテックの経験を持つ、成功した経営者が揃っています。舵取りをしているのは、連続起業家のマックス・レヴチンです。これはレヴチンの第3の行動であり、多くの意味で、彼の前の2つのスタートアップであるPaypalとSlideの仲間達を再び集めることが目的です。

この経営陣の経歴を紹介する前に、創業者、CEO、会長を務めるレヴチン自身について詳しく見てみましょう。レヴチンは、前述の通り決済分野を熟知した経験豊富な起業家です。

レヴチンは、23歳という若さでピーター・ティールとPayPalを共同設立し、CTOに就任しました。レヴチンとティールは、母校であるイリノイ大学とスタンフォード大学から多くの人材を採用し、チームを構築しました。当時の彼らは、競争力が高く、読書家で、数学が得意な人材を探していました。現在、ペイパルマフィアと呼ばれる初期のチームメンバーの多くは、Yelp、YouTube、LinkedIn、Space Xなどのベンチャー企業を設立して成功を収めています。

PaypalがeBayに15億ドルで売却された後、レヴチンはHVF(Hard Valuable Fun)というスタートアップスタジオを設立し、レヴチンの2番目のスタートアップ「Slide.com」などを生み出しました。後に同社をGoogleに1億8200万ドルで売却しています。

また、レヴチンは、複数の革新的なテクノロジー企業を手掛けるなど、同じくシリコンバレーのアイドル的存在であるジャック・ドーシーを彷彿とさせます。ドーシーのように、レヴチンの趣味はAffirmだけではありません。レフチンは、AffirmのCEOであるだけでなく、自身のベンチャー企業SciFiを通じて企業に投資し、HVFではビジネスのインキュベーションを続けています。また、不妊治療のスタートアップ企業であるGlowの共同設立者であり、Unity TechnologiesやMixpanelの役員も務めています。

また、レヴチンのリーダーシップについては、注目すべき点が2つあります。

1つ目は、前述したように、強力な経営陣を確保する能力です。前述したように、彼の仲間(および投資家)は、ほとんどが以前に一緒に働いたことのある人たちです。これはよくあることと言えます。ZoomのCEOであるエリック・ヤンは、前職であるWebexやCiscoから多くの人材を採用したことで有名です。レヴチンの側近たちが、フィンテック業界で最も素晴らしい経歴を持っていることは、決して悪いことではありません。

第2に、レヴチンは従業員から尊敬されているようです。GlassDoorの調査では、81%のレビュアーが彼のCEOとしての地位を認めています。成長段階にあるテクノロジー企業では、人材獲得競争が激化しており、人材を採用し、維持する能力が最も重要となりますから、これは素晴らしいことだと言えるでしょう。

画像12

取締役会はレヴチンの重要性を認識しているようで、CEOとしての長期在任にインセンティブを与えるように彼の報酬を設計しています。レヴチンの報酬の大部分は、今後5年間の株価に応じて10種類のトランシェが付与されるものとなっており、現在の基本給は10,000ドルです。

それでは、マックスがAffirmを立ち上げるために集めた豪華な経営陣を見てみましょう。

画像13

レヴチンは、Affirmの技術的な取り組みをリードするために、Slideの元CTOであるリボル・ミシャレックを起用しました。イリノイ大学を卒業したミシャレックは、黎明期のIT企業に個人的な貢献者として入社し、上級管理職まで昇進した経歴を持っています。また、CTOとして、エンジニアリング、プロダクト、デザイン、オペレーション、アナリティクスなどを統括しています。レフチンと同様、ミシャレックもメトリクスにこだわり、毎日朝7時半から30分かけてメトリクスを確認しています。

もう一人の元同僚であるキース・ラボイスは、Affirmの取締役会に参加しています。マイアミに赴任したばかりの彼は、今年も大活躍しているようです。ラボイスはAffirmのほかにも、Airbnb、Palantir、DoorDashなど、2020年に上場する6社に投資しています。レヴチンとラボイスは、ラボイスが事業開発担当のEVPを務めていたPayPal時代からの知り合いです。また、二人は、Slide社でも手を組み、キースはEVPとしてGo-to-Market戦略を指揮していました。RaboisはSquareのCOOを務めた後、フルタイムの(そしてもちろんコントラリアンの)投資家になりました。

Squareでペイメントカウンセルを務めていたラボイスは、最高法務責任者のシャルダ・カロ・デル・カスティージョの採用に貢献したかもしれません。カロ・デル・カスティージョは、Squareでペイメントカウンセルを務めた後、eBayの買収後のPayPalにも在籍していました。その後彼は2019年末にAffirmに入社し、長年にわたる加盟店獲得、ペイメントカード、プラットフォームペイメントの経験を生かしています。彼女は、Affirmがプラットフォームに金融商品を追加する際に、規制環境をナビゲートするための専門知識も持っています。

シルヴィア・マルティンスヴィッチがチーフコマーシャルオフィサーを務めています。BNPL分野では競合他社との競争が激化しており、マルティンスヴィッチの役割は非常に重要です。彼女は、グルーポンの元COOで、12億ドルの損益を管理した長年の経験を持っています。CMOのグレッグ・フィッシャーもまた、PayPalの元社員であり、この戦いにおいて重要な役割を果たします。彼は以前、BraintreeとVenmoのCMOを務めていました。

最後に注目したいのは、クリスタ・クアレスだ。彼女はAffirmの最初で唯一の独立取締役であり、2019年の春に入社しました。クアレスは、2015年にCFOとして入社した後、OpentableのCEOを務めていたことで知られています。クアレスは、The Walt Disney CompanyのSVPも務め、現在はパーソナルケア企業Kimberly-Clark($KMB)の取締役を務めています。

全体として、Affirmの経営陣と取締役会は、特にフィンテック分野において、関連する豊富な事業経験を持っており、これ以上のチームは考えられません。

The Generalistに登録 (無料)↓

投資家

Affirmの投資家層を探る上で、PayPalマフィアの一員であるピーター・ティールの存在は非常に重要です。

レヴチンがティールに投資を依頼したのは、Affirmが初めてではありません。ティールがPayPalの共同設立者として登場したのは、23歳のレヴチンがスタンフォード大学のセミナーを潰し、翌朝、朝食を食べながら売り込んできた後だった。

ティールは、2012年に行われた7.5MドルのシリーズAに初めて参加しました。ティールは、自身のベンチャーキャピタル会社であるFounders Fundを通じて、2016年のシリーズDで再び投資を行いました。キース・ラボイスは、Khosla VenturesのシリーズBをAffirmに導いた後、ティールの会社であるFounders Fundに参加しました。

KhoslaとFounders Fund以外では、Lightspeed VenturesとSpark Capitalが、それぞれシリーズBとシリーズCで参加しています。

また、意外なところでは、電子商取引大手のShopifyがキャップテーブルに登場しています。前述の通り、ShopifyとAffirmは今年初めにパートナーシップを締結し、Affirmは米国でのShop Payの分割払いの独占権を獲得しました。

S-1によると、この取引の一環として、AffirmはShopifyに1株0.01ドルで最大2,030万株を購入できるワラント(当該企業の株式を予め定められた価格で購入することができる権利)を付与しています(!)。Shopify社が保有する株式は、最大で5億ドルの価値があると言われており、チャネルパートナーとしてはかなりの利益となります。

画像14

Affirmの資金調達の歴史に関して、興味深く、珍しい点は、IPO申請のわずか2ヶ月前の2020年9月に5億ドルのシリーズGの調達を発表したことです。このため、Affirmが上場するのは2021年になるのではないかと多くの人が予想していました。このようなごく最近の資金調達にもかかわらず、Affirmは年末のラッシュに参加することを選んだのです。

財務ハイライト

Affirmの業績の主な指標はプラットフォームを流れる商品総量(GMV)です。過去1年間でGMVは75%増加しましたが、これは、より多くの消費者がわずかな量の取引を行ったことによるものです。昨年、Affirmは850万件強の取引を処理し、1件あたりの平均チケットサイズは615ドルでした。

GMVは通常、ホリデーショッピングのために12月の四半期に増加するため、この時期にプラットフォームがどのように推移するかが重要です。
また、GMVは加盟店の新規登録にも影響されます。今年は、Shopifyが顧客として登録された初めてのホリデーシーズンとなります。ブラックフライデーの24億ドルの売上のうち、Shop Payを利用したものがどれくらいあるかは、すぐに明らかになるでしょう。

画像15

Affirmの財務上の焦点は、GMVから抽出される貢献利益です。過去12ヶ月間では、GMVの4.5%に相当する貢献利益を獲得している。この数字は商品構成に依存するため、非常に不安定です。一般的に、APR0%のローンは、Split Payやその他の短期間の小額ローンよりも高い割合で貢献利益を獲得します。

貢献利益の基本的な構成要素は、マーチャントネットワーク収入、貸付収入、ローンの売買による収入、プロセシングおよびサービシングコストです。加えて、バーチャルカードの発行による収益ラインが小さいながらも増加しています。これらを順番に見ていきましょう。

マーチャントネットワーク収入

Affirmの最大の収益源は、加盟店に課すネットワーク料です。過去12ヶ月間で、これらの手数料はGMVの6.0%を占めている。年率0%のローンの比率が高いため、GMVに占める割合が大きくなり(前年同期27%、直近四半期は45%)、加盟店の収益率が上昇しています。

画像16

貸付収入

マーチャントネットワーク収入が前払いであるのに対し、貸し出し側の収入はローンの期間中に徐々に発生します。融資期間は48カ月と長いが、平均は6カ月なので、通常は2四半期に渡って収入が発生することになります。

しかし、これらのローンは資金調達が必要であり、Affirmが信用リスクにさらされているためコストがかかります。Affirmは、信用損失の引当金を前もって計上していますが、加盟店ネットワーク手数料を計上するのと同時に、資金調達コストをローンの有効期間中に分散させています。つまり、Affirmが年率0%の融資を急速に拡大している時期には、収入が前倒しされることになるのです。

会計的には、この他にも要素があります。Affirmは、提携先の銀行からローンを購入する際に、市場価格よりもプレミアムをつけて購入し、損失を計上しています。そして、その損失をローンの存続期間中の受取利息として計上します。Affirmは、この損失を貢献利益から除外しているが、事実上、報告された収益を増加させていることとなります。

APR0%のローンの比率が高いため、マーチャントネットワーク収入の恩恵を除いた融資全体では、あまり収益性が高くありません。信用損失引当金と資金調達コストを基礎となる金利収入と相殺すると、過去12ヶ月の実績に基づいて、約300万ドルしか残らないことになります。

画像17

しかし、これはミックスの機能です。Affirmは有利子のローンで平均23%の金利を得ています。資金調達コストが4%程度であることを考えると、かなりの利益を得ることができることとなります。ただ、ここでの本当のリスクは、ローンがデフォルトすることです。Affirmは、同業他社よりも20%多くの顧客に与信を承認しているため、このリスクは特に顕著です。

これまでのところ、Affirmのクレジットモデルはよく持ちこたえていると言えます。9月末時点で、30日以上延滞しているローンは1.0%で、3年間の加重平均である1.1%とほぼ同水準です。クレジットカード業界全体では、9月末時点の延滞率は2.0%で、同じ3年間の平均延滞率は2.5%でした。

さらに、Affirmのフライホイールに関する考察の一環として同社が提供した「チャージオフ」チャートによると、個々のローンコホートのパフォーマンスは改善しているようだ。これによると、最悪のコホートでは累積損失が最大4.5%に達していたが、最近のものは3.0%以下で推移している。格付け会社DBRSモーニングスターは、パンデミックの影響による追加的なストレスを含めて、調査対象となったローンプールの最悪の累積純損失を6.58%と見積もっている。

たまたまですが、コロナウイルスは予想よりも悪化要因が少なかったようです。同社は3月に、潜在的な貸倒引当金を貸付金の14.8%の損失を吸収するのに十分な額に引き上げました。翌四半期には、この引当金の一部を取り崩し、8.8%にまで低下させることができました。今後の業績は、貸倒引当金がこの水準から大きく乖離しないことにかかっていると言えるでしょう。

ローンの売買による収入

前述のように、Affirmのローンは、厳密には銀行のパートナーであるCross Riverが提供しています。AffirmはCross Riverからローンを購入する契約を結んでおり、オリジネーションの数日後に手数料を支払って購入しています。Affirmは、これらのローンを自社のバランスシートに残すことも、第三者に売却することもできます。2020年6月までの会計年度では、Affirmは購入したローンの56%を売却していますが、直近の9月までの四半期では、売却率は28%と大幅に低下しています。この変化は、Affirmが9月に増資を行い、バランスシートからより多くのローンを調達できるようになったためと推測できます。ローンが売却されると、損益が発生し、Affirmの損益計算書では収益項目として表示されます。ローンを売却すると損益が発生し、損益計算書の収益項目に計上されます。会計上の複雑さを考慮すると、Affirmはローンの売却で損失を出す傾向にあるかもしれません。

また、ローンを売却した後も、Affirmは顧客に密着したサービスを提供している。第三者が支払うサービシング料は、ローンの未払い元金残高の 1.2%程度であり、Affirmの損益計算書では収益項目として計上されている。

費用

貢献利益の最後の構成要素は、ローンを組むのにかかる変動費です。過去12ヶ月間の変動費は、GMVの1%程度でした。総費用に占める割合は比較的小さく、営業費用全体の15%に過ぎません。

コストベースのほとんどは固定費であり、テクノロジーやデータにかかる費用と一般管理費が昨年のコストベースの4分の3を占めていました。もし、Affirmがこの固定費をベースにGMVを向上させることができれば、このモデルには営業上のレバレッジがかかるでしょう。

最後のコスト要素は販売・マーケティングで、過去12ヶ月のコストベースの12%を占めている。この期間中に850万件の取引が行われたため、マーケティング費用は1件あたり5ドルとなり、マーチャントの労力を考えれば当然のことながら、わずかな獲得コストである。

競合他社

Affirmの主なBNPL競合企業は、Afterpay、Klarna、Quadpay、Sezleです。これらのうち、GMVではKlarnaが世界最大のプレイヤーですが、米国内ではAffirmとAfterpayが最大の市場シェアを持っています。ただ、興味深いことに、オーストラリアのAfterpayは、Affirmの国内での成長を上回っているようです。

これらの競合企業は、手数料のかからない分割払い、シンプルな金利のローン、モバイルベースの消費者市場など、ほぼ同じ商品を提供していることから、顧客の奪い合いが競争の主な基盤となっているようです。

前述の通り、BNPLプロバイダーは、最も包括的なマーケットプレイスを提供するために、最も多くの優良な小売業者を確保する必要があり、業界は「ランドグラブ(土地の奪い合い)」の段階にあると考えています。このような背景から、AffirmがShopifyと提携したことは、非常に戦略的であると考えられます。

画像18

いくつかのBNPLプレイヤーは、モバイルアプリと消費者市場を差別化要因として宣伝しています。S-1 Clubは、相対的なマインドシェアを把握するために、アプリのダウンロードデータを確認しました。Apptopiaによると、グローバルでのダウンロード数とMAUはKlarnaが圧倒的に多いが、エンゲージメントはAffirmがトップであるとのことです。

画像19

画像20

もうひとつのバロメーターは、Second Measure社のデータです。Second Measure社のデータによると、消費者の取引情報を測定することで、Affirmは、顧客一人当たりの売上高と取引の平均金額では競合他社をリードしていますが、顧客一人当たりの取引件数では遅れているとのことです。

これは、少なくとも競合他社と比較してAffirmが高額な買い物をする際によく利用されているということを示しています。また、それ以外の点では、BNPLのすべてのプレイヤーが、売上、顧客、取引を拡大しているように見える。

画像21

他のBNPLプレーヤーがAffirmの脅威となる一方で、同社の本当の競争相手は現在の決済環境かもしれません。

米連邦準備制度理事会が2018年に実施した調査によると、米国で最も広く利用されている決済手段はデビットカードで、取引の28%を占め、現金(26%)、クレジットカード(23%)と続いています。この調査では明確に名前が挙げられていませんが、BNPLは取引構成比が1%に過ぎない新興の決済手段ですが、急速に成長しています。

また、Affirmはクレジットカードに代わる決済手段として位置づけられていますが、以下の図を見る限り、他の決済手段でもシェアを獲得できると考えられます。

画像22

BNPLとAffirmは、クレジットカードに取って代わることで大きなチャンスを手にしていますが、真の参入障壁を特定することは困難です。アマゾンでは、チェックアウト時にBNPLを選択することができます。JPMorgan Chaseのクレジットカードは、低金利で同様のオプションを提供しています。Appleは金利0%の月払いを提供しています。PayPalは、そのVenmo部門との競争を考慮する前に、それ自体が巨大な存在です。

The Generalistを購読 (無料)↓

規制

Affirmは、米国で最も規制の厳しい業界のひとつである消費者金融業界で事業を展開しており、S-1を見るとそのことがよくわかります。

当社の事業は、さまざまな分野で広範な規制、審査、監視を受けており、そのすべてが変更されたり、不確実な解釈を受けたりする可能性があります。

特に注目されているのは、Affirmが「レンタル・ア・バンク」モデルを採用していることです。Affirmは、Cross Riverの銀行免許とその範囲を活用しています。特に、Cross Riverは高利貸しを禁止する利得法がある州でも融資を行うことができます。ニュージャージー州の最大許容金利は30%なので、その金利を輸出しているのです。

このような場合、本当の貸し手は誰なのか、貸し手が変わっても元の条件が適用されるのか、という点が注目されています。この問題は、2015年のMadden v. Midland Funding事件で、第2巡回区(ニューヨーク州、コネチカット州、バーモント州)が、ローンが変更された時点で自国のレートの優位性は失われると判断したことで浮上しました。それ以来、FDIC(連邦預金保険公社)やOCC(通貨監督庁)をはじめとする主要な銀行規制当局は、このモデルを支持する判決を下していますが、一部の個別の州は依然として反発しています。

しかし、今年8月、コロラド州で関連する訴訟が解決したことで、いくつかの点が明らかになりました。コロラド州は、オリジネーションバンクと提携していたマーケットプレイスレンダー2社を提訴していましたが、そのうちの1社がCross River社でした。その結果、金利の上限が36%であれば、この仕組みを維持できることになりました。この和解案はロードマップを作成するものですが、他の州では異なる見解を形成するかもしれません。

一方、Affirmの証券化信託(4億ドルのローンプール)には、リスクの高いアイオワ州やウェストバージニア州の消費者向けローンは含まれていません。また、ニューヨーク州、コネチカット州、バーモント州の消費者への融資は、それぞれの州の利率上限に制限されています。

これらの潜在的な規制リスクの重要性は、問題となっている特定の技術的、財務的、法的問題とは異なる政治的現実によって決定されると思われます。例えば、Affirmのノンバンク・レンダーとしての曖昧な状態が深刻な問題になるかどうかは、規制機関や選挙で選ばれた議員が問題にしようとするかどうかにかかっています。政治的な活動により、これらの懸念が大きな問題になったり、一方で些細な技術的問題になったりするのです。

Affirmは、派手なIPOで上場する消費者金融業者として、目標を持って公開市場に参入することになります。つまり、Affirmは、調査対象としては格好のターゲットになりつつあるのです。トランプ政権下のCFPBよりもバイデン政権下のCFPBの方が、より筋肉質な(つまり存在感のある)CFPBになるという見通しは、そのリスクを拡大させるが、それは連邦政府の枠を超えている。

パンデミック時のAffirmのキャンセル・返品ポリシーが問題になることは、想像に難くないでしょう。現状では、Affirmは基本的に顧客を放置しており、ローンのキャンセルは加盟店のカスタマーサポートに依頼することになっています。その結果、消費者からの苦情が相次ぎ、最終的には州の司法省や連邦政府の規制当局による調査が行われるかもしれません。BBBに寄せられたAffirmへの苦情は、過去12カ月間でGMVの20%増というペースで増加しているようです。

また、州をまたいだ規制の裁定(ニュージャージー州でローンを組み、地元の高利貸し法を無視する)は、法を超越した存在であると信じているハイテク企業を見せしめにする絶好の機会と考えた州当局にとって、原則的な問題になるかもしれません。このように、未解決の問題や未解決のリスクは、それを見つけようとする意欲のある人にとっては、攻撃の糸口になります。

The Generalistに登録 (無料)↓

COVID-19

Affirmがコロナから受けた影響としては、Pelotonと家庭用フィットネス機器の台頭が挙げられます。パンデミックの間、人々はジムに行くことができません(あるいは行くべきではありません)。その結果、Pelotonは爆発的に売れており、高価で耐久性のある商品として、Affirmが融資するには理想的な買い物です。Pelotonは、2020年度のAffirm社全体の売上の28%を占めます。次の9つの大きなマーチャントの合計は7%に過ぎないため、Pelotonがいかに巨大かわかるでしょう。

今回はPelotonから離れて考えてみると、Affirmは以下のような買い物に向いています。Affirmが適しているのは、1)高価、2)耐久消費財、3)オンラインでの購入である。

パンデミックの影響で、消費はサービス(レストラン、旅行、エンターテイメント)から商品へとシフトしています。例えば、物理的な高級品は、贅沢な買い物としての休暇に取って代わりつつあります。それに加えて、パンデミックの影響で消費がEコマースに劇的にシフトしており、Affirmは顧客獲得の機会を増やしています。お客様が安心して大きな買い物をするためには、実際に手を動かしてみる必要があるというのは、高級な商取引では昔から言われてきたことです。これが高級品のEコマース普及の障壁となっていました。Affirmは、お客様の心理的な障壁を下げることで、その障壁を克服するお手伝いをします。最後に、超低金利であることは、信用コストが下がることを意味し、0%金利のローンは腹落ちしやすく、収益性も高くなります。

また、消費者側では、消費者支出が減少しているにもかかわらず、Affirmに適した購入の相対的な財布のシェアは増加しています。マーチャント側では、Affirmは実店舗をオンライン化するために必要な、ユニークな機会を提供します。

これはAffirmにとってどのような意味を持つのでしょうか?

決済の仕組みを分析した結果、消費者が買い物をする際に使用する手段に急激な変化はありませんでした。これは、消費者が既存の決済手段に慣れ親しんでいることを反映しており、消費者が特定の決済手段に固執していないことを意味しています。Affirmは、そのような状況を期待しています。その可能性を実現するには、消費者の行動を変える必要があるでしょう。

結論として、BNPLが市場を持っていることに疑いの余地はありません。Klarnaはより大きなユーザーベースを持ち、Afterpayはより急速に成長しているかもしれませんが、Affirmはその中で有利な立場にあるようです。より大きな問題は、Affirmが長期的な勝者となり、既存の決済方法からかなりのシェアを奪うことができるかどうかである。この市場はまだ若く、その動きは流動的であるため、この業界が発展していく中で、市場におけるさまざまな競合他社がどのように反応するかをウォッチすることが必要不可欠であると言えるでしょう。

ーーーーーー

最後まで読んでいただきありがとうございました!

翻訳の許可をくださったマリオ・ガブリエレさん、ありがとうございました。翻訳している自分にとっても非常に勉強になりました。

邦訳の記事だけではなく、The Generalistの他の記事もご覧ください!

The Generalistに登録 (無料)↓

また、マリオさん含め、他のアナリストの方のTwitterのフォローもぜひしてみてください!

アナリスト一覧
Julie VerHage
Marc Rubinstein
Nic Dardenne
Yoni Rechtman
Chauncey Kerr Hamilton
Annika Lewis
David Wei
Jake Singer
Sayshu Medicherla
Mario Gabriele

最後に僕のTwitterのフォローもお願い致します!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?