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【要約】対人関係とジェンダー(著:赤澤淳子)

 本文は、『ジェンダーの発達科学』より、第7章。

はじめに

 本章では、成長の過程において男女関係が、対人関係においてどのような特徴をもって現れるのかを検討する。

仲間関係における性別分離

 就学前における性別分離は3歳頃から始まり、同性の仲間を選ぶことにより分離が始まり、子供同士が互いの性別分離を強化して促進し合うということが分かっている。
 保育や教育には2つの論理がある。即ち、男女を平等に扱う論理と、男女を分けて別の役割を与える論理である。後者は隠れたカリキュラムと呼ばれる。男女二元論による隠れたカリキュラムは、高校の文理の進路選択に至るまで様々に影響を与える。
 また、小学校高学年頃になると、性別分離に、異性の排除と性別間における地位が発生(特に男児から女児への蔑視)する。男児間でも、女性的なふるまいをする男児への排除が起きる。高校においては、男女別学の方が男性は性差観が強くなる一方で、女性は男女共学・男女別学において性差観に差は示されていない。

親密な二者関係における性別役割分業

 性別役割分業は、青年期の恋愛から夫婦生活に至るまで、日本では顕著である。ジェンダーバイアスは社会制度の諸側面に埋め込まれているため、みずからのジェンダーバイアスに気付かないと、ジェンダーの再生産に加担してしまう危険性がある。特に、みずから気付かぬうちに、性別役割分業んから逸脱する人に対してジェンダーバイアスを適用して(罰する)ようなことがある。

「男女」の疎遠な関係

 家父長的価値観の中で、男性がミソジニー(女性蔑視)やホモフォビア(同性愛嫌悪)によって連帯を保っていると指摘されている。こうした言動は幼少期から見られる。

ホモソーシャル=同性間の社会的絆

セジウィック(Sedgwick)

 一方で、差別される側の女性は「女子会」という名で連帯したりする。また近年では、結婚や恋愛に関心を持たない人も増えている。

「男女」二分法を超える

 家族におけるジェンダーの規範が、性別役割分業の再生産に大きく影響すると考えられている。性別分離から起きる性差別をなくすためには、親や保育者が、権力を生み出す差別化の働きやジェンダー化の働きに敏感に気付き、介入していく必要がある。成長過程において異性間の相互作用を保つことや多様な人間と交流を続けることが他者理解につながる。これは同性愛者や障がい者への偏見でも同様である。


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