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博士がゆく 第8話「初めての研究発表会②」

「今日はかなり調子がいいみたいだね」

コチラの悪態を気にせずに細胞が続ける。ペンケースを拾い、中身が湿っていないか確認するが、特に水気を感じない。匂いも確認するが、黒鉛がふわりと香るだけだ。

「僕の目の前で匂いを嗅ぐのはマナーとしてどうなんだい?」

「人のペンケースに勝手に入ってたやつにマナーを問われる筋合いはない」

だいぶこいつの出現にも慣れてきたが、一体こいつがなんなのかはいまだに分からない。決まって落ち込んでいる時に出てきて元気づけてくれるんだよな。そう思ってからふと疑問に思った博士(ひろし)は細胞に話しかける。

「今日は特に困ってないんだが、何か用でもあるのか?」

「うん。なんとなくひろし君に良からぬことが起きている気がしてね」

「良からぬことって…。普通に来週の研究発表会の準備をしていただけなんだけどな」

いつもの通りオレを心配してくれていることは確かなようだが、研究発表の準備は万端だ。

「じゃあ、その研究発表のスライドを見せてくれないかい?」

「今からか?」

他の研究室のメンバーにコイツと話している所を見られるのは少しキツイ。

しかし、誰かが戻ってくることもないだろう。戻って来たとしても発表練習をしているようにしか見えないとも思える。せっかくだし見てもらうことにしよう。

「わかった。じゃあ早速」

〜発表後〜

「どうだった?」

博士は自信ありげだが、細胞はうつむいたまま何かを考え込んでいる。腕を組んでいるようにも見えるがそもそも細胞に手と足の区別なんてあるのだろうか?なんてことを考えていると細胞がはなし始めた。

「研究発表をする学生が陥るミスが満載だね」

「え?」

(つづく)

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