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note感想🌟 共作小説【白い春〜君に贈る歌〜】第5章「永遠」⑤ 最終話
「いつか、何かの形で知ることができるかもしれません。今は言えませんけど」
三浦さんの秘密。
大事にとっておきたい思い出だから。
「何それ。かなり意味深なこと言うね。あの、三浦くん。正直言って、秘密が多すぎてめんどくさいから……」
坂本さんに呆れるように言われ、みんなで笑った。ああ、こんなに笑ったのは、なんだか久しぶりのような気がする。
笑えるようになった。
傷みがやわらいできたから。
光、光、光……。
どの詩にも光が溢れていた。
上野さんの目には何が映っていたのだろう。
僕が光だと言うのか?
影を消す場所を、ずっと探し続けていたのに。
紗良さんが愛した光。
三浦さんの優しさは、天使のような光。
そして、紗良さんは三浦さんの傷を癒したいと心から願っていた。
かつて、自分が考えていた光とは、生きていること、愛されていることだった。
でも、もしそうだとしたら、上野さんのように、もうこの世にはいない人たちは、光ではないのか。あるいは、誰からも愛されずに孤独に生きる人間には、光がないのか。
そうは思いたくない。
今まで、光に対して受け身な捉え方をしていた。自分の外側にあるものだと思い込んでいたのだろう。
光の正体に近づいていく。
光とは。
愛する心に灯るものなのだ。
誰かを愛するとき、そこに光が灯る。
与えられるものではなく、生み出すもの。
ある夜。
ギターを抱えて、隣町の駅前に出かけた。
会社帰りの疲れた人々が、流れるように歩いている。
何年ぶりだろうか。久々の路上ライブである。譜面台に歌詞とコード譜の書かれた用紙を広げて、昔よく唄っていた曲を数曲歌う。
そして、上野さんがデモテープに残してくれた歌を、初めて人前で披露した。
アーティスト、レンの復活。
止まった時間が動き出した。
彼女との思い出が甦ってきて、涙が溢れそうになる。
そこに君がいた。
力強い言葉の数々。
歌の中で君が輝いてる。
君に見せたかった景色。
今、ここにあるよ。
君のために歌う。
君へ届くように。
あれ?
君は……
僕の心に光が灯る。
大丈夫。
君は、光だよ。
君に贈る歌、聴いてくれるかな?
待っていたよ。
やっと会えたね。
ずっと、そばにいる。
聴いて。
レンの歌を君へ伝えたい。
これは君の、白い春にまつわる物語なのだから。
君の光とともに、生きていくよ。
🌸この記事は仲川光さんの企画参加記事です🌸
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