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豊かな人生を、介護と漆から考える。

「この漆器、投げたら割れますか?」
僕の作った漆器を眺めながら、そう言ったのは、ビジョナリー代表の丹羽悠介さん。

「介護 福祉×マッチョ」という異色の組み合わせで、今メディアに引っ張りだこの、ひだまりグループ株式会社ビジョナリーを経営するお方です。

写真左 丹羽悠介さん

福祉、介護の業界は、「辛い、汚い、大変」というイメージで人材採用に苦しむ業界。
介護士さんの高齢化や人材不足で、社会問題にもなっています。そんな業界のイメージを、「マッチョ実業団」という斬新なアイデアでイメージを払拭。
介護に爽やかでカッコいい!という、業界に新たな風を吹かせる風雲児的存在です。
丹羽さんの会社の社員さんは、若くて活気のある方達ばかりで、「人材不足」や「マイナスイメージ」といった業界の壁をぶち破っています。


実業団7SEAS

今まで、漆作品をたくさんの方に見ていただいてきましたが、こんな質問をされたのは初めてのこと。

「そりゃあ、さすがに投げたら割れますよ笑」

冗談混じりに返したところ、真剣な表情を崩さない丹羽さんを見て、ハッと我に帰りました。


今思うと、失礼な対応をしたと反省しますが、介護福祉の現場は一般の人が知らないことが多く、大変な現場。

「その中にこそ、楽しさとやりがいと充実感があります!介護は若くて活気ある人がやるべき仕事なんです!」とおっしゃいます。


マッチョ介護が世界を救う!

ビジョナリーが手がける介護は、訪問介護、児童発達介護、放課後等デイサービス、障害者グループホーム、障害者シェアハウス、訪問看護、生活介護と幅広く行なっています。

先日発売された丹羽さんの著書「マッチョ介護が世界を救う!」は、業界の現状や、それに立ち向かうビジョナリーの苦闘を余すことなく書かれています。

丹羽さんの著書「マッチョ介護が世界を救う」

アートで感性を育てる生活介護「atto」

中でも珍しい取り組みが「atto」という生活介護施設。「アート活動」を通して、利用者さんの「自立や夢」を実現する場、という取り組みです。

ビジョナリーのビジョンは、【「なりたい自分」を諦めない世界をつくる】こと。
利用者さんがこの場所に、居場所や楽しいことを見つけ、得意なことを育み、いつかは「夢」を実現する。それを手助けする場所です。
"介護を必要とする方が諦めなくてもいい世界を作りたい"という素晴らしい取り組みだと思います。

手足が使えないなら、口で絵を描けばいい

ビジョナリーが受け入れる利用者さんは、「要介護5」という、介護支援がないと生活が送れないという方も多く、手足が使えない方もおられます。

通常であれば、大好きな絵を描いたり、モノを作ることを諦めてしまう方も多いと思います。

でも、手足が使えないのであれば、口を使えばいい。と、口に筆をくわえて絵を描いたり、モノを作ったりする方がおられます。
見学に伺った時、その方はちょうど口を使って編み物をされていて、
「丹羽さん、お二人に差し上げて。」と、コースターをいただきました。

実際に作っておられるところを見ていることもあり、通常の何倍も時間をかけて一本ずつゆっくりと口で編み物をして作られたコースター。

「簡単にいただいちゃっていいのかな?なんて心の豊かな方だろう...」
ただただ感動してしまいました。

感極まってしまい、その場では「ありがとうございます!大切にします。」と言うのが精一杯。
その後、家に持ち帰り、このコースターを使うたびに、暖かい気持ちにさせてもらっています。

実際にいただいたコースター

大切にします。

この方にいただいたのは、一枚のコースターと、大きな大きななにものにも代え難い「感動体験」
この一枚のコースターが、僕が漆を通じて介護の世界に何か貢献したい。そんな想いに火をつけてくださったように感じます。

感動とは、人がなにか熱意を持って行動する動力源だと思います。

夢を叶えたり、なりたい自分になるために必要なことで、これは、伝染していくものなわけです。

GNUでも大切にしているのは、「感動を分かち合う」ということ。
そして、漆で世界が変わる。これが連鎖した時にまきおこるパワーは計り知れないと信じています。

感動するためには、それを感じ取る感度が必要。
なんというか、、ラジオの周波数というか、、。テレビのチャンネルというか、、。

とにかく、高い感度を持って生活すれば、いつか周波数がカチッとあった時、感動が生まれ、情熱が溢れ出し、それが分かち合いの心で伝染し、世界は豊かなものになります。

その感度というのが、「感性」といった感覚。
僕の感覚ですが、そんな感じです。

なので、みんなが感性を育み、心を豊かに保ち、みんなで感動を分かち合う。ここが僕の活動ルーツ。

漆器は感性を育む心豊かなツール

子ども漆器

僕は漆器や漆道具を使うと、感性が育まれると信じています。
GNUの活動を通じて、ありがたいことにこの三年共感の声をたくさんいただきますが、
その中には「漆を通して、感性が豊かになり、幸せを感じやすくなった」や、「漆によって、豊かな時間をつくることができ、家族が救われました」と言ってくださる方もおられます。
仕事から疲れて帰っても「癒しの時間」だと、毎日夜遅くまで漆を塗っている方までおられます。


「感性は感動を呼び起こす」という言葉がありますが、それには僕も同感です。

「感動」というのは、人の心が動くことであり、生活の中で小さなことに感動でき、幸せだと感じることができるのが、「豊かな人生」です。


朝、家族の「おはよう」という挨拶。いつも当たり前にでてくる妻の温かい晩御飯。何気なく人に言われた「ありがとう」という言葉。道端で見つけた綺麗な花。仕事終わりにふと眺める綺麗な夕焼け。

日々当たり前だと思っていること、なんとなくスルーしてしまっていることに、ひとつひとつ幸せを感じることができたら。
そんな一瞬一瞬を積み重ねていけば、人生は豊かなものになると思います。

足で桜を描く利用者さん

感性って何?

そもそも「感性を育む」ってなんでしょう?

よく聞く言葉です。
感性の豊かな人は、幸せが見つけやすくなったり、表現力が豊かになったり、人の心を想いやることができます。
ではどうやったら感性は育まれるのでしょう。

調和と不調和を知ること

僕は小さい頃から親父に「とにかくいいモノを見ろ」と言われてきました。
「素晴らしい景色」「美しい作品」「磨き上げられた職人技術」「絶品な味」「自分の身を置く環境」

それは裏を返すと、「いいものがわかれば、そうでないものもわかる」ということ。
それを「調和と不調和を知る」と言ったりしますが、素晴らしいものを知れば、そうでないことの違和感に気付ける。という意味です。

僕はこれも感性を育むことの一つだと思っています。

感動的な桜吹雪

大学時代の講義でのこと。

大学時代の講義で教授が僕たちにした質問がずっと心に残っています。

校庭にある一本の桜の木を指差し「あの桜の木が"美しい"と思う人はどれくらいいる?」と、尋ねたことがありました。
その時講義室にいる100名ほどの生徒の、ほとんどが手を挙げました。

そのうち手を挙げてないのは、僕ともう一人だけ。汗


高校時代、比叡山延暦寺にある高校に通っていて、延暦寺の桜は観光名所になっているほど美しく、桜が散って石畳に落ちた花びらも、毎日お坊さんたちが朝夕、ホウキで掃いています。その風景までも風情があって、毎日四季折々の景色を眺めながら生活していました。

そんな中、校庭に一本だけある桜を見たところで、もちろん綺麗だとは感じますが、"美しい景色"とまでは到底思えなかったのです。

一方手を挙げなかったもう一人の生徒は、地元が飛騨高山出身。小さな頃から自然豊かな所で暮らしていたこともあり、感想は全く同じものでした。

延暦寺の桜

調和を知ることで、不調和を知る。
小さい頃から親父が言っていた意味がわかったような気がしました。


他にも、たまたま差し入れでいただいた高級ウイスキーを1ヶ月飲んだ後、大きなペットボトルの安価なウイスキーに戻ったときの、口に広がる違和感はとてつもなくもどかしかったりしますよね...笑



ここで漆器の話に戻りますが、漆の器を知ることで、プラスチックの器の違和感に気づくことができる。
「日本の伝統的な本物の芸術に触れる。」
これも"感性を育むこと"の一つになると信じています。


「選択肢を増やしてあげること」

丹羽さんは、「選択肢を増やしてあげれば、自分に合ったことを見つけられる。新しい自分を見つけることに繋がる。」と言います。
それもまた、感性を育むことの一つ。

自分の居場所を見つけ、食を楽しむ。アートを楽しむ。人生を楽しむ。

選択肢を増やして、調和と不調和を知るきっかけを与え、感性を育み、感動を分かち合うこと。

福祉介護と漆の可能性は、なかなか数字では表せないですが、必ずあると信じています。
「なりたい自分」を諦めない世界にする。

漆の器を通して、attoの皆様やご家族、ビジョナリーの社員さん、そして日本の介護業界のお力になれることを、誇りに思います。
これからも、漆を通じて世の中のあらゆる人の力になれたらと思います。


丹羽悠介

日本一マッチョの多い福祉の会社 VISVISIONARY Inc. 代表。
美容師を経て起業を目指すが、詐欺にあい挫折。再起を期して23歳の時に訪問介護事業所の介護支援ひだまりを設立。自らも働きながら福祉業界のことを学んでいるうちに、高齢の女性に頼る現状に限界を感じる。業界イメージや仕組み自体を中から変えていくことで、男性や若い女性がもっと活躍できる業界にできないかと、株式会社ビジョナリーを設立。
人材確保に大きなコストを割かれる福祉の世界では、若い人材を引き付け、やりがいをもって仕事を続けてもらうことが必須。そこで目を付けたのが筋肉系男子。マッチョの特性=真面目な努力を継続する、体力がある。筋トレを仕事と両立したい、を生かすために「フィットネス実業団」を組織。週刊さんまとマツコ、ザ!世界仰天ニュース、WBS、アメリ
力放送 CBSなどメディアに取り上げられることで、マッチョ以外の若い人材の応募も増加。
新たな「働き甲斐」を感じさせる楽しい介護の会社を愛知県を中心に全国展開中。


GNU urushi craft

GNU urushi craftは、「漆文化を広めよう」を合言葉に、様々な”漆の新たな可能性”を探り、5代目塗師中川喜裕が”ヌーの群れ”と共に、漆文化を広める挑戦を続けるプロジェクトであり、コミュニティーであり、アウトドアブランドです。


画像引用 https://hidamarigroup.com/activities


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