ほんの立ち話くらいのこと
4月◯日 あらやだ!
新宿のSOMPO美術館で『北欧の神秘』展を観た。
あまりなじみのないノルウェーやスウェーデン、それにフィンランドの画家たちの作品ばかりあつめた展覧会だが、自然や神話といったテーマごとにまとめて展示されているので予備知識がなくても十分楽しめる。
個人的に楽しみにしていたのは、スウェーデンのアウグスト・ストリンドバリの《街》という作品。
去年の夏、国立西洋美術館の常設展で《地獄/インフェルノ》という作品を観て圧倒されたのだが、今回の展示リストにもそのストリンドバリの名前があるのを見つけ楽しみにしていたのだ。
うーむ、あいかわらず暗鬱な絵だ。ダークサイドに堕ちた人の目に映るこの世界みたいな。
だいたいタイトルが《街》なのに、街らしきものはといえば漆黒の闇のはるか彼方に浮かぶ黒いシルエットと爪の先くらいの小さな灯火のみ。
けれど、遠いからこそ余計その存在が確かなものとして生々しく感じられるということもありそうだ。
とはいえ、こうなってくるともはや絵画というよりもロマン派の文芸作品を読んでいる趣きがある。
それもそのはず、この絵を描いたストリンドバリは戯曲作家としても知られた人だ。
いや、どちらかというと戯曲作家としてのほうがより有名かもしれない。「令嬢ジュリー」だっけ?
ほかにも雪に覆われた海岸を描いたムンクの作品など、絵のほうからぐぐっとにじり寄ってくるような力強さがある。
このあいだテレビの「日曜美術館」で観た福田平八郎のように、ムンクもまた自然をひたすら“凝視するひと”だったのではないか。
ちなみに今回の展覧会でメインビジュアルとして使われているのは、《トロルのシラミ取りをする姫》の図。
囚われた姫が城の中でトロルのシラミ取りをしていると、そこにいきなり勇者が入ってくる。
驚いた姫は思わずこう叫ぶのだった。
―――あらやだ!こんなところにキリスト教徒が来てしまうなんて!
もうちょっと、ほかに言うことはないのかと問いただしたくもなるが、ひとまず姫は救出されその勇者と結ばれるのだった。
めでたしめでたし。
4月◯日 わたしの併読本
ふだんから2冊、3冊の併読はあたりまえだけれど、“併読本”なる言葉まであることは先日こちらの記事を拝見して知った。
言われてみると、なるほど併読向きの本というのもあるような気がする。
併読を“味変”に欠かせない香辛料だとするなら、ぼくの場合それにあたるのは堀江敏幸のエッセイだ。
ひとつひとつはさほど長くないが、文体に独特の調子があって他の本とごっちゃになってしまうことがない。
それに、いい感じにアタマをリセットしてくれる。
逆に言えば、読み続けるにはすこしばかり骨が折れる。
自分にとってこの著者の本が併読本としてお誂え向きな理由は、そのあたりにあるかもしれない。
4月◯日 ファンタスティック!
朝からしくしくお腹が痛む。
ようやく仕事が一段落し気が抜けたのか、風邪を引きこんだのかもしれない。
職場で同僚からファンタグレープをもらったのだが(なぜにファンタ?)、さすがにきょうは飲めそうにないのでリュックに入れて持ち帰る。
4月◯日 築地の日曜日
天気がよいので築地界隈をぶらぶらし、コーヒーショップで小一時間本を読んで過ごす。
このあたりはまだ、大通りから路地を一本入ればこんな風景と出会うことができる。
どうか築地ヒルズや築地ミッドタウンができませんように。
4月◯日 某会見のこと
仕事の合間にSNSでミン・ヒジンの会見を追ってしまう。
いちばん驚いたのは、ミン・ヒジンがどうやら本気でアイリットをニュジンスのコピーと思っているらしいこと。
この件については周囲に語りあえる仲間がいないのでよくわからないが、個人的にはぜんぜん似ていないと思っているのだが。
たしかにスタイリングには似ているところもあるが、それは昨今のY2Kのトレンドを取り入れたものでコピーというにはあたらないし、音楽性やコンセプトはむしろまったく違うベクトルではないか。
そして、なによりそのことをもっとも分かっているのは当のミン・ヒジン自身だと思っていたのだけれど。いったいなにを焦っているのだろう?
もっと自分のクリエイティビティを信じてあげたらどうか。ニュジンスはニュジンスだし、アイリットはアイリットだよ。
4月◯日 やらなくてもいいこばかりやりたい
朝から梅雨のような空模様。
こういう日はたいがい片頭痛に悩まされる。結果、やる気も起こらない。
やる気が起こらないとか言いながら、なぜか起き抜けにフレンチトーストをつくってしまった。
昨晩YouTubeで保存版プロ級のフレンチトーストのつくりかたみたいな動画を見てしまい、どうしても食べたくなってしまったのだ。
厚切りトーストをつかっているので食べごたえも十分。
やる気が起こらないのではなく、
やらなきゃならないこと限定でやる気が起こらない
に謹んで訂正させていただきます。
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