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挑戦の場をつくり続けることで生まれ、育まれたG-netの“価値”とは

設立20周年を迎えた2021年は、G-netにとって次なる10年に向けて新たな一歩を踏み出す節目といえます。G-netの「これから」に、関わる人たちはどんな期待を寄せているのでしょうか。今回は、長年にわたってG-netとの関わりを深める、昭和技研株式会社の田中禎一さんと岐阜大学の髙木朗義さんに、思うことをざっくばらんにお話しいただきました。



“地域”を軸に、多種多様な人がつながり合う場をつくってきたG-net

―おふたりはそれぞれ、G-netとは10年以上のお付き合いだそうですね。


田中:僕は2003年頃、G-netが当時発行していたフリーペーパーを手にしたのが出会いのきっかけでした。「ホンキ系インターン」の紹介記事は特に心に残っていて、思わず事務所にアポ無しで突撃。その際、応対してくれたのが前代表理事の秋元さんです。めちゃくちゃ情熱的な話しぶりで、突然の訪問にも関わらず、気づいたら当社でもインターン生を受け入れることが決まっていましたね。


髙木:私は2008年頃からのお付き合いです。ある時、お世話になっていた先生から「会ってほしい若者がいる」と紹介されたのが秋元さんでした。初対面ながら「一緒になにかできたら面白いだろうな」と思わせるパワーがみなぎっていて、それから何かと持ちつ持たれつの関係が続いています。G-netの事務所にも出入りするようになってからは、岐阜大学の他学部の学生や、地域の経営者の方々との関わりもできて、私自身どんどんつながりが広がっていくのを感じました。


―関わりを通じてつながりが広がっていくのは、G-netの特徴のひとつと感じます。


田中:今でこそ学生インターンの支援活動を行うNPOは全国に登場しています。その中でG-netが地域の第一人者の立ち位置にいるのは、学生と地域の経営者との関係性を築くことはもちろん、経営者同士のつながりを生み出す土壌も、丁寧に育んできたからだと思います。


髙木:禎一さんがフェアなどを終えた後の懇親会で口にする「ここからが本番です」ってフレーズ。あれはまさにそのとおりって感じですよね(笑)。


―フェアを終えてからが、本番?


髙木:フェアに参加した人が、懇親会ではごちゃまぜになってわいわい楽しんでいるんです。G-netの名物的な光景ですね。


田中:例えば、学生がインターン先とは別の企業の経営者とつながりを持ったり、経営者同士でインターン受け入れ時の悩みを共有し合ったり。ときには企業コラボが実現することだってあります。その場にいる人同士が年齢や立場などの垣根なく、つながりをつくっていくんです。


―確かに、私も「シェアプロ」に参加した際、懇親会でのやり取りがかなり濃いなと感じました(笑)。その場でいきなり経営者の方から「ちょっと相談したいことがあって!」と声をかけられたときは、驚きつつもうれしかったですし。※シェアプロ:社会人向けの越境型実践プログラム


髙木:立場も考え方も異なる人たちが垣根なく関係し合う、先験的な組織形成が生まれていくのが、G-netらしさになっていると感じます。


田中:ただ、はじめのうちはなかなか集まらなくて。参加する学生も企業も少なかったですから、僕は率先して経営者一人ひとりに懇親会にも参加しようと声をかけて回っていました。なんでそこまでしたのかといえば、僕が学生時代に先輩後輩や同期との関わり合いの中で、自分の考えややりたいことを見つけていったからなんですよね。多種多様な人が関わり合うのって、それだけで価値がある。そう信じているからこそ、みんなで楽しむ時間も大事にしたいんです。


仕組みにとらわれず、ひたすらに“活躍”や“チャレンジ”の応援に力を尽くしてほしい

―G-netでは近年、「ふるさと兼業」の展開にも力を注ぐなど、学生に限らず多種多様な“人”の活躍を後押しする存在となってきていると感じます。


田中:当社でも2年ほど前から兼業者を受け入れ始めています。入れ替わりで、インターン生の受け入れはいったん区切りとしました。10年以上インターン生を受け入れてきた中で、だんだんとインターン生にも変化が見られるようになり…。新たな挑戦として兼業人材の受け入れに舵を切ったんです。


髙木:今や良くも悪くも「インターンに参加するのが当たり前」になってしまったんでしょうね。とにかくチャレンジしたいからという理由でインターンを選ぶ学生が減っていると感じます。


田中:考え方を変えれば、もはやインターンという「仕組み」にこだわる必要はなくなったのだと思います。例えば2020年にスタートした「つなキャン」は、学生が地域企業の経営者や、会社員やフリーランスといったさまざまな「働くひと」とつながり、刺激し合う場となっています。地域との接点をつくったり挑戦したい人に寄り添ったりするための仕組みはひとつじゃない。そんな可能性を感じますね。


髙木:G-netの変わらぬ目的は、若者のチャレンジの場を創出することで地域を元気にすること。これを大事にしていれば、手法にとらわれる必要はないと思います。


―改めて、G-netの強みって何でしょうか?


髙木:やっぱり、一番の強みは伴走支援ですね。経営者であれば、第三者視点から会社の強みや弱点などを客観的な指摘が得られ、理念に立ち返るきっかけにもなります。学生や社会人にとっても、社会が多様化し、働き方や社会に出る方法も一様とは言えなくなってきた今、もっと本質的に「やりたいこと」を言葉にしていく重要性が高まっていると感じます。けれどその機会がない。その時、頼りになるのが伴走者だと思うのです。言語化は簡単ではないですし、苦しい思いをする若者も少なくないでしょう。けれど、「やりたい」という思いがはっきりすれば、実現しやすくなったともいえます。だからこそ丁寧に「やりたい」と向き合って、言葉にしていくプロセスはとても重要になってくると思います。


田中:G-netと関わり始めたことで、私自身経営者としてその人の良さを引き出す難しさと大切さを強く意識するようになりました。誰にでも良いところはある。けれど、人の才能なんてパッと推し量れるものではありません。大事なのは、良さをどう引き出して、伸ばしていくか。そのプロセスの中で、一番身近な第三者といえる、伴走者の存在は大きいと感じます。


節目を迎えた今こそ、G-net自身のチャレンジに期待したい

―今後のG-netにどんなことを期待しますか?


髙木:岐阜には、規模は小さくても長い歴史を持つ、伝統産業や地場産業を営む企業がたくさんあります。そういった企業こそさまざまな困り事を抱え、G-netの強みである伴走者の存在を求めているでしょう。だからこそ、もっともっと「広がり」を持たせることに取り組んでもらえたら、と思いますね。


田中:社会はものすごいスピードで変化しています。方法論も多様化し、今までの成功体験はあっという間に通用しなくなるでしょう。そういった意味では、G-netにとって次の10年というのは難しい局面からのスタートとなるといえます。だからこそ、次なるチャレンジに期待したいです。ここ数年でG-netの社会的な認知度はぐんと高まった一方で、だんだんと「かしこまってきた」ようにも感じています。組織が成長する中で当然起こり得る変化といえますが、それでもG-netは今もなお社会全体において「先を行く」という印象を与える存在だと思っています。まだまだ、落ち着くようなタイミングじゃない。もっと情熱的に、誰も見たこともないような一手に挑戦してもらいたいです。


髙木:今こそ原点といえる「思いを言葉に、言葉を行動に」という言葉を、G-netに贈りたいです。いわば裏方のような立ち位置ともいえる伴走者にも、確固たる思いはあるはず。G-netが大事にする思いは何なのか、それを実現するためにどんな行動が必要なのか。今一度目を向け、体現することが、G-netという組織全体の原動力となるのではないでしょうか。




[登壇者プロフィール]

田中 禎一(昭和技研株式会社代表取締役)

大阪教育大学卒業後、岐阜県外での就業を経て地元・大垣に戻り、廃棄物処理業を営む昭和技研株式会社に入社。2008年代表取締役に就任する。さまざまな市民団体の取り組みに参画するなど、社内外問わず精力的に活動し、G-netでは2007年より理事を務める。また、大学時代に発達人間学を専攻していたことから、「教育」と「環境」の融合も夢見ている。

髙木 朗義(博士(工学)。岐阜大学工学部・社会システム経営学環教授)

1999年に岐阜大学工学部土木工学科(現・社会基盤工学科)講師となり、助教授を経て2006年に教授職に。2020年より岐阜大学内設置の人工知能研究推進センター社会インフラ分野、Coデザイン研究センターまちづくり部門において教授を兼務、地域環境変動適応研究センターでは副センター長および社会システム部門長も務める。2019年にG-net監事に就任する。


[聞き手プロフィール]

伊藤 成美(ライター)

ウェブメディア運営会社への転職を機にライター職に就き、記事執筆の経験を積む。「培った技術を社外でも発揮したい」との思いから、2018年にG-net主催「シェアプロ」に参加。プロボノ・副業の経験を通じて独立を決意し、2020年よりフリーランスで活動する。