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エンタメを正しく楽しめる舞台 -メタルマクベス disc3-

長澤まさみ様を生で拝んでみたい

そんなことを思ったことはありませんか?
ミーハーな一般庶民の私はありまくりです。
表参道ですれ違いたい。収録現場にたまたま居合わせたい。

そんな妄想を日々抱えていました。

そんな日々の中、まさみ様が舞台に立つというニュースは私をドキドキの渦に突き落とし、錯乱させ、ついには13,500円という高価格なチケットも購入させてしまいました。

劇団☆新感線の舞台を観るのは初めて。
360度回転劇場だということも当日到着するまで知らない。
予備知識ゼロ。


そんな無防備な状態で挑んだ私を、メタルマクベス disc3は威勢良くひき殺していきました。


めちゃくちゃ主張してくる生バンドの存在と、某テーマパークのアトラクションを軽く越えるド派手な演出。繰り出される大量のパロディ。クドカン節。
回る劇場。余白のない、みっちり詰まった演出と情報。



圧巻だったのはラサール石井演じるレスポール王と、殺人をそそのかされる直前のランダムスター(原作でいうマクベス)2人のシーン。

コミカルなのに、自分が殺される未来を予知しているのかと思ってしまう気迫は、もはや王の姿でした。


翻弄されにされて、脱水直後の洗濯物かというくらい、色々な感情を絞り取られて「あれ?まだ第1幕だよね?長くない??」とやっと疑問に思ったころに、20分の休憩が告げられました。


土曜の昼公演、という時間も相まってか、女性が8割の会場はトイレに並ぶだけで休憩時間20分を殆ど消費。

この驚きを忘れたくなくて、休憩時間中にTwitterの下書きに思いを書き溜める。
書いていたら少しずつ頭が整理され、次の展開のことを考えてしまう。
もちろんいじってはあるが、それでもマクベス。
第2幕はひたすら暗転していく展開だとわかっているから、少し気が重かった。


第2幕の開演。

驚くほどに身体は回転劇場に慣れていて、演出側もそれをわかっているかのごとく、第1幕の倍以上のペースでごりごり回転する劇場。
心を壊していく2人を観るのは覚悟していたよりもずっと辛くて、それでも1988年のバンドが崩れていく様は滑稽。
本人達はどこまでも本気なのに。


もうこれ以上苦しんでいる2人を見たくない、とまでのめりこんだ頃、鮮やかな一礼をしてあっさりと飛び降りるランダムスター夫人(マクベス夫人と同義。長澤まさみが演じる)。
それは、劇中のどんな妖艶なシーンよりも、美しかった。


それから先は平穏なんて言葉を知らない人々の焦燥。争い。
追い詰められるランダムスター。


皆さまご存知の結末・ランダムスターが討たれた後も、Jrが希望の光に包まれる!といったこともない。
それでも舞台はフィナーレへと真っ直ぐに突き進み、全力のバンドサウンドで終わりを観客に伝える。


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座席丸ごと回転して現れるステージは8つほど。
かの有名すぎるマクベスを、見事に1988年と2228年でつないだ宮藤官九郎さんの脚本は素晴らしかったです。
2つの時間をつなぐ構成を用いる作品は多いけれど、本作の未来のはずのランダムスターが1988年のミュージシャンといつしか意識を共にするシーンにはすっかり飲み込まれてしまいました。


観終わった感想の一言目は「久しぶりにお金のかかった舞台を観たなぁ」。

舞台上の人はもちろん、裏方もきっとみんな全力でした。
出演者は30人超え、バックバンド加えたら40人弱。(多分)
誰も気を緩められない。
「本気はおふざけ、おふざけは本気」
まるで、そうやってクドカンが鼻歌で奏でているかのような、濃密な4時間でした。


舞台に馴染みのない人はもちろん、情報を汲み取りすぎてエンタメを気持ちよく楽しめなくなってしまった人にも観てほしい。

メタルも、舞台も、大人のおふざけも、本気も、全てが最高!エンタメって楽しい!


そんな気持ちにさせてくれます。


みんなみんな、ありがとう。来年も、いっぱいライブや舞台を観に行くね。
エンタメ大好き!



ちなみに、メタルと言えどもメロスピ多めだったので、バンドサウンドにめっちゃテンション上がりました。音響設備も良かったです、IHIステージアラウンド東京。

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