見出し画像

めぐみのりんご



めぐみのりんご(メグの冒険)



メグは小さな女の子


森の中の小さな家でお父さんとお母さんと暮らしています。

「おはようお母さん」

「おはようメグ」

「お父さんは?」

「もうお仕事に行ってしまったわよ。さあ、朝ごはんを頂きましょう」

朝はメグの大好きなアプフェルシュトルゥーデルとミルクを頂きます。



パリッとした薄い生地に
シナモン風味のりんごがたっぷり巻いてある。

「お母さんのアプフェルシュトルゥーデルは美味しくて大好き」

「メグが美味しいって言ってくれるから作るのが楽しいわ」


メグは朝ご飯のあと、お絵描きをしながら窓の外を眺めました。

「今日も雨ね」

「そうね、いつになったらやむのかしらね」


雨はしとしと森に降り続けていました。

その時山の上にキラッと光るものがみえました。

「あれは何?」

「何かしらね、とてもキラキラしてる」

メグが外を見ているとオレンジ色の小鳥が窓をコツコツ叩きました。

メグが窓を開けると中に入って来ました。

「もうすぐ山に水が溢れるのよ。
それを止めるのはあの山の上にキラキラ光るりんごだけなの」

「私はメグよ。あなたはだあれ?」

「私はハフノン、あの山の上で暮らしてるの」

「あの光ってるのはりんごなの?」

「あのりんごを空にかざすの、私がりんごに近づいても
小さな小鳥の私には持ち上げることはできないの」
ハフノンは涙を流しました。

「仲間はみんな風に飛ばされてどこかに行ってしまったの」




涙の粒はメグの指に当たりました。

「泣かないで」

メグは赤い色のレインコートを着ました。

「お母さん、出かけてくるね」

「遠くに行かないでね」

「うん」


メグは光がとても近くにあって簡単に手が届くと思っていました。

だけど歩いても歩いても辿り着くことができません。

「まだ着かないの?」

「山に登るにはあの坂を登らないといけないわ」

雨は激しくなってきました。

山の中程に来て下を見ると川に降り込んだ雨が
みるみるうちに増えてきていました。

メグは坂を一生懸命登りました。

その時足が泥に取られてメグは坂を落ちそうになりました。

メグは道の脇の草にしがみ付きました。

「落ちる」

「メグ大変、頑張って!」

山の上にはりんごが光っていて、なんだか光が強くなってきた気がします。

「あっ」

メグの手が草から離れました。

「助けて」

その時

お母さんの作ったシュトルゥーデルタイクが
長く伸びてきてメグの手を引っ張りました。



ハフノンはシュトルゥーデルをくちばしで摘んで上に引っ張りました。

メグは坂の上にどうにか登ることが出来ました。

メグとハフノンは木の洞(ほこら)で一休みしました。

シュトルゥーデルはいつの間にかお皿に乗って
りんごのお菓子になりました。

「美味しいね」

「元気が出たね」


でもこうしてはいられません。

川はゴウゴウと音を立てて山に溢れていきます。

「大変!メグのおうちを守らなきゃ」

ふたりはまた山の上を目指しました。

雨がメグの顔に当たります。


なんだか寒くなってきました。

「寒い」

「頑張ってメグ、あと少しよ」

メグは最後の崖を登りました。

木と石の間に足をかけて上を目指します。
「もう少し」

次の石に手をかけようとした時、上から土が落ちてきました。

「あーっ」

メグは崖から落ちてしまいました。

「メグ!」

ハフノンが叫んだその時。

森の木が沢山の手に変わりました。


「手が」


大きい手や細い手、白い手や柔らかい手


「温かい」




メグは次々に現れる沢山の手に運ばれて

山の上に光るりんごを手にしました。

メグが山の上からかざしたりんごは
激しく光りだしました。



「メグ!りんごが光ってる!」

「眩しい」

りんごの光は雨雲をどんどん遠ざけて、川の水を静かにしていきました。

川の水は遠くに運ばれてやがて前のようにゆるゆると流れ出しました。

「お日様だわ」

空には雲がなくなり、明るくなっていきました。

いつの間にかハフノンの仲間が集まってきました。
「メグありがとう。メグのおかげで川が静かになったわ」

小鳥達は口々にメグにお礼の言葉を言いました。

「おうちに帰りましょう」

小鳥達はメグを草で編んだ絨毯に乗せて運びました。

おうちの近くに帰って来るとお父さんとお母さんが
メグを探し歩いているのが見えました。


「メグ、おかえり!心配したのよ」

「ただいまお母さん、お父さん」

「さ、おうちに帰ろう」

「お腹すいたでしょう?りんごのジャムを作ったからパンに乗せて食べましょう」

みんなでパンを食べ、メグは窓から見ている小鳥達に手をふりました。


おわり




このお話はある病気で入院中の方への応援の意味が
たくさん織り込まれています。

りんごと深く関わりのある方で
これを読んだ知り合いだけが分かる事もあって申し訳ないのですが
アプフェルシュトルーデルというドイツのお菓子は
シュトウルーデルタイクという薄い生地で、フュルンクという
りんごの美味しい具を包んだものの事です。
仲間内の集まりで、ある高名なパン屋さんが、自治会のご婦人方に
作ったことがあり
作中で、メグをシュトルーデルタイクが救う所がありますが
それは彼女の事を心配している
ご婦人方の優しさの象徴でもあります。

そして彼女を救いたいと願うみんなの気持ちが後半
温かい手になってメグを頂上へと
運びます。
グループLINEの中でみんなが心配している様子を
手で表してみました。

最後
メグがりんごの光を翳したり
小鳥達がメグを運ぶのは
医療関係の方が手厚く看護してくれている
そんなイメージです。
川は危ういところでしたが氾濫せず
無事に収まったのは
彼女が元気になり
無事にご両親のところに戻って
また以前のように暮らして欲しい
そんな願いが込められています。


ハフノン Hoffnung.  希望
ハフノンを救いたいという気持ちは
彼女の優しさを表しています。

めぐみのりんご

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?