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新規事業立ち上げ期のアンチパターン

「経営を教える会社では新規事業をどうやって進めているのですか?」と聞かれる機会が多かったのでLTをしました。

こんにちは、GLOPLAのPOの松尾です。
経営大学院のTech系イベントでLT「新規事業開発“体制”のしくじり」をしました。
その時にいただいたコメントや質問を反映し、新規事業立ち上げ期のアンチパターンとして更新したので、みなさんに共有したいと思います。

はじめに

GLOPLAは2021年4月リリースから3年が経過しました、その間幾つものしくじりが重なり事業スピードが鈍化し事業撤退の危機に陥ったこともありました。
この記事では、その教訓から新規事業立ち上げ期にしくじりやすい6つの領域について、やってはいけないこと、なぜやってはいけないか、やるべきこと、として整理しました。

先ず、事業会社が新規事業を立ち上げる場合、スタートアップと違うのは主に次の3点です。
 (イ) 顧客基盤がある
 (ロ) キャッシュがある
 (ハ) 成功している組織がある

このため、よくあるのが次のような進め方です。
 (イ) 既存の顧客に買ってもらおう
 (ロ) 売り上げより先にアカウント増やそう
 (ハ) 組織を新設してどんどん人を増やそう

どれも新規事業がスタートアップよりも優位な点になり、効果的なタイミングや進め方があります。特に(ハ) は手戻りが難しいため注意が必要なのですが、ここで問題です。


問題 既存事業の組織の説明として正しいものを選択してください。
A. 勝った、から、機能的で階層化された組織、を採用した
B. 機能的で階層化された組織、を採用した、から、勝った








正解 A.
今の組織は勝ちの確率や効率を高める目的で採用された手段です、B. は成功体験だけが残り成長体験を忘れた組織にありがちな勘違いです。


組織は戦略に従うため、既に別の市場で勝っている組織の外形的な部分を真似するのではなく、新たに参入する市場でどうしたら勝てるかを考える必要があります。
また、事業フェーズの10→100や100など、成熟した階層組織で働いてきた経験しかないと、0→1や1→10という状況で悪手をとっていることに気付かないことがあります。

今回 対象としているのは社内の新規事業で、フェーズは初期のPMF前の導入期です。既に成長期に入っている事業や、企業間の戦略的提携による新規事業は該当しません。

新規事業立ち上げ期のアンチパターン

先ずはやってはいけないことからです、当てはまる新規事業、危機感持った方がいいと思う。

  1. 組織
    既存事業のような階層化や役割をフルで揃える、既存事業と同じMBOやOKRなどの制度を運用する、働きがいより働きやすさを求める

  2. 採用
    スキルを最重要指標にする、単一職能しか経験したことがない人を採る、今ではなく先々必要な人を採る、経験は乏しいがポテンシャルに期待する

  3. 育成
    上司が部下のコーチングを重視する、新メンバーのオンボーディングを個人にアサインする

  4. 営業
    マーケ・インサイドセールス・カスタマーサクセスなど機能別に人を配置する、標準化や型化を掲げて既存組織のような多くのKPIを運用する

  5. 開発
    技術領域や開発領域を分けて専任にする、クオリティよりデリバリーを重要指標にする、機能の提供価値にこだわる、開発ロードマップを作成する

  6. 業務
    各種マニュアルを整備する、受注や請求業務をシステム化する

アンチパターンにより事業はどうなってしまうか

次にアンチパターンによる影響です、端的に言うと、事業撤退の可能性が爆上がりします。

  1. 組織
    人や組織の情報格差や繁忙の差が大きくなり事業の推進力が落ちる、既存事業と異なり計画の修正見直し頻度が高く管理工数が増える、活躍したい人の足枷が増える

  2. 採用
    悪貨は良貨を駆逐する、曖昧な状況下で横断的に活用できないと使い所がなくなる、戦力になるまで組織全体のパフォーマンスが落ちる

  3. 育成
    部下の自分探しより事業の答えを市場で一緒に探すのが最優先、師弟関係はブラックボックスになりリスクの検知が遅れる

  4. 営業
    分断された機能間の連携工数が生産性を下げる、戦力が分散し各職能や組織全体の顧客解像度が上がらない、少ないサンプルから推測した標準化で数字に繋がらない

  5. 開発
    プロダクトの全体感が分からず個別最適に陥る、事業要件に追われプロダクト成長の阻害要因が蓄積しデリバリーが遅延する、顧客価値ではなく機能という手段が目的化する、事業環境の変化に柔軟に対応できない

  6. 業務
    受注量が少なく何を標準化するとROIが高いか分からない、事業のアジリティが制限される

新規事業立ち上げ期にやるべきこと

最後に、新規事業の成功確率を高めるために、立ち上げ期に各領域でやることです。

  1. 組織
    フラット型にして1人が今必要な役割を複数担う、評価はKPIとマイルストーンで設定する、働きやすさより働きがいを優先する

  2. 採用
    職歴と事業状況や働き方が合う人を採る、先々ではなく今必要な役割で2ヶ月以内に成果を出せる人を採る

  3. 育成
    上司は部下をトレーニングしアクティブラーニングを支援する、チームでオンボーディングして組織文化と整合させる

  4. 営業
    アカウント型にして顧客開拓から商談受注まで1人で担い顧客と市場の解像度を高める、戦力をセールスに集中しシンプルなKPIを設定して勝ち筋を探索する、値下げでチャーン阻止せず解約の本当の理由を聞く

  5. 開発
    クロスファンクショナルを前提に編成する、クオリティとデリバリーの両方を重要指標にする、機能の最小構成を早く出す、顧客の課題に取り組む順番を並べ事業環境に応じて見直す

  6. 業務
    派遣社員やアルバイトを活用し低コストで処理数を増やし、トランザクションの傾向を探る

まとめ

組織は環境の変化に適応し続ける必要があります、立ち上げ期を抜けて最初のPMFに到達すると事業戦略が変わるため、成長フェーズに差し掛かるあたりが組織戦略を変えるタイミングになります。
例えば、B2B SaaSのGLOPLAでは「顧客数三桁」「ARR数億円」「市場シェア2.8〜6.8%」あたりをベンチマークにしています。

改めて、新規事業立ち上げ期の環境は、MVPはあってもビジネスモデルが緩く勝てるか不明ですし、既存事業の状況によりあっさり終了することもあるため、PMFに向けて優先順が高いこと以外をやる暇はありません。
特に、事業スピードを速めるためには社内のKnowing-Doing GaPを埋めることが重要になり、「検討や議論を重ねる」のではなく「行動と検証を重ねる」ことが事業存続に資する大切な振る舞いになります。

わたしはGLOPLAに参画した2021年に3年間の年次テーマを設定していました、しくじりによる遅延はありましたが、振り返ると組織戦略の取り組みは、ジョン・コッターの「変革の8段階プロセス」「8つのアクセラレータ」で説明できるものになっています。

  • 1年目:実験と選択
    危機感を生み出す、変革主導チームを築く、戦略ビジョンと変革施策を策定する

  • 2年目:成功と定着
    ボランティアの数を増やす、障害を取り除き行動を可能にする、短期的な成功を生み出す

  • 3年目:自律と再現
    加速を維持する、変化を組織内に定着させる

そして、4年目のテーマは成長と拡大です、今年度は既存プロダクトの強化や他社プロダクトとの連携を進めながら、複数の新規プロダクトを立ち上げていきます。

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