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グローバルヘルス業界でのキャリアの話

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なんだかんだキャリア形成に関する記事が増えてしまったので、まとめることにしました。
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#WHO

プライマリ・ヘルス・ケアの専門家になるのは容易ではない

私は任地でプライマリ・ヘルス・ケア (primary health care; PHC) に関する仕事をしている。2018年のアスタナ宣言以降、グローバルヘルス業界ではPHCを再興しようというトレンドが若干あり、低/中所得国のPHC強化に焦点を当てたポジションやプロジェクトが若干増えている。私もそんなトレンドに乗り意気揚々とPHCの仕事を始めた訳だが(日本で家庭医をしていたこともあり、PHCは以前から関心領域だった)、つくづく難しい仕事だなと日々頭を悩ませている。 そこで本

保健システムのbuilding blocks別、アーリーキャリアの構築法

グローバルヘルス業界のキャリア形成に関する記事はいくつか執筆しており、とりわけ保健システム強化の分野を専門性を確立したければ、まずは6つのbuilding blocksの中から1つを選択すべし!と以前指摘した。 とは言え、building blocksの1つを選んでも、更にその下に小分野がいくつか存在し、その細かい小分野毎に求められるqualificationが異なる。グローバルヘルス業界は他の業界よりも専門性がより細分化している。その求められるqualificationを

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WHOの採用プロセスを理解する

最近ふと気づいたのだが、WHOの採用プロセスについて、このnoteで一度もまとめたことがなかった。まぁ自分が生き残るのに必死だったのと(これは今でもだが)、人様に能書きを垂れる程の記事を書ける自信がなかった、という理由はあるかもしれない。でも何度もWHOの採用プロセスを経験して、結果が良い時も悪い時もあったが、自分の中でノウハウが血肉化され、語れることが増えてきたと感じている。本稿では、その辺を中心にまとめた。 確かにWHOの採用プロセスは大枠では他国際機関と大差ない。じゃ

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国際機関における専門性の構築:直線的が良い?回り道が良い?

ツイッターでたまたま↓のような興味深い投稿を見つけたので、本稿でも少し考察してみたい。 要は専門性を構築するプロセスとして、特定領域で直線的に積み上げるパターン(左側)と、周辺領域も含めて多様な経験をする中で積み上がっていくパターン(右側)の2つがある、という話である。実際には右側のパターンが多いよね、というツイ主の意見には同意できる。そんな私も右側のパターンである。 一方でWHOには(他の国際機関は知らないが)左側のパターンの職員も、それなりにいる。例えば、WHO本部で

NPOが幅を利かせている国事務所で若手Pスタッフがサバイブするには?

本稿で取り上げるNPOとはNational Professional Officerのことである。国連の国事務所にはNPOと呼ばれるスタッフが大なり小なりいる。彼ら/彼女らは当該国の出身でinternational professional staffとは給与体系が異なるが、歴とした(日本的な言い方をすると)総合職である。他の国連機関の事情は分からないのだが、WHOの場合はNPOの多くは元保健省の役人である。入職する時点で既に保健省内に人的ネットワークを持っているので、それを

ポストを作って国際機関で生き残る

幸いなことにJPOを卒業した後にtemporary appointmentという任期付き正規職員(仮)のような立場でWHOに残留することができた。率直に言って嬉しい反面、任期は1年間でその後延長できるか不透明なので、首の皮一枚で繋がっているようなものなのだ。就活は続けなければならない。 このポストは上司と交渉して、現職場に増設してもらったポストである。他の国際機関の事情はよく知らないが、JPOから空席公募を通じてWHOの正規職員に選ばれるハードルは高い。空席公募のボリューム

WHO「本部」で活躍できる人材とは?

諸事情がありWHO本部から某国の国事務所に異動することになった。その詳細についてはおいおい触れるとして、今回の一件はWHO本部に向いているのはどんな人材か?について深く考えさせられた。あくまでも私の経験に基づいた話で一般化できないかもしれないが、これから国際機関を目指す日本の若者の参考になるかもしれないので以下にまとめたい。 WHOの役割・機能を理解するFrenkとMoonは、WHOを含むグローバル・ヘルス・システムの機能を4つに分類している。 私もこの分類は正しいと思う

グローバルヘルスで専門分野ってどう決めるの?

3月は日本が春休みだからなのか、グローバルヘルスに関心がありジュネーブを訪問しに来た大学生・若者と話をする機会が多かった。現役WHO職員との懇談の場がセッティングされ、彼らのキャリア形成に関する悩み相談を聞くことになる。そこで気づいたのだが、彼らの、特に大学生の悩みの8割は「専門分野として何を選んだらよいか分からない」なのだ。まぁ確かに難しい。私自身も30半ばで、ようやく専門としたい分野がクリアになった。私が大学生の頃を振り返ると、キャリア構築に対する考えがいかに浅かったか(

UHCの専門家にはどうすればなれるの?

本稿で繰り返すまでもなく、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(universal health coverage; UHC)の達成は数あるグローバルヘルス・アジェンダの中でも最も重要な物の1つである。例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3.8はUHC達成である。また世界保健機関(WHO)の第13次中期計画(GPW13)では、UHC達成は3本柱の1つである。 日本は低中所得国がUHC達成を支援するために多大な資金援助をしている。例えば、2018年に日本政府は世界保健機関

世界保健機関(WHO)の保健システム分野における求人情報の記述統計的分析

私自身がJPOとして国際機関で生き残らなければならない立場であることを踏まえ、WHOの、特に私の関心領域である保健システム分野の求人情報を分析してみた。残念ながら商業誌に投稿する程のものではないのだが、将来はWHOで仕事がしたい!という方には有益な内容であり、本noteにひっそり公開することにした。 公開から年数が経ち多少データが古くなっている点は否めないが、採用に関して同様の傾向は今でも続いている。有料記事ではあるが、ぜひお手に取って頂けると幸いである。 追記:記事投稿

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向こう5-10年間で獲得したいスキル

三十路を過ぎてからよく思うのだが、単に仕事をしてるだけではスキルが伸びない and/or スキルに偏りが生じる、と感じるようになった。社会人になりたての頃は全てが新鮮で、周りの環境に影響されて勝手に成長することができていた。アラサー以降は、自らの頭で考えて今後のキャリアに必要なスキルを能動的に獲りに行かないと、職業人として頭打ちになってしまう。 そこでで軽く独りブレストをしてみた。向こう5~10年間で獲得したいスキルを列挙し、まずは「仕事 or プライベート」×「ハード o